東洋医学では冷えを病気のサイン、対策すべきものとしてとらえるため、漢方には体を温めるもの、のぼせを冷ますものなど多くの冷え性(冷え症)改善の薬があります。
そこで、冷え性の原因とさまざまな冷え性に効く漢方、あわせて取り入れたい生活の中でできる冷え性改善のコツについてご紹介します。
冷え性(冷え症)とは
冷え性(冷え症)にはさまざまな要因があります。
冷たい食べ物・飲み物のとり過ぎや食生活の乱れなどは、栄養の吸収を妨げ、冷え性の原因になります。
また、ストレスや睡眠不足、不規則な生活などが続くと、自律神経の失調によって血流が悪くなり、冷え性の原因となります。体を締めつける下着や高いハイヒールなども、血流を悪くし冷えを招くことが。
体内の熱の約6割は筋肉でつくられている(活動時)ため、筋肉量が少ない人は冷えやすくなります。高齢者や女性が冷えやすいのはそういった理由からです。
そして冷えは、下のようなさまざまな不調を引き起こします。
- 〔冷えによる主な症状〕
- 肩こり・腰痛
- 胃腸の不調
- 不眠
- 更年期障害
- 花粉症・アレルギー・かぜ・インフルエンザ
- 生活習慣病
- 肌トラブル
- むくみ・太りやすい
- 生理痛・生理不順
手足の先が冷たくなるのは冷え性の初期。腰やお腹に冷えを感じるようなら、かなり進行した状態と言えます。初期段階で気づき、ケアしていくことが大切です。
冷え性のより詳しい原因と症状については、下記の記事でもご紹介しています。あわせてご覧ください。
冷え性(冷え症)におすすめの漢方
東洋医学では、人間の体を構成しているものを「気・血・水」の3つでとらえています。
- 気:生命エネルギーを表します。気が乱れると、元気がなくイライラしやすくなります。
- 水:リンパなど血液以外の体液を表します。水が乱れると、むくみやすくなります。
- 血:血液を表します。血が乱れると、肌荒れや不眠などが起こりやすくなります。
この3つが過不足なく、バランスよく体内を巡っているのが健康な状態。これらのバランスが乱れると不調が現れます。
気や血が不足したり、血が滞ったりするのが、冷え性の主な原因です。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
血行を促して体を温め、手足など末梢を温める働きがあります。冷えによる頭痛や下腹部の痛みをやわらげる効果も期待でき、しもやけなどにも使われます。
五積散(ごしゃくさん)
血行や水分循環を改善し、胃腸の働きを高めて、体の冷えや痛みを改善します。冷えによる胃腸炎、腰痛、膝痛、筋肉痛、神経痛などの症状緩和にも効果が期待できます。
冷え性の人の中で、比較的体力のある人に好適です。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
もともとは月経不順、月経困難、更年期などに使われる漢方です。血行をよくして体を温めるのと同時に、水分代謝を整えることで足腰の冷え性や生理不順を改善します。痛みをやわらげたり、ホルモンバランスを整える効果も期待できます。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
更年期障害などで、冷えとのぼせが両方ある場合によく使われます。血行をよくして熱のバランスを整え、のぼせや冷えを改善するとされています。また、ホルモンバランスを整え、生理痛、月経不順、月経異常などを改善する効果も期待できます。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
虚弱体質で疲れやすく、冷えたりのぼせたりしやすい人に向いている漢方です。血液循環をよくして体を温め、のぼせなど上半身の熱を冷まします。また、自律神経を調整し、イライラを鎮める効果も期待できます。
八味地黄丸(はちみじおうがん)
加齢により体力が低下し、足腰や泌尿生殖器など下半身の衰えがあり、冷えを伴う人におすすめの漢方です。体を温め、体全体の機能低下を改善する効果が期待できます。
漢方以外も! 冷え性(冷え症)改善のコツ
いくら効果的な漢方を活用しても、冷える生活習慣を続けていては、冷え性改善はできません。服装や食事、毎日の習慣において、温めることに意識を向けていくことが大切です。
生活のコツ
日常生活の中にはたくさんの温めポイントがあります。冷暖房は控えめにし、体を温めるお風呂の入り方をするなど、ポイントを押さえて効果的に体を温めましょう。
働き世代の冷え性の原因の8割以上は、ストレスや生活習慣による自律神経の乱れとも言われています。ストレスや疲れはため込まず、上手に解消しましょう。
筋肉量が増えると熱を生み出しやすい体に。日常生活の中で筋肉を鍛えることも大切です。
特に、お尻や太ももなど大きな筋肉がある下半身を鍛える運動は、筋肉量アップに効果的です。
規則正しい生活を心がけ、毎朝同じ時間に朝日を浴びると体の働きが整い、冷え性対策にもつながります。
- 〔生活の冷え性改善のコツ〕
- 冷暖房は控えめにする
- シャワーではなく、ぬるめのお風呂に長時間入る
- 自分なりのストレス解消法を見つける
- ウォーキングや筋トレなど運動習慣をつける
- 夜更かしはしないようにする
- 毎朝同じ時間に朝日を浴びる
冷え性を改善するお風呂の入り方や、冷え性に効果的なストレッチ・筋トレについては、下記記事で詳しくご紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
服装のコツ
寒い季節だけでなく、冷房が普及している現代は夏でも冷え性対策が必要です。
特に下半身は心臓から遠く、重力もよりかかるため血流が滞りやすく冷えやすい部分。夏でも室内では靴下を履くなどし、足元を冷やさないようにしましょう。
末端を冷やさないためのポイントは、4つの首「首」「手首」「足首」「くびれ(お腹)」を暖かくすること。首であれば夏にはスカーフ、冬にはマフラーを活用しましょう。腹巻きや腰に使い捨てカイロを貼るのも有効です。
また、体にフィットした服は保温効果が高いと思われがちですが、体を締め付けるため血行が悪くなり逆効果。体を締め付けるような下着は避けましょう。
- 〔服装の冷え性改善のコツ〕
- 暑さ寒さを調整しやすい重ね着がおすすめ
- 締めつける下着は着ない
- 靴下やマフラー、腰巻きなどで効果的に温める
- オフィスなど冷房が強いところでは膝掛けなどで防寒する
足先の冷えと、足元の保温効果に効果的な靴下の活用方法などについては、下記の記事で詳しく解説しています。こちらも参考にしてください。
食事のコツ
食事は体に大きな影響を与えます。中でも気をつけるべきは食べ過ぎです。
食べ過ぎると消化・吸収を活発にするために胃腸に血流が集中します。その分、全身に血液が行き届かなくなり、冷えが生じてしまいます。
食事は腹八分目で、なるべく規則正しくとるようにしましょう。体を温める意味でも、よくかんで食べることが大切です。
夏は冷たい飲食物ばかりとりがちですが、なるべく常温以上のものを心がけてください。どうしても冷たいものをとりたいときは、その前後に温かいものを飲むとよいでしょう。
食材や栄養素には体を温める効果が高いものがあります。例えばしょうが、にんにくなどの薬味や、こしょう、唐辛子などのスパイスは温め効果抜群。そういうものを上手に料理に活用しましょう。
- 〔食事の冷え性改善のコツ〕
- 早食いをせず、よく噛んで食べる
- 規則正しい食事で、腹八分目を心がける
- 冷たい飲み物・食べ物をとり過ぎない
- スパイスなど体を温める食材を上手に活用する
- バランスのよい食事を心がける
体を温める食べ物や飲み物については、下記の記事で詳しく解説しています。こちらもぜひチェックしてください。