自分ではなかなか気づくことができない体臭。
体臭は、知らないうちにストレスや生活習慣の乱れ、加齢などによって変化することがあります。身近な人や街中で他の人の臭いが気になって、自分も心配になった...という経験はありませんか?
そこで、臭いの種類別に体臭の原因をご紹介。あわせて、チェックリストで自分の体臭の元になりそうなポイントを確認し、今日から対策を始めましょう。
体臭の種類と原因を知ろう
体臭の原因は汗や皮脂だけでなく、加齢や不規則な生活習慣、腸内環境の悪化などさまざま。
最近では、ストレスが原因となる臭いや、若い人でも増えている早期加齢臭と呼ばれる臭いもあるそうです。臭い別に、その原因を確認しましょう。
歳を重ねると発生する「加齢臭」
原因:加齢による脂肪酸・過酸化脂質の増加
年齢を重ねると、皮脂の中にパルミトレイン酸という脂肪酸と、過酸化脂質という物質が増加します。このパルミトレイン酸が過酸化脂質や皮膚の常在菌によって分解・酸化されると「ノネナール」という、ひなびたにおいが発生します。
加齢臭は、男性は40〜60代、女性は個人差はありますが、女性ホルモンが低下する閉経前後の年齢から強くなる傾向があります。このにおいは年齢を感じさせるものの、いわゆる悪臭ではありません。
加齢臭を不快に感じる方は少ないのでご安心ください。
20代でも要注意!「早期加齢臭」
原因:糖質や劣化した油のとり過ぎ
近年増えているのが、糖質の多い食生活や劣化した油のとり過ぎで皮脂が過剰分泌・酸化して発生するぺラルゴン酸の脂くさい臭い。20~30代でも見られることから、早期加齢臭といわれています。
実は、皮脂の原料となるのは中性脂肪。糖質をとり過ぎると、血中に余った糖が中性脂肪となるほか、精製された白いご飯や小麦などの炭水化物および白砂糖のとり過ぎによる血糖値の上昇、様々な加工食品に含まれている異性化糖(果糖を多く含む糖)の摂り過ぎも中性脂肪を増やす原因に。
その結果、皮脂の分泌が過剰になり、20代でも加齢臭が発生してしまうのです。
ストレスや疲れなどで発生する「ストレス臭」
原因:ストレス、疲れ、緊張
ストレス臭は、様々なニオイ物質による複合臭。議論がヒートアップしている会議室に遅れて入ったときに、汗の中に混じるSTチオジメタンというネギのような臭いや、アンモニアのような臭いを感じたら、それらがストレス臭です。
ストレスを感じた際に発生する活性酸素の影響による皮脂の酸化や、慢性的な疲れ・ストレスや緊張などによる自律神経の乱れが、体臭の原因となることが分かっています。
また、緊張して交感神経の働きが優位な状態では、手のひらや足の裏からの発汗量が増加。高温多湿の状態となった足の裏で増殖した常在菌は、納豆や銀杏のような臭いがします。
これらが複合して、独特なストレス臭となっているのです。
つんと鼻を突く「酸っぱい臭い」
原因:弱った汗腺によるベタベタ汗
そもそも、人間の汗の99%はにおいのない水分。通常ミネラルは汗腺から再吸収されますから、汗にはほんの少しのミネラルしか含まれていません。ところが、汗腺の機能が低下していると再吸収が行われにくくなり、ミネラル成分の多いベタベタ汗に。
ベタベタ汗をかくと、汗がなかなか乾かず、皮膚の常在菌がミネラルやアカなどをえさにして繁殖します。その結果、常在菌が発する酸っぱい臭いが体臭となって出てしまうのです。
枕から使い古した油のような臭いがする「まくら臭」
原因:シャンプーのしすぎ
使い古した油のようなまくらの臭い。40代をピークに発生するミドル脂臭とも呼ばれますが、年齢のためだけではなく、シャンプーのしすぎによる頭皮の乾燥など皮脂の増加を起こしやすいライフスタイルが原因です。
頭を洗い過ぎると頭の皮脂が過剰に取れて頭皮が乾燥し、頭皮を守るためにかえって皮脂の分泌量は増加します。そして、皮脂の中の中鎖脂肪酸と汗から発生するジアセチルという成分が合わさって汗と皮脂の混合臭(まくら臭)が発生するのです。
生ごみのような臭い「キャベツ臭」
原因:腸内環境の悪化や肝機能低下
胃腸機能の低下による消化不良から腸内環境が悪化すると、腸の中で食べ物(主に動物性タンパク質)が腐敗してしまうことがあります。
そのような場合も、通常は腸内で発生したニオイ成分は肝臓で分解・無臭化されます。しかし、アルコールの過剰摂取や生活習慣病などによって肝機能が低下していると、そのニオイ物質を処理できず、血液中にあふれることが。
その結果、呼気を通してキャベツのような生ごみに似た臭い(ジメチルサルファイド)が、口臭として発生。さらに、アンモニアが処理しきれないと、汗の中にもアンモニアが溢れてきます。
体臭の原因をセルフチェック!
