バジルの特徴や効果・効能とは?栄養素や機能性成分を引き出す食べ方も紹介
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バジルの特徴や効果・効能とは?栄養素や機能性成分を引き出す食べ方も紹介

ペストジェノベーゼなどで知られるバジルは、機能性や栄養が豊富で健康維持のためにもぜひ取り入れたいハーブです。バジルの効能を生かした食べ方やレシピ、長く楽しむためのコツなどを紹介します。

〔目次〕
バジルの特徴とは?
バジルに含まれる栄養素・機能性成分&効果・効能
バジルの栄養を効果的に取り入れる食べ方4選
食べ過ぎNG? バジルを食べるときの注意点
バジルの選び方と保存方法
バジルを使ったおすすめレシピ

バジルの特徴とは?

バジルの画像

バジルは熱帯アジアを原産とするシソ科のハーブで、多年草ですが、寒さに弱く越冬できないため、日本では一年草として扱われています。

使用部分は茎葉や花、種子。その香りや鮮やかな色合いを生かし、スープやサラダ、ソース、ドレッシングなどさまざまな形で楽しまれています。「バジルシード」と呼ばれる種子(植物学的には果実)は、アジア料理のデザートなどに利用され、食物繊維が豊富なことから近年はダイエットフードとしても注目を集めています。

バジルとスイートバジルの違いは?

「バジル」は、シソ科オキムム属植物の総称で、「スイートバジル」はその中の1種です。オキムム属には67種のバジルがあり、その中で「スイートバジル」と「ホーリーバジル」が特に人気です。それぞれの種にたくさんの品種があり、バジル全体で100品種以上が知られています。

「スイートバジル」のうち、「ジェノベーゼバジル」などはイタリア料理でぺストジェノベーゼなどに使われ、日本では単に「バジル」とも呼ばれているお馴染みの品種です。その他にも、タイで煮込み料理などに用いられる「サイアムクイーン」などのタイバジル品種や、「ダークオパール」などの紫葉の品種、「シナモンバジル」などのスパイシーな香りの品種などがあります。

一方の「ホーリーバジル」は東南アジアで用いられている種で、ヒンズー教の聖なるハーブ、万能ハーブとして珍重されており、代表品種には、「ラーマトゥルシー」や「クリシュナトゥルシー」など神様の名がついており、アダプトゲンとして、ハーブティーで人気のハーブです。一方、タイでは、"ガパオ"と呼ばれる品種をカーオガパオ(ガパオライス)などのタイ料理に用います。

各地の呼び名は?

「バジル」とは英語での呼び名で、英語では実際には「ベイゾー」、「バゾー」と発音されます。イタリア語では「バジリコ」、フランス語では「バジリク」と呼ばれ、「王」の意の古代ギリシャ語の「βασιλεύς(basileus)」から派生した「王室の植物」を意味する「basilikon」に由来します。

和名は「メボウキ(目箒)」です。ポルトガル語では「マンジェリコン」といいますが、沖縄にマンジェリコンと呼ばれる別植物があるので注意が必要です。タイ語ではスイートバジルを「ホーラパー」、レモンバジルを「メーンラック」、ホーリーバジルを「ガパオ」と呼びます。ホーリーバジルは、ヒンディ語では「トゥルシー」と呼ばれます。

バジルの旬は?

熱帯地域原産のバジルは、暖かいと旺盛に育ちます。気温が上昇する5月下旬頃から成長が著しくなり、梅雨明け7月頃から残暑が終わる9月頃にかけてが旬になります。

江戸時代では目のゴミをとった!?バジルの歴史

バジルシードの画像

バジルは16~17世紀に熱帯アジアからヨーロッパへ持ち込まれたとされ、バジルが持つ豊かな芳香や高い薬効が、料理だけでなく虫除けや芳香剤など生活のあらゆる場面に利用されてきました。インドでは「ホーリーバジル」が伝統医術アーユルヴェーダに用いられ、アダプトゲン、万能ハーブとして珍重されています。

