レモングラスやユーカリ、ペパーミント 、ローズマリーなどのハーブは、虫や鳥が嫌いな匂いや物質を分泌して食べられるのを防ぐ"忌避作用"をもっていて、古くから虫除けとして活用されてきました。
玄関やベランダにハーブを置いたりアロマを活用したりするなど、使い方も好みで選ぶことができます。虫除け効果が期待できるおすすめのハーブ10選とその効果、使い方を知り、虫を寄せ付けない工夫をしましょう。
ハーブが虫から身を守るための香りを活用
一度根を下ろしたところから動けない植物は、虫や鳥が嫌がる香りや、苦みのある物質の分泌によって食べられるのを防ぎ、同時にカビや有害な菌の発生も防止しています。
刺激性のある強い香り成分をもつハーブには、この"忌避作用"と呼ばれる働きに優れたものが多いため、これを"虫除け"として活用させてもらうというわけです。
ちなみに、花や果実の芳しい香りは、昆虫や鳥を引き寄せ受粉を促したり、種を遠くに運んでもらったりする狙い(誘引作用)があるようです。
動物と違って一度根を下ろすと、お腹が空いても、危険を感じても、種の繁栄のためにも動けない植物。だからこそ、自分でエネルギーを作り出す光合成という機能を持ち、忌避作用や誘引作用を使って巧みに賢く生きています。
そんな植物の力を借りて、薬剤に頼らない虫除けを実践しましょう。
虫除け効果があるハーブ10選
では、どんなハーブに虫除け効果があるのでしょうか?
古くから人間は暮らしの中で体験的にハーブを活用し、様々な働きを見出してきました。虫除けについても多くの伝承がありますが、それらについて現代の科学的な視点でハーブが持つ虫除けの働き(忌避作用)の研究データが発表されるようになっています。
例えば、(公社)日本アロマ環境協会が実施した実験結果でも、レモングラスとシトロネラには蚊やゴキブリ、ダニの忌避作用、ペパーミント、ユーカリ、ゼラニウム、レモングラスにはダニの忌避作用があることが確認されています。
ハーブの作用は、薬剤とは違って環境や状況によって異なることもあります。香りの感じ方は個人差があり、好みも大切にしたい点。ぜひ自分に合う虫除け対策を見つけてください。
レモングラス
効果がある虫:蚊・ゴキブリ・ダニなど
インド原産で蒸し暑いエリアに自生するイネ科の植物。レモングラスの主要成分の「シトラール」「シトロネラール」には防虫効果があり、古くから蚊帳に編み込まれるなど、蚊よけとして活用されてきました。
鮮烈なレモンのような香りで、好みはありますが、心を明るく元気にしてくれる香り。虫除けしながらリフレッシュにも。また、レモングラスは一度根がはれば手間がかからず、育てやすいハーブでもあります。育て方については以下記事をチェック。
シトロネラ
効果がある虫:蚊・ゴキブリ・ダニなど
スリランカ原産。レモングラス同様イネ科の植物で、防虫作用があるといわれる「シトラール」「シトロネラール」が多く含まれています。古くから蚊帳に編み込まれたり、蚊取りのためのロウソクに使用されたりと広く活用されてきました。
レモンのような爽やかな香りでデオドラント作用もあり、虫除けと共に消臭にも役立ちます。
ユーカリ・グロブルス
効果がある虫:蚊・ハエなど
原産のオーストラリアでは、ユーカリの木の周りには蚊が集まらない現象があったことから、チフスやマラリアの予防に活用されてきました。昆虫を寄せ付けない物質(パラ-メンタン-3,8-ジオール)が確認されています。
シャープで清涼感ある香りは、鼻水や鼻づまりを緩和する抗菌作用も期待できるので、虫除けと共に夏風邪対策にも◎。虫刺され後の解毒としても活用されてきました。
レモンユーカリ(ユーカリ・シトリオドラ)
効果がある虫:蚊・ゴキブリなど
防虫作用があるとされる「シトロネラール」が主成分であり、虫除けに活躍します。防虫と共にデオドラント作用もあるため、スプレーを作ると蒸し暑い時期の虫除けとボディスプレーとしても活用でき一石二鳥。
鎮静作用もあるため、ベッドルームで使用しても眠りの妨げになりません。トムヤムクンなどエスニック料理にも使われるハーブです。
ゼラニウム
効果がある虫:蚊・ハエなど
ヨーロッパでは古くから魔除けとして玄関先や窓辺に置く習慣があったハーブ。防虫作用があるとされる「テルピネオール」「シトロネロール」を含むため、虫除けを期待していたともいわれます。
「蚊連草(かれんそう)」という、蚊を寄せ付けないことで知られるハーブもゼラニウムの仲間です。
バラのような甘さとミントのような清涼感ある香りで、ミントと香りの相性ぴったり。虫除けブレンドとして活用するのもよいでしょう。
ペパーミント
効果がある虫:蚊・アリ・ダニ
