水戸の2月は雪が降ることもあり、まだまだ寒さが厳しい時期です。でも植物公園には温室があって最低温度10度を保てるので、種まき作業がスタートできます。
種類にもよりますが、1年草なら花が咲くまで約3ヶ月と計算します。2月のバレンタインデーの頃にまけば5月下旬には花が咲き始め、初夏のハーブガーデンで満開を迎えることができます。「明日はボランティアさんと種をまきましょう。ナスタチウム、サフラワー...そうだ!あの不思議なニゲラもまきましょう。」
ニゲラ(ニゲラ サティヴァ)とは、地中海地方が原産、和名をニオイクロタネソウというキンポウゲ科クロタネソウ属の1年草です。別名をブラッククミンといい、その種子(ブラックシード)はイスラムの古い言い伝えに「死以外の様々な病の治療に役立つ」とあるほど、万病に効く薬として、古代エジプトの時代から2,000年にもわたって重用されてきました。
その効能については、様々な研究が続けられていて、最近では生活習慣病の予防やエイジングケア、美容効果が期待できるスーパーフードとしても注目されているそうです。クミンに似た強い香りとスパイシーな風味が特徴で、インド料理ではよくカレーのスパイスにも使われます。
しかし残念なことに、このニゲラ サティヴァ、日本ではあまり栽培されていません(ブラックシードの食品やオイルは通販などで購入できるようです)。
日本で苗や種を手に入れやすく、色鮮やかな花を楽しみたいなら、ガーデニングファンに人気のある近縁種ニゲラ ダマスケナ(和名:クロタネソウ)がいいですね。特にブルーの花の美しいこと! 植物公園には温室があるので、2月に種をまきますが、一般的には9月下旬〜10月にまいて、苗を育てます。種からでも育ちやすく丈夫で、こぼれ種からもよく増えるので、ガーデンの彩りに活用しやすい植物です。
花後にできる袋果(たいか)と呼ばれるチューリップのような形の果実は、ドライフラワーに最適です。
早速ドライフラワーで保存しているクロタネソウを机の上に広げ、サヤをつぶして、中から黒い種を取り出します。種をまいた時、ゴミが入るとカビが発生するので、ゴミは丁寧に取り出します。
咲き終わったクロタネソウの呼び名は、「薮の中の悪魔 Devil in a bush」。悪魔もこれだけ楽しく遊ばれるとタジタジですね。
- 【ニゲラ】
- 学名:ニゲラ サティヴァ(Nigella sativa)
- 和名:ニオイクロタネソウ
- 科名:キンポウゲ科クロタネソウ属
- 原産地:地中海沿岸
- 特徴:花が小さくて地味なせいか、日本ではあまり栽培されていません。種が入手できるなら、 ニオイクロタネソウのお花畑風に栽培してみたいものです。
- 学名:ニゲラ ダマスケナ(Nigella damascene)
- 和名:クロタネソウ
- 科名:キンポウゲ科クロタネソウ属
- 原産地:南ヨーロッパ
- 特徴:青、紫、桃、白などの花色があり、ガーデニングファンに人気の1年草です。
- 栽培のポイント: 種をまいて苗を育てるなら、9月下旬〜10月に種をまきます。苗を入手して花壇やコンテナに利用するなら4〜5月がいいでしょう。排水の良い土で植え、日当たりの良い場所で育てます。
- 開花期:5月〜6月
第1回記事「マタタビよりも夢中?!甘い香りのキャットミント」
第2回記事「地味だって大注目!南国の香りレモングラスの花」
第3回記事「痩せるハーブ?甘くスパイシーな誘惑に完敗?フェンネル」
第4回記事「種の意外な使い道。暑い夏に元気なハーブの王様バジル」
第5回記事「猛暑に疲れたスタッフの救世主!晩夏のハーブ園を彩るエキナセア」
第6回記事「名前通りの甘酸っぱい香り、カリブ海生まれのパイナップルセージ」
第7回記事「実は家庭で栽培可能!高級スパイスサフラン」
第8回記事「ローレル?ローリエ?大量収穫できる葉の温浴効果で疲れ解消!」
第9回記事「育てた葉でトリートメント!若返りのハーブ ローズマリー」
第10回記事「死以外の全ての病を癒す!?不思議なニゲラ(ブラッククミン)」
第11回記事「養命酒にも使用。美しいだけじゃないんです!シャクヤク」
第12回記事「薬用ハーブ園癒しのシンボルツリー、苦~い薬木キハダ」
この方にお話を伺いました
水戸 養命酒薬用ハーブ園(水戸市植物公園内) 西川 綾子園長 (にしかわ あやこ)
水戸市植物公園園長。園芸家。筑波大学第二学群農林学類卒業後、民間企業を経て水戸市植物公園開園のために水戸市へ移住。NHK「趣味の園芸」講師や書籍の執筆なども行う。2009年第14回NHK関東甲信越地域放送文化賞を受賞。2014年公益社団法人日本植物園協会常務理事就任。2017年オープンの「水戸 養命酒薬用ハーブ園」では、約40 種類のハーブを栽培。園のシンボルツリーである薬木「キハダ」を囲むウッドデッキを中央に配置し、歴史を学べる薬草エリアと、五感で楽しむハーブガーデンエリアの2つのエリアを設けている。