食後の運動に最適な時間は?3つのメリット・注意点や習慣化するコツも
NEW

食後の運動に最適な時間は?3つのメリット・注意点や習慣化するコツも

食後の筋トレやウォーキングは血糖値の上昇を緩やかにするなどさまざまなメリットがあります。一方で、食べてすぐに激しく動くと消化不良を起こしてしまうことも。食後の運動を無理なく効果的に行うコツを紹介します。

〔目次〕
食後の運動のメリット3つ
食後の運動の正しい方法
食後に運動をする場合はここに注意!
運動を習慣にするためのヒント
「食後の運動に取り組んでみようかな」と思った人へ

食後の運動のメリット3つ

体重計に乗っている人の写真

食後に運動をしても問題がないのか、運動はしないほうがいいのか、判断に迷ったことはありませんか? 注意すべき点もありますが、食後の運動は正しく行えば、現代人が抱える体の不調をケアする働きがあります。

メリット1:血糖値の上昇を抑える

食事でとった糖質はブドウ糖に分解され、血液中に吸収されます。この血液中のブドウ糖の濃度が血糖値です。血糖値は食後に一時的に上昇しますが、すい臓から分泌されるインスリンの働きによって2、3時間程度で通常の値に戻ります。しかし、すい臓の機能低下や糖質の多い食事などによりインスリンの分泌が乱れると、食後に血糖値の急上昇・急降下が起こることも。この状態が「血糖値スパイク」です。

食後に起こる血糖値スパイクは、空腹時の血糖値を調べる一般的な健康診断では見つかりにくく、糖尿病の発症につながる場合があります。また、血管にダメージを与え、神経障害、腎症、網膜症といった糖尿病特有の合併症を引き起こしたり、心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患のリスクを高めたりするだけでなく、がんや認知症などを引き起こす要因になることもわかっています。食後に眠気やだるさを感じるのも、血糖値スパイクの影響です。

食後に運動をすると、血液中に吸収されたブドウ糖がエネルギー源として筋肉で多く消費されるため、血糖値の上昇が緩やかになります。さらに、運動を継続して行うことはインスリンの働きを高め、血糖値を下がりやすくします。これらのことから、食後の運動を習慣化することは、血糖値の上昇を抑え、その先にある病気のリスク回避につながります。

メリット2:脂肪の蓄積を防ぐ

インスリンには血中のブドウ糖を脂肪に変えて体に溜め込む働きがあるため、血糖値が急激に上昇してインスリンが過剰に分泌されると、体に脂肪が蓄積されやすくなります。食後の運動によって血糖値が緩やかに上昇すれば、インスリンの過剰分泌は起こりません。

また、食後の運動によって食事で摂取したブドウ質が脂肪に変わる前にエネルギーとして使われることも、脂肪の蓄積を防ぐのに有効です。

メリット3:ダイエットをサポートする

メリット1、2にあるように、食後の運動は血糖値の上昇を抑え、脂肪の蓄積を防ぐことから、ダイエットに有効だといえます。

また、食欲の調整作用を持つホルモンとして、消化やエネルギー代謝に作用し食欲を増進させる「グレリン」と、血糖や中性脂肪、体重のコントロールに関与し食欲を抑える「ペプチドYY」がありますが、近年の研究で、運動をすると「グレリン」の分泌が抑えられ「ペプチドYY」の分泌が促されることが分かりました。このことから、運動は食べ過ぎを防ぐことに役立ち、ダイエットに役立つと考えられます。

食後の運動の正しい方法

ウォーキングをする女性の写真

具体的にどのような運動をどのタイミングで行えばよいのか、食後の運動を適正に行うためのコツをご紹介します。

運動は食後30分~1時間の間に始めると効果的

食事の後、血糖値は30分ほどで上昇し約1時間後にピークを迎えます。このタイミングで運動をすると、筋収縮によって、血液から筋肉へのブドウ糖の取り込みが促進されることで、血糖値が下がりやすくなります。運動をするなら食後30分から1時間後の間に始め、できれば毎日、毎食後に行うとよいでしょう。

おすすめは有酸素運動20分を毎日+週2~3日の筋トレ

食後の運動は、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて行うと効果的です。運動する時間が長いほどブドウ糖は消費されるので、ウォーキングなどの有酸素運動を20分程度、難しい場合は5分でもいいので、毎日行うようにしましょう。

また、筋肉量が多ければそれだけブドウ糖も多く消費されるため、筋力トレーニングも週に2、3回取り入れてください。大きな筋肉が集中している下半身を中心に鍛えるのが効率的で、スクワットなど自分の体重を負荷として行う「自重トレーニング」でもOKです。

筋力トレーニングによって分泌量が増す成長ホルモンには、蓄えられた中性脂肪を遊離脂肪酸(ゆうりしぼうさん)へと分解する働きがあります。この遊離脂肪酸は、運動によって筋肉で分解され、エネルギー源として利用されるもの。ダイエットを目的とするなら、筋力トレーニングで成長ホルモンの分泌を促した後に有酸素運動を行うと、脂肪を効率よく燃焼することができるでしょう。

また、早歩きとゆっくり歩きを交互に行うウォーキングのような、運動の強度に緩急をつけたインターバルトレーニングも、タイムパフォーマンスが良く、心肺機能を徐々に高め、しかもカロリー消費量も高めなのでおすすめです。

運動の強度は、体力や日頃の運動習慣によって異なります。体力がある人や若い人、運動習慣のある人は強度を高めに設定し、普段あまり運動をしない人は、低強度からスタートし、無理のない範囲で行ってください。

食後に運動をする場合はここに注意!