爽快なミントの香り成分「メントール」が、虫にとっては苦手だとされています。同じミントの仲間で「日本薬局方」に収載されているハッカの用途に「虫除け」が記載されているので、効果の程はお墨付き。
清涼感ある香りは、虫除けと共に寝苦しい季節に体感温度を下げる作用が期待でき、夏場に活躍するハーブです。
ラベンダー
効果がある虫:蚊・蛾など
防虫作用があるとされる「リナロール」を多く含み、リラックス効果とともに虫除け効果が知られてきました。
ヨーロッパでは衣類を保管する場所に、ラベンダーの花穂の入ったサシェを備え、虫除けにするという習慣も。一部の市販されている虫除け製品にも、ラベンダーをはじめとするハーブから抽出した「リナロール」が配合されています。
加えて、虫刺され後のかゆみをやわらげる働きも期待できます。鎮静作用が高いので、ベッドルームの虫除け対策として活用すれば心地よい眠りを誘うプラスオンも。
ティートリー(ティーツリー、ティートゥリーとも)
効果がある虫:蚊など
オーストラリア原産で、原住民アボリジニの万能薬として親しまれてきました。強い殺菌力があることで有名ですが、防虫作用があるとされる「テルピネオール」や殺虫作用、虫刺され後の発疹やかゆみをやわらげる働きも期待できます。
カビを抑制する作用(抗真菌作用)も期待でき、ライムを思わせる清涼感ある香り。夏場に重宝するハーブです。
ローズマリー
効果がある虫:蚊など
防虫作用があるとされる「カンファー」を多く含むローズマリー。
ちなみに「カンファー」は、日本でも衣類の防虫剤として活用されてきた樟脳(しょうのう)の成分。クリアでシャープな香りは、暑さでバテやすい心身のリフレッシュにも最適です。
ローズマリーも育てやすいハーブの一つ。以下記事を参考にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
クローブ
効果がある虫:蚊など
クローブはペストのような伝染病の予防に使用されてきたハーブで、特徴成分である「オイゲノール」という成分には防虫、抗菌作用があるといわれています。
クローブをオレンジに差し込んだポマンダーも虫除けとしても活用されてきました。スパイシーな甘い香りで生薬名は丁子としても知られています。
クローブについて詳しくは以下記事をご覧ください。
虫除けのためのハーブの活用方法
虫除けにおすすめのハーブを抑えたところで、実際にどのように活用すればよいのかをご紹介します。
なお、これらのハーブは刺激が強い香りを放つことが多いので、多量に使い過ぎないように注意してください。また、使用時に香りが苦手だと感じたら、心身のストレスを避けるため使用を中止し、他のハーブに変更してください。快適だと感じる使用方法を心得ましょう。
ハーブを窓辺に置く
ハーブの鉢植えやハーブを束ねた「スマッジ」を窓辺や玄関先に置いて、虫の侵入を防ぎます。
- 〔作り方・使い方〕
- 生のハーブを少量束ね、風通しの良い場所につるす。
〇ポイント
・夏場は1週間ほどでドライハーブになり日持ちします。
・フレッシュな期間はもちろん、ドライハーブになってからも香りがする間は虫除けの効果を発揮します。
ディフューザーなどで精油を焚く
好みの香りの精油を部屋に拡散し、虫の侵入を防ぎます。
香りの刺激が強いと感じたら、防虫作用がありながら穏やかな香りのラベンダーやゼラニウム、柑橘系の精油を少量ブレンドすると香りが優しくなります。
- 〔作り方・使い方〕
- ディフューザーやアロマランプなどに、3~4滴精油を垂らし、拡散する。
〇ポイント
・刺激が強い香りが多いので、少量から始め、垂らし過ぎには注意しましょう。
「アロマキャンドル」を灯す
精油を焚くのと同じ要領でロウソクに精油を垂らし、お部屋に拡散させます。
ロウソクの炎は、癒し効果も抜群。アウトドアでの活用もおすすめです。
- 〔作り方・使い方〕
- ティーキャンドルに火を灯し、淵まで溶けてきたら火を消す。
- ロウが固まる前になるべく芯から離れた所に素早く精油を5滴垂らす。
- ロウが固まってから再び炎を灯す。
〇ポイント
・精油は引火性なので、火が着いた状態で精油を垂らさないようにしましょう。
・火が燃え移らないようくれぐれも注意しましょう。
虫が発生しそうな場所に「サシェ」を置いておく
予め虫が発生しそうな場所にドライハーブを入れた小袋「サシェ」や精油を垂らしたコットンなどを置いておくと、虫を寄せ付けません。
衣替えのシーズンには衣類タンスにしのばせておくとよいでしょう。
- 〔作り方・使い方〕
- ドライハーブは1/2カップを目安にお茶パックなどの不繊布や麻などの小袋に入れる。