体臭の種類と原因を確認したところで、自分の臭いの元をチェックしましょう。自分の何が体臭の元になるのかを把握し、生活スタイルの見直しを。
- □ 運動習慣がなく、普段汗をかかない
- □ 入浴はシャワーが多く、湯船に浸からない
- □ 汗をかくと肌がベタベタして不快に感じる
→汗腺の機能低下が臭いの元になっている可能性があります。体臭対策1へ
- □ 野菜や海藻などの食物繊維が不足しがち
- □ 胃の調子が悪い、便秘がち
- □ 肉をよく食べる
- □ アルコールをよく飲む、または肝機能が悪い
- □ 健康診断で中性脂肪値が高いと指摘される
- □ 朝昼夕の3食以外に間食や甘い飲み物を毎日とっている
→食生活の乱れや腸内環境の悪化が臭いの元になっている可能性があります。体臭対策2へ
- □ ストレスが多いと感じる
- □ 生活が不規則、睡眠不足
- □ 慢性的に疲れている
→自律神経の乱れが臭いの元になっている可能性があります。体臭対策3へ
- □ シャンプーは1日2回する
- □ エアコンの効いた部屋にいることが多い
→頭皮の乾燥が臭いの元となっている可能性があります。体臭対策4へ
手軽に始められる体臭対策
まずは基本として、かいた汗を臭わせない対策を。制汗剤で汗を抑えたり、こまめに汗を拭いたりして、ニオイ成分を分泌する常在菌が繁殖しやすい環境をつくらないようにしましょう。
ただし常在菌には皮膚を守る役割があり、皮膚にとって大切な存在。殺菌成分入りのデオドラント剤は常在菌を抑制し過ぎて肌荒れの原因になるため、脇など臭いが強いところにポイント使いするだけにとどめるのがおすすめです。
また気になる体臭のほとんどは、生活習慣や体調を整えることで解消できます。今回はそのポイントをご紹介します。
【体臭対策1】運動や入浴で汗腺を鍛える
汗腺は汗をかくほど鍛えられ、臭わない汗をかけるようになります。
運動習慣や湯船に浸かる習慣をつけましょう。入浴の際は40℃前後のお湯に15〜30分浸かること。
入浴剤はエプソムソルト(硫酸マグネシウム)がおすすめ。血管が開きやすく、保温効果が高まるため、汗をかきやすくなります。入浴前に水分をコップ1杯以上とることも忘れずに。
おすすめの入浴法については、以下の記事も参考にしてください。
【体臭対策2】食生活を見直す
腸内環境を悪化させる過剰な肉食や、肝機能を低下させる過度な飲酒、皮脂を増やす糖質の過剰摂取をしていないか、1週間の食生活を振り返ってみましょう。
糖質は炭水化物だけでなく、様々な食品に含まれています。清涼飲料水や菓子、調味料などに含まれている果糖ブドウ糖液糖などの異性化糖から知らず知らずにとり過ぎている場合も。食品を選ぶ際は原材料も意識しましょう。
主食は「白」より「黒」の物を意識して、白米や食パン、うどんより精製度の高い玄米やライ麦パン、そばを選ぶようにするとよいでしょう。また、糖質の吸収、血糖値の上昇を抑える食物繊維をしっかりとりましょう。
おすすめの食材は、食物繊維が豊富で腸内環境を整える野菜や海藻類、皮脂の酸化を抑える抗酸化食材(ナッツや植物油、アボカドなど)。積極的に食卓にとり入れるとよいでしょう。
【体臭対策3】ハーブを活用して自律神経のバランスを保つ
いい香りでリラックスして、自律神経のバランスを整えるのも体臭対策に有効。
リラックスタイムにお部屋で香りを楽しむのがおすすめです。精油(エッセンシャルオイル)と天然塩(またはエプソムソルト)を混ぜたものを湯船に入れ、リラックスしながら発汗を促し、汗腺を鍛えても◎
リラクゼーション効果のある精油にはラベンダー、カモミール、ゼラニウムなどがありますが、大切なのはその時に自分が心地よいと感じる香りを取り入れること。苦手な香りはかえってストレスになってしまいます。
【体臭対策4】頭皮を弱酸性に保つ
頭皮の臭いが気になる場合は、皮脂を取り過ぎず、刺激が少ないアミノ酸系のシャンプーを使用しましょう。
それでも改善しない場合は、2日に1度はシャンプーを使用せず、40℃以下のぬるま湯で頭皮をマッサージしながら汚れを洗い流してみるとよいでしょう。
体臭の原因を知り、日常生活の中でコツコツ対策していきましょう。
この方にお話を伺いました
内科医・認定産業医 桐村 りさ (きりむら りさ)
愛媛大学医学部医学科卒業。tenrai株式会社代表取締役医師。治療よりも予防を重視し、「ホンマでっか!?TV」やWebメディアにてヘルスケア情報を発信。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか〜体臭と口臭の科学〜』(光文社)などがある。