早食いをしたり冷たい飲み物などを多く口にしたりしていると、胃腸に負担がかかりがち。するとその影響が、「胃腸の疲れ」となって表れることが少なくありません。
胃腸の調子がすぐれないときは胃にやさしい食べ物・食べ方を意識し、体に負担をかけない食生活を心がけましょう。
管理栄養士の視点から「消化の良い食べ物」と「消化の悪い食べ物」を解説。さらに「消化に良い食べ方のコツ」や「消化に良いおすすめメニュー」もご紹介します。
胃腸にやさしい「消化の良い食べ物」
胃腸に疲れを感じたら、まず意識してもらいたいのが「消化の良い食べ物」です。ここでは、胃腸に負担をかけない食べ物をご紹介します。
ポイントとなるのが「食物繊維」「脂質」です。どちらも健康には欠かせない重要な栄養素ですが、胃腸の調子に合わせて摂取量を調整しましょう。
穀類
おかゆやうどんに含まれる栄養素は大部分が炭水化物。胃腸に負担をかける食物繊維や脂質がほぼ含まれないことから、消化の良い食べ物に該当します。
そうめんも製造工程で使われる油脂が少な目なのでおすすめです。
- 〔消化の良い主な穀類〕
- おかゆ、うどん、そうめん など
肉類や魚類
胃腸の調子が良くないときは、牛肉や豚肉の赤身や鶏のささ身など、脂肪の少ない物を選びましょう。
魚なら赤身魚よりも白身魚がおすすめです。
- 〔消化の良い主な肉類・魚類〕
- 赤身、ささ身、白身魚 など
豆類
豆類には食物繊維が多く含まれるため、基本的に消化に良い食べ物とは言えません。
胃腸が弱っているときには、やわらかな豆腐や、発酵によって組織がやわらかく分解されている納豆などをとるとよいでしょう。
- 〔消化の良い主な豆類〕
- 豆腐、納豆 など
野菜
消化酵素を含み胃腸の消化機能を助ける大根やかぶ、山芋、胃粘膜の修復など役立つカロテンが豊富なにんじんなどがおすすめです。
- 〔消化の良い主な野菜〕
- 大根、かぶ、山芋、にんじん など
果物
やわらかくて胃腸の働きを助ける栄養素が含まれるバナナ、消化吸収が良いリンゴがよいでしょう。
- 〔消化の良い主な果物〕
- バナナ、りんご など
卵・乳製品
卵は脂質や食物繊維を多く含むものではないため、基本的に消化に良い食べ物です。ただし、調理方法によって消化のよさは変わります。
温泉卵や半熟卵、卵とじなど、やわらかな状態になるまで火を通して食べるのがベターです。
また、牛乳や乳製品に含まれるタンパク質「カゼイン」は消化されやすい構造をもっており、消化・吸収がしやすい食べ物と言えます。
乳製品には胃酸を中和し、胃粘膜への刺激をやわらげる働きもあります。
- 〔消化の良い主な卵・乳製品〕
- 卵、牛乳、ヨーグルト、フレッシュチーズ など
胃腸に負担をかける「消化の悪い食べ物」
消化の悪い食べ物は、基本的に以下の3つの特徴があると覚えておくとよいでしょう。
- 〔3つの特徴〕
- 食物繊維が豊富なもの
- 脂っこく高カロリーのもの
- 胃腸に刺激を与えるもの
穀類
食物繊維の多いそばやさつまいも、脂質が多いラーメンやパスタ、デニッシュ系のパン、消化に時間がかかるもち米を使ったおこわや赤飯などは、胃腸の調子が悪いときは避けた方がよいでしょう。
- 〔消化の悪い主な穀類〕
- そば、さつまいも、ラーメン、パスタ、デニッシュ系パン、もち米 など
肉類や魚類
脂身の多い肉やベーコンなどの加工肉、ウナギやブリなど脂ののった魚は控え目に。
タコやイカは消化に悪いとされますが、消化しにくいというよりも、噛みごたえがあるため、しっかり噛まないで飲み込んでしまうことで消化しにくくなっていると考えられます。
- 〔消化の悪い主な肉・魚類〕
- 脂身の多い肉、加工肉、ウナギ、ブリ、タコ、イカ など
豆類
胃腸の調子がすぐれないときは、枝豆など皮がついたまま食べる豆や、がんもどきや厚揚げといった油で揚げたものは避けましょう。
- 〔消化の悪い主な豆類〕
- 枝豆、がんもどき、厚揚げ など
野菜
ごぼうやれんこん、セロリ、たけのこなどの食物繊維を多く含む物は、胃腸が弱っているときのとり過ぎに注意が必要です。
食物繊維はきのこ類や海藻類にも多く含まれます。
- 〔消化の悪い主な野菜〕
- ごぼう、れんこん、セロリ、たけのこ、きのこ類、海藻類 など
果物
柑橘類など酸味が強く胃粘膜を刺激する果物、生の状態より食物繊維の割合が増えがちなドライフルーツは避けた方がよいでしょう。
パイナップルは消化を助ける働きをもつ栄養が含まれる一方、食物繊維も多いため、胃腸が弱っているときは注意しましょう。
