今や健康の新常識となっている「腸活」ですが、ひとえに腸活といっても腸の形状や状態は人それぞれ。腸のタイプによっては逆効果になることも。自分に合った"パーソナル腸活"で不調をケアしましょう。
腸内環境が良いと免疫機能も整う
腸には免疫細胞の約7割が集まっています。そのため、腸内環境が整うと便秘や下痢の改善だけでなく、風邪をひきにくくなったり、疲れにくくなったりします。最近の研究では、血糖値ケアや肥満改善にも有効なことがわかっています。
しかし腸の形状や状態は人によって異なるため、みんなが同じケアで改善するとは限りません。自分の腸のタイプを知ることが、効果的な腸活の第一歩になります。
お悩み別パーソナル腸活
日本人の約8割はねじれ腸や落下腸
「腸」を想像したとき、解剖図にあるような四角い形を思い浮かべませんか? けれど実は、華奢な体に長い腸を収めている日本人の場合、約8割が複雑にねじれている「ねじれ腸」や骨盤の中に落ちて折り重なっている「落下腸」を持っています。また、生活習慣によって腸が不調を起こしている場合もあります。
ねじれ腸? 落下腸? 腸タイプをチェック
上の2つに当てはまる場合は「ねじれ腸」、下の3つに当てはまる場合は「落下腸」の可能性があります。原因やセルフケア方法を確認しましょう。
- 〔ねじれ腸・落下腸チェックリスト〕
- ☑ 子どもの頃から便秘気味
- ☑ いつも同じところが張る
- 「ねじれ腸」かもしれない人のセルフケアへ
- ☑ 腹がぽっこりしている
- ☑ ガスがたまりやすい
- ☑ 姿勢が悪く、猫背気味
- 「落下腸」かもしれない人のセルフケアへ
腸の状態チェック
以下のチェックで一つでも当てはまった場合、腸のコンディションが悪くなっている可能性があります。
- 〔腸のコンディション不良チェックリスト〕
- ☑ 便意があっても我慢しがち
- ☑ いつも力んでいる
- 「直腸性腸」かもしれない人のセルフケア
- ☑ 市販の下剤やお茶などを利用して排便している
- ☑ 冷えを感じる
- 「弛緩性腸」かもしれない人のセルフケア
- ☑ 便秘と下痢を繰り返す
- ☑ 食後に不快感や胃痛を伴う
- 「ストレス性腸」かもしれない人のセルフケア
- ☑ つねに便秘気味
- ☑ 体全体がむくみやすい
- 「むくみ腸」かもしれない人のセルフケア
「ねじれ腸」かもしれない人のセルフケア
【原因】長い腸を通過する間に便がカチカチに
日本人に多いタイプ。生まれつき腸が長く、腸がねじれて収まっています。便が腸を通過するまでに時間がかかるため、便の水分が奪われ、硬くなって出しにくい状態に。腸がねじれている場所に便が詰まると、お腹の張りや痛みを感じることもあります。
【セルフケア】しっかり水分補給&マッサージでケア
便がやわらかくなるように、1日1.5Lを目安に水分を摂りましょう。いつも張ったり痛んだりする場所をマッサージすると便の通りが良くなります。
「落下腸」かもしれない人のセルフケア
【原因】姿勢が原因。デスクワークが多い人も注意
腸が骨盤の中に落ちて折り重なっています。腰の曲がった姿勢や腹筋の弱さなどが原因になることも。デスクワークで長時間、前かがみになり背骨が丸まった姿勢でいる人は腸が動くスペースが少ないので要注意。ねじれ腸と同じ理由で便が出しにくい状態です。
【セルフケア】腹筋を鍛えるのも有効な手
腹筋を鍛えたり姿勢を正したりするのがケアのポイント。また動物性タンパク質を摂りすぎると腸内で腐敗し、ガスがたまりやすくなります。適量を守りましょう。
「直腸性腸」かもしれない人のセルフケア
【原因】小食でもなりやすい腸の"鈍感"
直腸の感覚が鈍くなっているため、肛門付近まで便が運ばれていても便意を感じにくい「出口部分便秘」の状態です。小食の人や糖質オフなどで食事制限をすることでもなりやすくなります。
【セルフケア】3分間のトイレタイムを朝習慣に
便意は我慢しないこと。腸の動きが良くなる朝にトイレタイムを作るのも有効です。ただしいきみすぎると痔になる恐れがあるため、3分以内を目安にしてください。オリーブオイルなどの油を摂り、便のすべりを良くするのもおすすめです。
「弛緩性腸」かもしれない人のセルフケア
【原因】下剤の常用や血流悪化で腸の働きが低下
下剤を常用すると腸が刺激に慣れてしまい、腸の働きが悪くなります。また冷たいものを摂ったり冷房の利いた部屋で過ごしたりする夏は、体が冷えて血流が悪化しがち。血液の巡りが滞ることで、腸の活動が低下します。
