「ハーブ・生薬のあるすこやかな暮らし」に関する情報をお届けしているこのページには、「妊娠中や授乳中は、ハーブを使っていいのだろう?」や「子どもにも使ってみたいけど、大丈夫なのかな?」といった疑問をいただくことがあります。
そこで今回はハーブを安全に楽しく使うために知っておきたいポイントを、日頃からハーブ療法やアロマセラピーなどを取り入れた医療を実践している橋口先生に教えていただきました。
ハーブを安心して楽しく使うために
ハーブとは何らかの有効成分を持つ薬草のこと。薬ほど強力ではないとはいえ、通常の食材より強い薬効を持つものがたくさんあるので、使用に当たっては安全性が気になるところ。
結論から言うとハーブティーや料理に用いられるハーブを普通の量で使う分には安全性を心配する必要はありません。ただし、いくつか知っておいて欲しいことがあります。
ハーブ別、使用上の注意点
●ジャーマンカモミール
万能ハーブとしておなじみのジャーマンカモミールはキク科植物の花なので、同じキク科のブタクサにアレルギーのある人ではアレルギー反応が起こる可能性が絶対ないとは言えません。
●ペパーミント
ペパーミントに含まれる精油成分のメントールは、皮膚や粘膜、また味覚への刺激性があるので乳児には通常用いません。
●セージ、ローズマリー、シナモン
セージやローズマリー、シナモンの精油成分も脳への神経刺激性があり乳幼児や妊娠中には控えた方がいいハーブですが、料理にスパイスとして少量用いる分には問題ありません。妊娠中はどんな匂いでも敏感になることがあるので、気分が悪いと感じる場合は量を少なめにしましょう。
妊娠授乳中に絶対に避けなければいけないハーブはありません。レモングラスやヤロー(セイヨウノコギリソウ)は子宮収縮作用があるとされていますが、ハーブティーで用いる濃度では心配ありません。また、妊婦が激しい下痢をすると流産を誘発する危険があるので、胃腸の蠕動を活発にするハーブには妊娠中は注意と書かれている場合がありますが下痢がなければ気にする必要はありません。
●セントジョンズワート
ハーブティーで用いることのあるハーブで最も注意が必要なのはセントジョンズワート(セイヨウオトギリソウ)でしょう。このハーブは肝臓の薬物代謝酵素を誘導するため、薬と併用すると薬の血中濃度が下がって薬の効きが悪くなる場合があります。喘息や心臓病の薬、抗痙攣剤、低用量ピルなど併用しない方がよい薬はたくさんあるので服薬中の方は薬剤師に確認しましょう。また、更年期や月経前の落ち込みを自力で良くしようとセントジョンズワートを飲んで頑張っている方に時々会います。頑張ると気力を消耗しますので、つらい場合は医師に相談することを勧めます。
●リコリス
漢方名:甘草のリコリスも薬効の高いハーブです。文字通りとても甘いので使いすぎることは通常ないハーブですが、毎日1g以上摂っていると血中のカリウムが低下し血圧が上がることがあるので注意しましょう。
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この方にお話を伺いました
緑蔭診療所 橋口 玲子 (はしぐち れいこ)
1954年鹿児島県生まれ。東邦大学医学部卒。東邦大学医学部客員講師、および薬学部非常勤講師、国際協力事業団専門家を経て、1994年より緑蔭診療所で現代医学と漢方を併用した診療を実施。循環器専門医、小児科専門医、認定内科医、医学博士。高血圧、脂質異常症、メンタルヘルス不調などの診療とともに、ハーブティやアロマセラピーを用いたセルフケアの指導および講演、執筆活動も行う。『医師が教えるアロマ&ハーブセラピー』(マイナビ)、『専門医が教える体にやさしいハーブ生活 』(幻冬舎)、『世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典』(マイナビ)などの著書、監修書がある。