- 〔消化の悪い主な果物〕
- 柑橘類、ドライフルーツ、パイナップル など
卵・乳製品
卵は、温泉卵や半熟卵の状態だと消化しやすく、固ゆで卵や生卵は消化しにくくなります。
乳製品のうち、バターは成分のほとんどが脂質になるため、胃腸の調子が低下しているときはとり過ぎないようにしましょう。
- 〔消化の悪い主な卵・乳製品〕
- 生や固ゆでの卵、バター など
その他
アルコールやコーヒー、炭酸飲料などは胃腸への刺激となり、負担をかけてしまうためNGです。
カレーライスなど香辛料が強い料理も避けましょう。
- 〔消化の悪いその他の食べ物〕
- アルコール、コーヒー、炭酸飲料、香辛料が強い料理 など
消化に良い食べ方のコツ
「食欲の秋」の由来には、「涼しくなって食欲が増すから」「日照時間が短くなることで食欲をコントロールするセロトニンの分泌が少なくなるから」「旬を迎える食材が多いから」などさまざまあります。
しかし、厳しい暑さが続いた夏の間、冷たい物をたくさん口にしたり、冷房が効いた部屋で長時間過ごしたりしていた影響が、秋になってから胃腸の疲れとして表れる場合も。そのような状態で「食欲の秋」だからと食べ過ぎてしまうと、胃もたれや食欲不振を起こしてしまいます。
そういうときは、消化の良い食べ物を選ぶだけでなく、調理の仕方や食べ方も消化が良くなるよう工夫するとよいでしょう。
食材はできる限り小さく切る
大きな状態だと、口の中でしっかり噛んでから胃腸へと送る必要がありますが、噛み方が不十分だと消化に時間がかかってしまいます。調理の段階で小さく切っておくとよいでしょう。
生を避けて油を使わない加熱調理を
生のまま食べるよりも加熱調理をして、やわらかく温かく仕上げた方が消化にはベターです。ただし、油を使って揚げたり炒めたりすると、胃腸の負担が増してしまいます。
おすすめなのは、蒸す、茹でる、煮る調理法です。
胃の負担になるものを避ける
刺激の強いもの、脂っこいもの、かたいもの、冷た過ぎたり熱過ぎたりするもの、味の濃いものは、胃腸での消化に大きなエネルギーがかかります。
よく噛んで食べる
よく噛むことで消化酵素を含む唾液が多く分泌されます。消化酵素はでんぷんを分解し、消化を助けます。
食べ過ぎず規則正しい食生活を
食べ過ぎ飲み過ぎや、遅い時間の食事、不規則な食事は、胃腸に負担をかけてしまいます。特に夜8時以降は消化管の働きが低下するので、食べる際は「消化しやすいもの」を選ぶことが重要になります。
消化に良い食べ物を使ったおすすめメニュー
胃腸の調子がすぐれないときにおすすめのメニューをご紹介します。
主食 : 具入りのおかゆ、うどん、にゅうめんなど
温かなおかゆやうどん、にゅうめんは消化に良いメニューの代表格です。
とはいえ、炭水化物だけでは栄養が偏ってしまいます。卵を加えたり、胃腸に負担をかけにくい野菜を一緒に煮込んだりしましょう。
主菜 : 煮魚、蒸し鶏、湯豆腐など
白身魚の煮魚や蒸し鶏などのあっさりとした料理がおすすめです。
寒い季節には、湯豆腐など消化に良い食べ物を使った鍋料理も良いでしょう。
副菜 : 煮物、茶わん蒸し、卵豆腐など
生野菜のサラダは消化に時間がかかります。酢の物も胃腸に負担をかけるため避けたいところ。
野菜をとるなら煮物や煮びたしにしましょう。茶わん蒸しや卵豆腐などもおすすめです。
汁物 : 味噌汁、ポタージュなど
野菜をやわらかく煮込んだ味噌汁やスープ、野菜を裏ごししたポタージュなどは、消化しやすいだけでなく、栄養がとれて胃腸も温めてくれます。
デザート : リンゴのコンポート、バナナ入りヨーグルト、ゼリーなど
リンゴを甘く煮たコンポートや、バナナ入りのヨーグルト、ゼリーなどがおすすめです。ただし、カフェイン入りのゼリーは避けましょう。
最近アスリートの補食として注目されているカステラも、脂質や食物繊維が少ないため消化しやすいと考えられます。
この方にお話を伺いました
管理栄養士・フードコーディネーター 大島 菊枝 (おおしま きくえ)
管理栄養士。東京農業大学卒。子どもの頃より栄養学に興味を持ち、研究職に就く。インテリア会社が経営する飲食業に従事した後、独立。時間栄養学の観点から、1日の代謝量を決める朝ごはんを重視し、できるだけ簡単でやる気になる朝食作りを提唱している。著書に『一生太らない食べ方習慣 朝ごはんはすごい』(ワニブックス)『毎日ヨーグルトようび』(オレンジページ)など。