日本には江戸時代に中国からバジルの種子が伝来したとされています。江戸時代に編纂された百科事典『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』など当時の文献には、水を含むと30倍に膨らみゼリー状になる種子の性質を活用して、種子を目に入れてゴミを出すといった、現代でいう目薬のように利用したという記録があります。これがバジルの和名「メボウキ(目箒)」の由来につながっています。なお、バジルシードを一般には種子と呼んでいますが、植物学的には果実です。

現在のように料理や自家栽培などでバジルを楽しむようになったのは、イタリア料理のブームで「スイートバジル」が普及して以降です。現在では、スイートバジルに加えて、アダプトゲンでもある「ホーリーバジル」がハーブティーで人気です。

なお種子の意外な使い道は以下のページでも紹介しています。ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。

バジルに含まれる栄養素・機能性成分&効果・効能

バジルはビタミン・ミネラルが豊富で、ほうれん草やピーマンに匹敵するほど栄養価が高く、精油や抗酸化物質なども豊富で機能性の高いハーブということをご存知でしょうか。その主な栄養素や機能性成分をご紹介します。

貧血の予防に有効な「鉄分」

バジルは鉄分を豊富に含んでいます。鉄分は酸素を全身に運ぶ赤血球をつくるために欠かせない栄養素。不足すると、貧血による集中力低下や食欲不振、疲労感などの症状を引き起こすことがあります。貧血を防ぎ、健やかな体を維持するためには鉄分を十分にとることが重要です。

粘膜や皮膚、免疫機能を正常に保ち、肌荒れを予防する「β-カロテン」

バジルはβ-カロテンも豊富です。β-カロテンは体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜を健やかにする働きがあり、肌荒れの予防も期待できます。また高い抗酸化作用により生活習慣病の予防にも役立つといわれています。

抗酸化作用によって体内の脂質の酸化を抑制する「ビタミンE」

バジルに含まれるビタミンEの抗酸化作用により、老化を防ぐ効果が期待できます。過酸化脂質の生成を抑え、血管を健康に保つほか、悪玉コレステロールの酸化を抑える働きもあります。

骨や血管の健康を維持する「ビタミンK」

バジルからは、血液の働きを正常に保つほか、カルシウムを骨に沈着させるなど丈夫な骨づくりに役立つビタミンKも摂取できます。ビタミンKは神経興奮の抑制や、血液凝固作用の促進などにも関与しています。

腎臓でのナトリウム再吸収を抑制し、尿中への排出を促進する「カリウム」

バジルには、ナトリウムと共に細胞の浸透圧を維持するカリウムも多く含まれています。カリウムには、腎臓でのナトリウム再吸収を抑制し、尿中への排出を促進するため、血圧を下げる働きがあります。不足すると脱力感や食欲不振、筋無力感などの症状が現れることがある、食事からとるべき必須ミネラルです。

骨粗しょう症の予防に役立つ「カルシウム」

骨や歯の形成に欠かせないカルシウムは、骨成長の著しい10代や、骨粗しょう症が起こりやすい更年期の女性は積極的にとりたい栄養素ですが、吸収されにくいという特徴があります。

バジルはカルシウムが豊富であるのに加え、骨の形成を促すビタミンKも含まれているため、効果的に取り入れることができます。きのこなどからビタミンDも一緒にとるといいでしょう。

精油成分でもあり、アダプトゲンとしてのさまざまな作用のある「テルペノイド」

スイートバジルはリナロールやメチルオイゲノール、1,8-シネオール、オイゲノール、メチルチャビコールなどの精油成分を、ホーリーバジルはオイゲノールやメチルオイゲノール、β-エレメン、カリオフィレンなどの精油成分を含有します。これらには、自律神経の調節や食欲増進、消化機能促進、鎮痛、月経不順改善、疲労回復、鎮痛などの作用があります。

また、ホーリーバジルは、ウルソール酸やオレアノール酸などの抗酸化作用の強い物質を含有し、ストレスに対する高い適応力を有することからアダプトゲンに分類され、抗ストレスや抗炎症、抗腫瘍、抗疲労、感染症予防、集中力向上などの作用があります。

