冷房設備が整っている現代は冬よりも夏の冷え性(冷え症)に注意が必要です。涼しい部屋の中を薄着で過ごし、冷たい飲食物をとっていると内臓が冷えてさまざまな不調を引き起こす可能性があります。冷え性予防を意識するだけでも改善されることは多いもの。手軽に実践できる対策を紹介します。
夏の冷え性(冷え症)の原因4選
冷房の効き過ぎ
冷え性(冷え症)とは、手や足先、上腕部など体の一部分が温まらず、冷えているような感覚が常に自覚される状態のこと。夏の冷え性の原因の1つが冷房です。薄着でクーラーが効いた場所で長時間過ごし、さらに冷たい飲み物などをとっていると、体の表面だけでなく、内臓まで冷えてしまいます。
また室内外の気温差が5℃以上になると、自律神経が乱れやすくなります。養命酒がインターネットで行った調査でも、夏の体疲れの原因に「屋内と屋外の温度差」と回答した人が43.6%、「エアコンによる冷え」と回答した人が32.5%いました※。
温暖化やヒートアイランド現象で夏の外気温は上昇。駐車していた車の中やコンクリートの路上は40℃を軽く超えるので、冷房の効いた屋内との温度差は20℃くらいあることになります。
冷たい飲食物のとり過ぎ
冷たいものを食べたり飲んだりすると胃腸が冷えてしまいます。冷蔵庫から出してすぐの食品は1~4℃、自販機の飲み物は1~6℃程度のため、場合によっては冬より冷えてしまうこともあります。
摂取した飲み物の温度で、胃の動きがどう変わるか調べた研究(脇坂ら、日本栄養・食糧学会誌、2011年)では、15℃の冷水で胃の動きが低下したとあります。これは15℃の冷水を体温と同じ37℃前後になるまで胃の中にとどめるために、胃の動きが低下したからだと解釈されています。
栄養不足・食生活の乱れ
夏バテで食欲が落ちると、熱産生に必要な栄養が十分にとれないことがあります。また食欲不振の状態のまま日々のストレスや疲れで自律神経が乱れると、血の巡りが悪くなって冷え性が悪化するという悪循環にも陥ってしまいます。
筋肉量が少ない
オフィスのように冷房の設定温度を個々に合わせることが難しい場所で、冷えを感じる人は少なくありません。筋肉量は熱産生に比例するので、男性よりも女性のほうが冷えを感じやすいです。
ただ、座りっぱなしのデスクワークでは、女性よりも筋肉量の多い男性や若い人でも冷えによる不調を訴えることがあります。
夏の冷え性(冷え症)の症状
どこでも冷房が効いている現代では冬よりも夏のほうが冷えやすいかもしれません。長時間、冷房の効いた部屋で薄着で過ごし、冷たい飲み物などをとっていると、内臓まで冷えてしまいます。内臓冷えにより消化機能が低下することで、胃もたれ、下痢、便秘といった症状が現れたりすることがあります。
また体が冷えると、夏の暑さに対応するためにいっそうエネルギーを消耗します。その結果、食欲が低下し、さらなるエネルギー不足に。すると頭痛やめまい、倦怠感や疲労感といった夏バテの症状が引き起こされるのです。
冷え性を招く原因は以下でも詳しく解説しています。併せてご参照ください。
夏の冷え性(冷え症)の改善法・対策法は?
食事編
対策1:食べ物・飲み物の温度に気を配る
冷えが気になるときはなるべく常温、もしくは温かいものを意識してとりましょう。どうしても冷たいものをとりたいときは、その前後に温かいものを飲むといいでしょう。
対策2:薬味やスパイスを活用する
胃腸の冷えを感じる人には、お腹を温め胃腸機能を高める薬膳食材もおすすめです。とうがらし、山椒、こしょうなどの辛味や、フェンネル、クローブ、ナツメグ、シナモンなどのスパイス、にんにく、生姜、玉ねぎ、ニラ、紫蘇、香菜、バジルなどの香味野菜がそれに当たります。
料理が億劫な場合は、レトルトのカレーやパスタソースを温めるときにこれらの食材を加えたり、香菜やバジルをトッピングしたりすれば手軽にとれます。
対策3:体を温める「陽」の食材を積極的にとる
東洋医学では体を温める食べ物を「陽(よう)」の食材としています。体を冷やす「陰(いん)」の食材には陽を組み合わせたりして、積極的にとるようにしましょう。
- 〔陽の食材〕
- 野菜:ねぎ、にんじん、かぼちゃ、かぶ、にんにく、にら、しょうが など
- 果物:りんご、桃、あんず、ドライフルーツ など
- 穀類・豆:玄米、もち米、あずき など
- 肉・魚介類:鶏肉、牛肉、羊肉、さんま、いわし、あじ、鮭、えび など
- 調味料・海藻類:味噌、醤油、こしょう、唐辛子、山椒、シナモン など
- 飲み物・酒:紅茶、日本酒、赤ワイン など
- 〔陰の食材〕
- 野菜:トマト、きゅうり、なす、レタス、白菜、ほうれん草、チンゲン菜 など
- 果物:いちご、キウイフルーツ、バナナ、メロン など
- 穀類・豆:大麦、小麦、豆腐 など
- 肉・魚介類:馬肉、あさり、カキ、しじみ など
- 調味料・海藻類:わかめ、ひじき、のり、砂糖 など