- 精油は5滴ほどを目安にコットンなどに垂らし、同様に小袋に入れる。
網戸に「虫除けスプレー」を塗る
予め網戸に虫除けスプレーを塗布し、虫の侵入を防ぎましょう。
ドライハーブを使った網戸用虫除けスプレーの作り方
予めチンキ剤(ハーブの成分をアルコールで浸出したもの)をつくり、水で割って作成します。
- 〔材料〕
- ドライハーブ......適量
- 無水エタノール......適量
- 精製水......適量
- 〔作り方・使い方〕
- ドライハーブを空き瓶いっぱいに入れ、無水エタノール(またはウォッカ)をひたひたに入れる。
- 時々瓶をゆすって2週間ほど置き、ハーブを濾してチンキ剤を作る。
- チンキ剤1に対し、水4の割合でスプレー容器に入れ、よく振って使用する。
精油を使った網戸用虫除けスプレーの作り方
- 〔材料〕50ml分
- 無水エタノール......5ml
- 精油......20~50滴程度
- 精製水......45ml
- 〔作り方〕
- スプレー容器に無水エタノールと精油を混ぜ、水を注いでよく振ってから使用する。
〇ポイント
・スプレー制作の注意点は以下をご確認ください。
虫除けスプレーを肌に塗る
網戸用虫除けスプレーよりも精油を少量にし、保湿成分を配合して作成します。
レシピ、作り方・使い方は以下の記事をご覧ください
ファブリックスプレーでダニ対策
高温多湿の環境下でダニが繁殖しやすくなる寝具やソファーに吹きかけ、寄せ付けにくくします。網戸用虫除けスプレーの精油の場合と同様の作り方で、ダニの忌避作用があるとされる精油を選ぶとよいでしょう。
○ポイント
・肌に直接スプレーしないようご注意ください。
・寝具やソファーなどにスプレーする場合は、乾いてから使用しましょう。
・精油によっては色が付く場合がありますので、事前に確認の上ご使用ください。
虫除け&虫刺されかゆみ止めオイル
予防もケアも期待できるアロマオイル。虫除けとかゆみ止めの作用を持つラベンダーやペパーミント、ユーカリ、ティートリーの精油を使いましょう。
- 〔材料〕
- スイートアーモンドオイルなどの植物油......10ml
- 精油......2滴
- 〔作り方・使い方〕
- 植物油に精油をよく混ぜ、遮光瓶に入れる。
- 虫除けの場合は肌に塗り伸ばし、かゆみ止めにはかゆい部分に塗る。
○ポイント
・クローブ精油は刺激が強いため、アロマオイルには使用しないでください。
・精油をレシピの分量以上は入れないようにしましょう。
・刺激を感じたら、使用を中止し、よく洗い流してください。
・1カ月を目安に使い切りましょう。
園芸用虫除けスティック
畑や花壇、植木鉢の虫除けには、スティックに精油を適量つけた「虫除けスティック」がおすすめ。土に刺しておくと害虫を寄せ付けにくくなります。
- 〔作り方・使い方〕
- 精油を割りばしの先端に数滴つけ、精油をつけていない側を花壇や鉢に刺す。
- 香りがしなくなったら精油を追加する。
巻末コラム:ダニが最も嫌う香りはシトロネラやペパーミント!
日本アロマ環境協会は、アロマテラピーにおいて使用される精油にダニの忌避作用があるかを確認する実験を行いました。その結果、6種の精油に忌避作用があることが示唆されました。
ダニの忌避作用実験概要
対象:ヤケヒョウヒダニ、1実験あたり約1万匹
精油:シトロネラ、ペパーミント、ユーカリ、ゼラニウム、レモングラス、ユズの6種
測定方法:大きなシャーレの中に小さなシャーレを置き、小さなシャーレには5%希釈の精油をスプレーしたろ紙を敷き、中心にダニのエサ(誘引培地)を設置。大きなシャーレにはダニ約1万匹を 放ち、24時間後に小さなシャーレに侵入したダニの数をカウントした。 「対照」として、精油を含まない溶液をスプレーした場合の数もカウントした。
ダニの忌避作用実験結果
ユズ、レモングラス、ゼラニウム、ユーカリ、ペパーミント、シトロネラの精油をスプレーした場合(下図点線内)において、小さなシャーレへのダニの侵入数は有意に低くなりました。
この方にお話を伺いました
株式会社ジャパンライフデザインシステムズ所属 葛和 恵奈子 (くずわ えなこ)
英国IFAアロマセラピスト/AEAJアロマセラピスト/AEAJアロマセラピーインストラクター/メディカルハーブコーディネーター/RTAベビーマッサージセラピスト
編集者として取材で出会ったハーブ&アロマのチカラに魅せられ、メディカルハーブ健康術&生活術を学ぶ。専門学校講師として、またイベントやセミナーでTPOに合わせたハーブ&アロマ活用方法を伝えている。2児男子の母。