食後に強い眠気を感じることはありませんか? 実はそれ「血糖値スパイク」の影響かも。
血糖値スパイクは食事をした後に血糖値が急激に上昇・下降する状態のこと。一般的な健康診断では見逃されやすく、放置すると糖尿病になりやすくなるため、隠れ糖尿病予備軍とも呼ばれます。
血糖値スパイクの原因と自己診断する方法、食事などの予防&対策をご紹介します。
血糖値スパイクとは?
普段の血糖値は正常でも、食後に血糖値が異常に高くなる症状を食後高血糖といいます。急激に上がりすぎた血糖値は、反動で急降下します。尖った針のように急上昇と急下降を繰り返すので、近年では「血糖値スパイク」という言葉で話題に。
一般的な健康診断では見逃されやすく、放置しておくと糖尿病になりやすくなるため、隠れ糖尿病予備軍とも呼ばれます。
食後に強い眠気や倦怠感を感じたり、イライラしやすくなったりする人は血糖値スパイクによる低血糖が原因かもしれないので要注意。予防のためにも、よく知っておきましょう。
血糖値スパイクの仕組み
健康な人の場合、インスリンの働きによって血糖値の変動は一定に保たれていますが、糖の過剰摂取などによってインスリンの働きが追い付かないと、糖を細胞に取り込めなくなり、高血糖状態になります。
食後に血糖値が急激に上がり過ぎると、糖をエネルギーに変えるインスリンが大量に分泌され、反動で血糖値が急降下。今度は低血糖状態になり、食後に強い眠気や倦怠感を感じたり、イライラしやすくなったりします。
こうして血糖値スパイクが続くと、血液中に余った糖が体内の組織や細胞にたまり、「糖化」という反応が進みます。糖化が進むと、くすみやシミ、シワなどの老化や、骨粗しょう症、白内障、認知症などの病気を引き起こす原因になります。
しかも、一般の健康診断では空腹時の血糖値しか調べないため、血糖値スパイクが見逃されている可能性も。ある調査では健康診断で正常といわれていた働き盛り世代65人のうち20人が血糖値スパイクだったとの結果が報告されています。
血糖値スパイクの自己診断
- 〔食生活〕
- □ 甘いお菓子やジュースをよくとる
- □ 朝食を食べないことが多い
- □ 一食抜いてドカ食いすることがある
- □ よく噛まない、早食いだ
- □ 麺類や丼ものなど炭水化物をメインにしたメニューをよく食べる
- □ 外食が多い
- □ 野菜をあまり食べない
- □ 食事の時間が不規則
- 〔その他の生活習慣〕
- □ 夕食を食べてから2時間以内に就寝する
- □ 睡眠時間が十分に取れない
- □ タバコを吸う
- □ ストレスが多いと感じる
- □ 運動する習慣がない
- □ 移動は車を使うことが多い
- □ 怒りっぽい性格だ
当てはまる項目が多いほど、血糖値スパイクを招く可能性が高まります。
最近では、血糖値の簡易検査を実施するドラッグストアや薬局が増えています。当てはまる項目が多い人は食後1~2時間のタイミングで測定してみましょう。
血糖値スパイクの原因
全身に様々な影響を及ぼす血糖値スパイクですが、その背景には食生活が深く関わっています。
食べ過ぎや早食いなどの食生活
全身に様々な影響を及ぼす血糖値スパイクですが、その背景には食生活が深く関わっています。中でも食べ過ぎ、飲み過ぎ、早食いの3つは一気に体の中にたくさんの糖が入るので、血糖値スパイクに結び付きやすくなります。
また、運動不足の人や喫煙の習慣がある人も、高血糖になる傾向があります。
ストレスや睡眠不足も原因に
さらに、最近の研究では、強い怒りやストレス、睡眠不足も血糖値スパイクを招くことが分かってきました。怒りやストレスは血糖値を上げるホルモンの分泌を促進させ、血糖値の急激な上昇を促します。
睡眠不足になると血糖値の上昇を抑えるホルモンの働きが低下し、血糖値が上がりやすい状態になります。
血糖値スパイクは体型や年齢にかかわらず、痩せ型の人や若い人でも起こる可能性があるので、日頃の生活習慣をチェックしてみましょう。
血糖値スパイクを予防する4つの食事法
食べる順番や食べる物を工夫するだけで血糖値を正常にコントロールできるので、ぜひ習慣にしましょう。
食べる順番を意識する
ベジタブルファーストを心がけ、食事の最初に食物繊維が豊富な野菜やきのこ類、海藻類を食べましょう。食物繊維が糖を包み込んで、糖が腸に吸収されるスピードを遅らせます。
最初に野菜中心のメニューをしっかり食べれば、その後はおかずと主食をおり交ぜても効果は期待できます。
食材の選び方に気をつける
油のほか、柑橘類や酢などの酸っぱい物に含まれる酢酸には消化を遅らせる働きがあり、血糖値の急上昇も防ぎます。酢とオリーブオイルにレモンをプラスしてドレッシングにするのもおすすめです。
主食は「白」より「黒」の物を意識して。白米や食パン、うどんより、玄米やライ麦パン、そばをチョイスするとよいでしょう。精製されていない物は食物繊維が豊富なので、血糖値の上昇スピードが遅くなります。
また、ネバネバした食品もおすすめ。オクラや納豆、山芋など粘りのある食材も糖の吸収を遅らせ、血糖値の上昇を緩やかにする働きがあります。ちなみにりんごは皮つきのほうが糖化予防に効果的です。
食べる量をコントロールする
炭水化物摂取量(kcal)は、1日の総摂取量(kcal)の50~65%※が目標量とされています。
過度に制限をする必要はありませんが、ご飯やパンなど主食となるものは血糖値を上げやすいため、やや少なめを意識し、様々な食材をまんべんなく、ゆっくりよく噛んで食べることが理想です。
食べる時間を意識する
甘い物は身体活動が盛んな朝や昼間に食べると、糖代謝がスムーズに。糖化を防ぐカモミールティーと一緒にいただきましょう。また、欠食やドカ食いは血糖値スパイクを招きやすいので、1日3食を基本に。
血糖値スパイクの予防・改善は食生活の見直しから
食べる時はゆっくり噛むと血糖値の上昇が抑えられて満腹感を得やすく、食べ過ぎの防止にも役立ちます。食べてすぐに寝てしまうと血糖値が高いままになってしまうので気をつけましょう。
その他、ウォーキングやラジオ体操などの有酸素運動やストレッチも血糖値を抑えるのに有効です。楽しく、ゆっくり食べ、運動でリフレッシュ。さらに笑顔を心がけてストレスをためないようにすることも、血糖値スパイクの予防につながります。
この方にお話を伺いました
同志社大学生命医科学部/アンチエイジングリサーチセンター教授 米井 嘉一 (よねい よしかず)
1958年東京生まれ。慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了。カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学後、日本鋼管病院内科、人間ドック脳ドック室長などを歴任し、2008年より現職。日本抗加齢医学会理事、立教セカンドステージ大学講師。近著に『最新医学が教える 最強のアンチエイジング』(日本実業出版社)『「抗糖化」で何歳からでも美肌は甦る』(メディアファクトリー)などがある。