抗酸化作用をはじめさまざまな作用のある「フラボノイド」

スイートバジルもホーリーバジルも多くのフラボノイドを含有し、抗癌、抗微生物、抗炎症、免疫調節、抗ストレス、抗糖尿病、抗発熱、抗関節炎、抗酸化などの活性を示すことが報告されています。特にホーリーバジルは、ルテオリンやアピゲニン、ロスマリン酸、サルビアノール酸、グロボイドナンなど、強い抗酸化作用を示すフラボノイドを含有し、アダプトゲンとして高いストレス適応力を有します。

バジルの栄養を効果的に取り入れる食べ方4選

カプレーゼの画像

バジルに含まれる豊富な栄養を効果的に摂取するにはどうすればよいのでしょうか。おすすめの食べ方を紹介します。

1:油と一緒に食べる

β-カロテンやビタミンK、ビタミンEといった脂溶性ビタミンは、油と一緒に食べることで体内への吸収力が高まります。すりつぶしたバジルとオリーブオイルなどを攪拌(かくはん)してつくる「ペストジェノベーゼ」は、まさに理にかなった食べ方といえるでしょう。

またバジルには胃の働きを助けて消化を促す作用があるので、油を使った料理に加えると、胃もたれを防ぐ効果も期待できます。

2:生のまま食べる

新鮮なバジルを選び、フレッシュサラダやカプレーゼなどにして生のまま食べて、香りを存分に楽しみましょう。香り成分の「リナロール」には鎮静作用があるため、リラクゼーション効果が期待できます。

3:ビタミンCが豊富な食材と一緒に食べる

バジルに含まれているビタミンは、皮膚粘膜の保護に作用する脂溶性ビタミンです。そこにコラーゲン生成に必要な水溶性のビタミンCを加えて、美容効果や老化抑制効果を高めましょう。バジルを散らしたサラダにレモン汁をかけると、酸味や栄養価もアップします。

4:調理の最後に加える

バジルは加熱しすぎると香り成分が飛んでしまいます。調理の仕上げや、火を止めた直後などにバジルを加えると風味を生かせます。生で使うときと同様に、香り成分による強壮作用や鎮静作用なども期待できるので、ストレスで体や心が乱れているときに取り入れるとよいでしょう。

食べ過ぎNG? バジルを食べるときの注意点

いくらバジルの栄養価が高いからといって、たくさん食べればよいというわけではありません。適切な分量をバランスよくとりましょう。

食べ過ぎない。妊娠中は摂取量に注意

バジルには子宮収縮作用があり、食べ過ぎると流産や早産につながる恐れがあるため、妊娠中の人は摂取量に注意が必要です。また、バジルに豊富に含まれるビタミンKの血液凝固作用は、血液をサラサラにする薬に影響が及ぶことがあります。体調や体質に心配がある方も食べ過ぎには気をつけましょう。

乳幼児には食べさせない

胃腸の働きが未成熟な乳幼児の場合、バジルの薬効効果が強く働く恐れがあります。アレルギーを誘発する可能性もあるため、避けるのが安心です。

即効性を求めない

食べ物による健康効果は緩やかに現れます。バジルが栄養豊富だからといって、薬のような即効性を期待せず、食生活に適量を取り入れることで健康的な体づくりを目指しましょう。

新鮮なものを食べる

みずみずしい摘みたてのバジルは、香りだけでなく効果・効能も高く、料理の風味を引き立てます。寒さに弱い性質から、冷蔵庫の冷気に長く当てたり、時間が経ってしまったりすると、黒く変色し味や香りが損なわれてしまいます。できるだけ新鮮なうちにいただきましょう。

バジルの選び方と保存方法

バジルの選び方と保存方法

バジルを購入する際は、新鮮なものを選ぶようにします。葉は傷みやすいため優しく丁寧に扱いましょう。一度にたくさんのバジルを使えないときは、香りを損なわないよう工夫して保存します。選び方のポイントと、保存方法を紹介します。

新鮮なバジルを選ぶポイントは?