【セルフケア】温活や軽い運動で血流を促す
39~40度の湯船に10分程度浸かる、お腹にカイロを貼るなどして体を温めましょう。ウォーキングやストレッチなどの軽い運動も血行改善のため有効です。また、下剤は一度中止し、2週間程度様子を見るようにします。
「ストレス性腸」かもしれない人のセルフケア
【原因】自律神経の乱れが影響
強いストレスから自律神経のバランスが乱れて便秘と下痢を繰り返す「過敏性腸症候群」の状態です。
【セルフケア】アロマなどでできるだけリラックス
ストレスケアが改善への近道。適度な運動や入浴、アロマを楽しむなどリラックスできることを取り入れましょう。胃腸に負担のかからない温かいハーブティーを就寝前に飲むのもおすすめです。1カ月以上症状が続く場合は、医療機関を受診しましょう。
「むくみ腸」かもしれない人のセルフケア
【原因】自律神経の乱れが影響
腸が炎症を起こすと、腸粘膜のすき間から毒素が流出。毒素は血流に乗って体のあちこちに運ばれ、悪影響を及ぼします。余分な水分をため込む作用もあるため、腸だけでなく全身もむくみやすくなります。
【セルフケア】発酵食品や夏野菜ですっきり
発酵食品や食物繊維を積極的に摂って、腸の状態を整えましょう。水分や塩分を多く摂取する夏や冬は、水分代謝を促す食材をよく食べると◎。きゅうりやすいかなどの夏野菜がおすすめです。
腸活・便秘解消に逆効果!? 要注意ケア
せっかくの腸活、「腸や排便に良さそう」というイメージだけで行うと、腸のタイプによっては逆効果になってしまうケースも。間違いやすい対策と正しいケアをご紹介します。
△食物繊維をたっぷり摂る
◎便の状態に合った食物繊維を取り入れる
便秘気味の人がごぼうやきのこなどの不溶性食物繊維を摂りすぎると、腸の中で便が詰まって便秘がより悪化してしまうことがあります。逆に軟便の人が海藻や果物など水溶性食物繊維を摂りすぎると、便がさらにゆるくなってしまうことも。
便の状態に合わせて、水溶性・不溶性の食物繊維をバランスよく選びましょう。
△ヨーグルトで毎日ビフィズス菌チャージ
◎発酵食品でいろいろな善玉菌を摂る
ヨーグルトには整腸作用があるだけでなく、腸を刺激する乳糖が含まれているため便が出やすくなります。
ただし、ビフィズス菌だけを毎日摂りすぎると便秘になる可能性があります。適量を摂取し、さまざまな種類の菌が入った発酵食品を選ぶと良いでしょう。
×温水洗浄で肛門を刺激して便を出す
◎肛門が傷つく心配も。洗浄時間は10秒に
温水洗浄の刺激で排便を促す人が増えていますが、習慣化すると次第に効かなくなります。より刺激を与えるため、水圧を強くしたり長時間使用をしたりすると、肛門の負担に。肛門の皮脂を取って肌荒れを起こすこともあるので、洗浄時間は10秒程度にしましょう。
×長時間トイレにこもる
◎3分程度であきらめて、次の便意を待つ
出ないからといきみ続けると、直腸を傷つける・肛門が切れて痔になる場合があります。トイレにいる時間は3分程度にして、出ないときは次の便意が来るのを待ちましょう。
便秘解消に効く「前かがみポーズ」
腸の形によっては洋式トイレだと便が出にくい人も。洋式トイレを使用する際は、踏み台などを置いて、ひざを胸に近づけて前かがみの姿勢になると直腸が便を出しやすい角度になります。
△下痢や便秘茶を習慣的に飲んでスッキリ出す
◎刺激性の下剤はどうしても困ったときに使う
刺激性の下剤、センナ茶やキャンドルブッシュ、大黄(だいおう)など下剤と同じ作用を持つお茶や漢方薬を使いすぎると、腸の動きが低下して「弛緩性腸」になります。どうしても薬の力を借りたいときは、酸化マグネシウムなど効果がゆるやかなものを選び、用法・容量を守りましょう。
自分に合った「腸活」が快腸の秘訣。また効果を実感できるまでにはだいたい3~4週間かかるので、地道に続けていくことが何よりも大切です。
この方にお話を伺いました
工藤内科副院長 工藤 あき (くどう あき)
一般内科、消化器内科、漢方医。腸内細菌・腸内フローラに精通し、腸活×菌活を生かしたダイエット・美肌・エイジングケア治療にも力を注いでいる。テレビ、書籍、雑誌監修などメディア出演多数。著書に『ウイルスに負けない 親子の免疫力アップ生活術』(主婦と生活社)、『体が整う水曜日の漢方』(大和書房)、監修書に『医師が教える“デブ腸”を“やせ腸”に変える50の法則』(学研プラス)などがある。