タイムといえば、「とにかく丈夫。よく育つし虫も付きにくい」と、栽培ビギナーがよく薦められるハーブ。しかも、「どんどん収穫できて使い道が豊富」と聞けば、ビギナーならずとも育てたくなりますよね。
風邪予防にも役立つ、丈夫で育てやすいタイム
種なら4~5月、苗なら4月下旬~6月が植えどき。水はけと風通しのよい場所を好むので、梅雨時の多湿は苦手。適度に収穫して、株の内部に風が通すのがポイントです。
タイムには、木立性のコモンタイムと、地面に這ってマット状に広がるクリーピングタイムがあります。いずれもヨーロッパに広く分布。葉の香りが強く、初夏に白やライラック色の花が咲きます。薬用に使われるコモンタイムのチモールという成分には、殺菌・抗ウイルス作用があり、古くから風邪や感染症の予防に用いられたそうです。
肉や魚の臭みを消して風味を底上げ。常備菜にも大活躍
タイムには消化を助ける働きがありますから、煮込み料理で使うブーケガルニや肉・魚料理に使えば、美味しくて身体にやさしい料理になります。
アサリのワイン蒸しに。タイムを加えると風味がぐっと豊かになります。
また、防腐効果も期待できるので、ピクルスのような常備菜の香りづけにもぴったりです。
トマトのピクルスを漬ける際にタイムを加えるとフルーティーな仕上がりに。
薬用ハーブ園園長おすすめ!タイムのハンバーグ
初夏の薬用ハーブ園に救世主!
初夏のハーブ園は花盛り。小さな花が可憐なタイム、黄色のイエローヤロー、桃色のオレガノ、真っ赤なモナルダ、黄〜橙のベニバナ、淡い紫のキャットミントなど次々と花が咲くので手入れも大忙し。猫の手も借りたいー! そんなハーブ園に救世主。期間限定で、大学生のMちゃんが博物館実習にやってきました。
普段は実験室にこもりきりですが、「植物をテーマにした実習を経験したい!」ということで、せっせと一緒に働くことになりました。
夏は爽やかなアイスハーブティーに
Mちゃんと収穫したレモンバジル、レモンバーベナ、レモングラスを使用。取材にやってきた地元の新聞記者さんにも大好評でした。
暑い日にも、ホッと幸せな気分になれる清々しい香りのアイスハーブティー。香りの効果は偉大ですね。
- 【タイム】
- 学名:ティムス ウルガリス(Thymus vulgaris)
- 和名:タチジャコウソウ
- 特徴:木立性。丈は30〜40cm、で葉の香りが強い。コモンタイムの他に、レモンの香りがするレモンタイムや、葉に白い斑が入って香りが優しいシルバータイムなどがある。コモンタイムの香りの主成分であるチモールには殺菌・防腐・駆虫作用が知られている。
- 科名:シソ科イブキジャコウソウ属 ※科名以下は2種共通
- 原産地:地中海沿岸
- 栽培のポイント:水はけの良い土と風通しを好み、梅雨時はこまめに枝を切って、株の内部に風が通るように管理します。アルカリ性土壌を好むので、苗を植える時は苦土石灰を混ぜて酸度を調整する。梅雨時の高温多湿は苦手。開花後は株の半分くらいの高さのところで切り戻すと良い。
- 開花期:5〜7月
- 学名:ティムス セルピルム,ティムス ロンギカウリス(Thymus serpyllum,Thymus longicaulis)
- 和名:ヨウシュイブキジャコウソウ
- 特徴:匍匐性。丈は10cm程度。地面を覆うように広がり、花が満開の時はピンクや藤色の花が一面に広がって美しい。
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この方にお話を伺いました
水戸 養命酒薬用ハーブ園(水戸市植物公園内) 西川 綾子園長 (にしかわ あやこ)

水戸市植物公園園長。園芸家。筑波大学第二学群農林学類卒業後、民間企業を経て水戸市植物公園開園のために水戸市へ移住。NHK「趣味の園芸」講師や書籍の執筆なども行う。2009年第14回NHK関東甲信越地域放送文化賞を受賞。2014年公益社団法人日本植物園協会常務理事就任。2017年オープンの「水戸 養命酒薬用ハーブ園」では、約40 種類のハーブを栽培。園のシンボルツリーである薬木「キハダ」を囲むウッドデッキを中央に配置し、歴史を学べる薬草エリアと、五感で楽しむハーブガーデンエリアの2つのエリアを設けている。