葉がピンと張って、瑞々しくツヤがあり、鮮やかな濃い緑色をしているものを選びましょう。茎もしっかりしているかチェックしてみてください。

バジルの上手な保存方法

一番よい保存方法は、生きた植物として保存すること、すなわち、育ててその都度使うことです。収穫して余った場合などは以下の方法を参考にしてみてください。

常温保存

コップの水に挿し、毎日水の取り替えをして保存します。保存期間は数日。

冷蔵保存

大きめの容器に湿らせたキッチンペーパーを敷き、傷まないようバジルをやさしく入れます。さらに湿らせたキッチンペーパーで覆ってふたをし、野菜室で保存しましょう。新聞紙やビニール袋に包んでもOK。ただし、バジルは熱帯原産ですので、12℃以下で低温障害を起こし、葉が黒くなるため、長期保存できず、数日間の保存が限界です。

冷凍保存

水洗いしたバジルの水気を拭き取って、密閉容器に平らに置いて冷凍保存します。解凍すると色が悪く香りも落ちるため、生葉を利用する料理には使えません。使うときは冷凍のまま調理に加えましょう。

もしくは細かく刻んだバジルをオリーブオイルになじませソース状にし、ジッパーつきの保存袋に入れて冷凍してもOKです。

乾燥で長期保存

天日干しで一気に乾燥させ、ドライハーブとして利用する方法もあります。長期間の保存が可能ですが、香りは弱まります。

バジルを使ったおすすめレシピ

夏の薬膳メニューの画像

バジルの豊富な栄養を摂取できて、しかも美味しいおすすめのレシピです。ぜひお試しください。

油と一緒に食べるなら?

バジルソース

バジルとにんにく、松の実、塩、パルミジャーノレジャーノ、ペコリーノサルド、オリーブオイルでつくるイタリアの伝統的ソース「ペストジェノベーゼ」は、パスタはもちろん、ゆでた野菜、魚や肉のグリルなどにも大活躍! バジルを細かくすることで有効成分の働きがアップします。簡単に、バジルとオイルのシンプルなバジルソースでもよいでしょう。

ミキサーを使わず、バジルをすり鉢ですりつぶしてオイルと混ぜてもOK。お好みで松の実やチーズを加えるなどアレンジも楽しめます。

バジルオイル

オリーブオイルにバジルを数時間浸して取り出し、香りを閉じ込めたオイル。パンやパスタ、ゆでた野菜にかけたり、料理の下味に使ったりと使い勝手も抜群です。

バジルバター

室温に戻したバターに、刻んだバジル、塩少々を加えて混ぜ、クッキングシートに巻いて冷やし固めてつくるフレーバーバターです。パンに塗ったり、白身魚のソースに使ったりしても。

生のまま食べるなら?

カプレーゼ

バジルと相性のよいトマト、モッツァレラチーズにオリーブオイルをかけたカプレーゼは、バジル料理の代表的レシピです。

サラダ

手で粗くちぎって使うと芳香がアップし、豊かな風味を楽しめます。レモンを絞れば熱に弱いビタミンCも効率よく摂取できます。

風味づけに活用

料理に散らす、ドレッシングに加えるなどして、料理の風味をアップ。茎は苦味が強いので細かく刻みましょう。

バジルは意外にも乳脂肪分の多いクリームとも好相性。以下のページではバジル入りのホームメイドプリンのレシピを紹介しています。

家庭菜園でバジルを栽培すれば、いつでもフレッシュに使えます。詳しい育て方は以下でチェックしてみてください。

この方にお話を伺いました

博士(農学) 元東京農業大学准教授 日本メディカルハーブ協会理事・事務局長 株式会社グリーン・ワイズ 木村 正典 (きむら まさのり)

木村 正典

専門は人間・植物関係学、都市園芸学、野菜、ハーブなど。ハーブの精油分泌組織の顕微鏡観察に長く携わるとともに、豊かな社会づくりのための建物緑化、都市緑化、有機栽培、学校菜園、コミュニティガーデン、市民農園、家庭菜園、ファーマーズマーケットなどの役割と意義について研究。講演活動の他、学校や集合住宅の屋上などでの菜園指導も行っている。『二十四節気の暮らしを味わう日本の伝統野菜』(GB)、『ハーブの教科書』(草土出版)、『有機栽培もOK!プランター菜園のすべて』(NHK出版)、『木村式ラクラク家庭菜園』(家の光協会)など著書多数。「NHK趣味の園芸 やさいの時間」旬ベジ二十四節気講師。

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