- 飲み物・酒:コーヒー、緑茶、ビール など
対策4:栄養バランスを意識する
ダイエットなどで栄養バランスの偏った食生活をしていると熱を作るエネルギー源が不足します。また糖質制限のために炭水化物を極端にとらないでいると、腸内環境が悪化。腸の機能が衰えると全身に血液が巡らなくなり、冷え性を引き起こします。
とはいえ食べ過ぎも×。消化・吸収を活発にするために胃腸に血流が集中し、やはり全身に血液が行き届かなくなってしまうからです。1日3食、栄養バランスを意識した食事をとることが大切です。
生活習慣編
対策1:ぬるめのお湯で、体を芯から温めよう
自律神経の副交感神経が優位になると血流がよくなります。体温よりも4℃程度温かい湯に浸かると快適さを感じて副交感神経のスイッチが入るので、湯温は38~40℃がベスト。10分以上を目安に温まりましょう。
対策2:炭酸入浴剤で血流を促し全身ポカポカに
温浴効果をアップさせるのにおすすめなのが入浴剤です。なかでも炭酸入浴剤はお湯に溶け込むと血管の筋肉に働きかけ、血管を広げて血行を促してくれます。湯に入ることで温まった血液が全身にスムーズに行き渡るため、効率よく体を温めることができます。
対策3:冷房をキンキンに効かせるのはやめる
夏に長時間肌寒い部屋にいると本来の体温調節機能を乱すことにもなります。冷房の設定温度は28℃程度が目安です。
対策4:適度に運動する
運動不足になると筋力が低下します。少なくとも週に1日は30分程度のウォーキングやジョギングを行うといいでしょう。もしくは日常生活の中で体を動かすのもおすすめ。階段を使う、大股で早歩きをする、家事で体を動かしたりするなど、工夫してみてください。特におしりや太ももなど大きな筋肉のある下半身を鍛えると効率的です。
ツボ押し・足浴編
冷え解消に効果的なツボを刺激するのも簡単でおすすめです。
対策1:労宮(ろうきゅう)
手のひらの真ん中、くぼんだところが「労宮」。自律神経の働きを整え、体のだるさや冷えなどの症状を改善します。
対策2:三陰交(さんいんこう)
冷えが強いときはバケツなどに、三陰交(冷えのツボ)が隠れるくらいに少し熱め(40~42℃)の湯をはり、足を浸けます。温度が下がったら熱い湯を足し、体が温まるまで続けましょう。
衣類編
対策1:夏も腹巻を着用
お腹の中にある臓器を温めるには腹巻が便利です。夏の場合は薄手で汗を吸収するタイプを選びましょう。内臓が温まると血液循環がよくなり冷えが改善されます。
対策2:カーディガンやストールを持ち歩く
夏は冷房の効いた室内と外気の温度差が激しく、自律神経系が乱れがち。暑くなったら脱ぎ、寒くなったら着られるような重ね着アイテムが役立ちます。
対策3:靴下・レッグウォーマーを着用する
服装は1年を通じて「上半身は薄く、下半身は暑く」が基本。末端の足は冷えやすいので、夏でも室内では靴下やレッグウォーマーを活用するなどして足元を冷やさないようにしましょう。
漢方編
冷えのタイプに合わせて漢方を活用するのも方法です。
漢方1:ストレスを感じているタイプの冷えには「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」
東洋医学ではストレスを感じていると「気」の巡りが悪くなり、気が末端まで届かなくなるので手足が冷えると考えます。そのため漢方は、気の巡りをよくする生薬と精神的にほっとする効果のある生薬を含む「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」などがよいでしょう。
漢方2:筋肉量が少ないタイプには「柴胡桂枝乾姜湯」
食も細く華奢(きゃしゃ)で筋肉量が少ない、食事からエネルギーを得て体内(主に筋肉)で熱を産生する力が乏しいタイプの冷え性には、気を補って体を温める効果がある生薬を含む「柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)」という漢方がおすすめです。
冷え性によく使われる漢方など詳しくは下記の記事をご参照ください。
夏の冷え性(冷え症)改善に「薬用養命酒」
14種類の生薬を配合した薬用養命酒は夏の冷えや疲れに効く仕組みがあります。
仕組み1:胃腸の働きを活発にして夏の疲れを回復
夏は、暑さでつい冷たい飲み物や麺類ばかりになり、胃腸の働きが低下。必要な栄養を補うことができず疲れやだるさが回復しない......といった悪循環に陥りがち。薬用養命酒は胃腸機能を促すことで、この悪循環を改善、回復力を高め、丈夫な体へ導きます。
仕組み2:生薬とアルコールの協力作用で血行を促進して冷えを改善
季節の変わり目など日によって気温が10℃前後変化すると体調を崩しやすいと言われますが、夏は1日の中でそれ以上の温度変化にさらされることに。薬用養命酒は血行を促すことで、冷房による冷えや屋内外の気温差による不調を改善します。