腕を組んで考え事をしている女性の写真

食後の運動により消化不良を起こすことも

食後の運動はメリットがありますが、「食事の後すぐに運動をするのはよくない」と聞いたことがある人も、食後に運動をして腹痛や吐き気を覚えたことがある人もいるのではないでしょうか。

食事をすると、食べたものを消化するために消化器官に血液が集まります。しかし、食後に運動をすると多くの血液が筋肉を流れるようになり、消化器官の血液が不足してしまいます。また、運動によって交感神経が活発になることから、胃酸の分泌や消化器官の働きを促す副交感神経の作用も抑制されます。このような体の仕組みによって、食後に運動をすると消化不良を起こしやすくなります。

食後にランニングなどを行うとお腹が痛くなることもあります。これは一過性腹部症状(ETAP)と呼ばれ、運動後は比較的短時間で治まります。横隔膜や消化器官の虚血・けいれん、腹膜の炎症、血液を放出する脾臓の収縮など、その原因はいろいろ考えられますが明らかにはなっておらず、痛みが出るのもわき腹など特定の場所というわけではありません。

食べる量を控えめにして無理のない運動が大切

お腹いっぱい食べてしまうと動きにくくなるので、運動をするなら食事の量は控えめに。また、激しい運動は消化器や体に負担をかけ、血圧や血糖値を上げてしまうこともあります。運動は無理のない強度で行うことが大切です。

関節や膝など体に痛みがある人は、症状を悪化させてしまう可能性があるので運動を控えましょう。息切れなどの胸部症状のある人も無理は禁物です。

運動を習慣にするためのヒント

電車内で簡単な運動をする女性のイラスト

日常生活の中で体を動かす工夫をする

毎日、毎食後に運動しようとしても、多くの人は仕事や家事に追われてなかなか時間がとれないのが現状です。そのような場合は、移動で階段を使う、昼食後は椅子に座らず立った姿勢で仕事をする、座りっぱなしや立ちっぱなしになる際には、つま先やかかとの上げ下げをするなど、日常生活で行う活動の中で、今以上に体を動かすことを心がけてみてください。

また、座りっぱなしでいることは健康リスクを高めます。30分ごとを目安に、立ち上がったりトイレやお茶をいれに行ったりして、意識的に体を動かしましょう。

腰が重い人はスマホアプリから始めてみる

「体力がない」「疾患がある」「運動習慣がない」といった理由から、体を動かすことに抵抗のある人もいるでしょう。そのような場合は、無理しない程度の短時間・低強度の運動からスタートすればOK。慣れてきたら徐々に時間を延ばしたり、強度を上げていったりすればよいので、できることから取り組んでみましょう。

運動を始めるきっかけづくりに役立つのが、ウェアラブル端末やスマートフォンのアプリなどを活用した健康管理です。曜日や時間帯ごとの身体活動量をデータ化(見える化)して、客観的にチェック・モニタリングしてみると、「次はこうしてみよう!」といったモチベーションアップにつながります。

ダイエットが目的なら食後にこだわらず運動する

血糖値が気になるなら食後に運動をするのがおすすめですが、ダイエットが目的であれば食前、食後のどちらで行ってもOKです。「運動」「スポーツ」と堅苦しく考えずに、時間をつくりやすいタイミングで体をこまめに動かすことを意識しましょう。大切なのは生活の中で継続すること。運動習慣が身につけば、活動量が増えてエネルギー消費量も増えます。また、ダイエットは運動だけでは叶いません。食事のとり方や内容も見直して、体を動かすことと併せて取り組んでください。

「食後の運動に取り組んでみようかな」と思った人へ

運動は血糖値や肥満の改善に役立つだけではありません。ストレス解消や筋肉をつけること、心肺機能を高めることなどにつながり、日常生活に必要な動作(ADL)の維持をサポートして生活の質を高めます。焦らず、最初は身体活動を増やすことから始め、継続していけば、運動が苦手な人でも体を動かすことに慣れて、苦にならなくなっていくでしょう。

この方にお話を伺いました

田畑クリニック 院長  田畑 尚吾 (たばた しょうご)

田畑 尚吾

糖尿病専門医、総合内科専門医、スポーツ内科医。大学卒業後、自治医科大学附属さいたま医療センター、慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センター、北里研究所病院(予防医学センター / 総合スポーツ医学センター 副センター長)などを経て2021年10月に田畑クリニックを開業。生活習慣病の診療や運動処方に従事する傍ら、アスリートの内科的サポートも行う。東京オリンピック・パラリンピックでは選手村診療所の内科チーフドクターを務めた。『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP社)、『血管を強くする 循環系ストレッチ』(サンマーク出版)などを監修。

SHARE

   
    
北欧、暮らしの道具店
絵本ナビスタイル
Greensnap
水戸市植物公園
コロカル
HORTI(ホルティ) by GreenSnap
TOP