胡椒の効果・効能とは?香りや辛味に隠れた健康に嬉しい作用と使い方
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胡椒の効果・効能とは?香りや辛味に隠れた健康に嬉しい作用と使い方

「香辛料の王様」といわれ、かつては金や銀と交換されるほど高い価値を持っていた胡椒。香辛料として馴染み深いですが、実は様々な効果・効能が期待できるスパイスです。

胡椒とは? 原産地や見た目の特徴

コショウ科コショウ属に分類され、インドが原産地の胡椒。主に東南アジアや南米などの熱帯地域のみでしか栽培されていないため、日本で生の胡椒を目にする機会は少ないでしょう。

黄緑色の小さい花が穂状に垂れ下がって咲いた後、丸い果実が房状に実ります。果皮の色は熟れるにつれて緑色から黄色、赤色へと変化。

食べるのは果実の部分で、主な作用は消化促進と血行促進です。

胡椒の実

ぶどうの房のような穂に50~60個の粒がつきます

胡椒の歴史

胡椒の歴史は古く、ヨーロッパでは紀元前400年頃には既に知られていました。中世に入ると肉料理の臭み消しや防腐剤として使用され、食料の長期保存に不可欠な存在に。そのため、金や銀と交換されるくらいの高級品でした。

かの有名な航海士バスコ・ダ・ガマもインドを訪れて大量の胡椒を母国ポルトガルヘ持ち帰ったように、胡椒を求める人々が次々と新大陸を目指したことが大航海時代の原動力になったと言われています。

一方、中国では唐時代の書物 『新修本草(しんしゅうほんぞう)』に、「胡椒の味は辛で大温、無毒である。気を下し、中を温め、痰を去り、臓腑中の風冷を除く」という記述が残っており、生薬として使われていたことがわかります。

日本には奈良時代に中国から渡来。貴重な薬として古事記に記載されています。江戸時代には庶民の間にも広まり、ご飯にだし汁と胡椒をかけた「胡椒飯」が暑気払いとして食べられていたそうです。

このように、胡椒は1300年以上も昔から香辛料としても、生薬としても役立てられていました。

胡椒の効果・効能

瓶詰めの胡椒

胡椒の辛味成分ピペリンには栄養の吸収を促す作用があるとされています。その作用は粒を細かくするほど強く、油に溶けやすいことから肉料理や炒め物で取るのが有効。

その他にも胡椒には嬉しい効果・効能がたくさんあります。

血行促進

ピペリンには血管を広げて血流を良くする働きもあります。体の末端まで血が巡るようになり、冷え症の改善に効果的。さらに、血行がよくなることで筋肉のこりや筋肉痛の緩和にも役立つといわれています。

消化機能の向上&食欲増進

1~2%含む精油成分の香りや、辛味による刺激が胃腸を刺激して食べ物やその消化物を移動させる"ぜん動運動"を活発に。消化を助けるほか、食欲促進効果も期待できます。

ダイエット効果

ピペリンが持つ交感神経を刺激する作用によりアドレナリンが分泌され、脂肪分解酵素が活発に。血行を促す作用により体温が上がってエネルギー代謝もよくなっているので、脂肪が燃えやすくなります。

エイジングケア効果

肌の老化の原因は酸化だといわれていますが、胡椒に含まれるピペリン、ポリフェノールにはこれを防ぐ「抗酸化作用」が期待できます。さらに、肌のハリを保つコラーゲンを体内で産生する際に必要な鉄分も含まれており、エイジングケアに効果的な3つの成分を同時に摂取できます。

リラックス効果

胡椒に含まれる香り成分のひとつ「βカリオフィレン」には、神経をリラックスさせ怒りや不安を和らげる作用があります。また、辛味成分ピペリンには、落ち込んだ気分を持ち上げてくれるホルモン(セロトニン、エンドルフィン)を増やす効果があります。

抗菌・防腐・防虫効果

かつて胡椒が肉の長期保存に不可欠な存在だったのは、細菌の繁殖を防ぐ抗菌・防腐効果に優れていたためです。この抗菌効果は体内でも持続し、体から細菌を追い出す働きもあるといわれています。

さらに、虫の多くが胡椒の香り成分を嫌うため、クローゼットに置いておくと衣類の虫食いを防ぐ効果も。

胡椒の種類と使い分け

4種類の胡椒

様々な効果・効能が期待できる胡椒。収穫時期や収穫後の処理の仕方で4種類に分類され、それぞれ特徴やオススメの使い方が異なります。

黒胡椒(ブラックペッパー)

実が熟す前に収穫して日干ししたもの。最もよく使われる「胡椒」がこれです。果皮に辛味成分が多いため辛味が強いといわれています。肉料理の臭み消しに。

白胡椒(ホワイトペッパー)

赤く熟した実の果皮を取り去って乾燥させたもの。一般に、生薬として利用されるのは白胡椒です。黒胡椒に比べると、香りや辛みはマイルドで、ホワイトシチューにおすすめ。

緑胡椒(グリーンペッパー)

若い実を収穫し、短期間で乾燥、もしくは塩漬けにしたもの。黒胡椒や白胡椒より爽やかな香りで辛みはほぼありません 。カルパッチョに。

赤胡椒(ピンクペッパー)

完熟した赤い実を乾燥させたもの。香りも辛味もマイルドで、料理に華やかさを演出するために使われます。加熱すると風味が飛ぶため、冷製のサラダやマリネに。

そのほか、ウルシ科のコショウボクの実や西洋ナナカマドも「ピンクペッパー」と呼ばれます。

ゆず胡椒に使われている「胡椒」は何?

ゆず胡椒はゆずの皮と青(または赤)唐辛子を混ぜたもので、胡椒は含まれていません。唐(中国)との貿易が盛んだった九州の一部の地方で、唐辛子(とうがらし)を「唐を枯らす」に通じるとして「胡椒」と呼び変えていたことから、「ゆず胡椒」という名称になったと言われています。

このように使い勝手のいい香辛料であると同時に、様々な効果・効能も期待される胡椒。収穫する時期や処理の仕方で色や香味が全く異なるので、料理によって使い分けるのがおすすめです。

この方にお話を伺いました

養命酒製造株式会社 クロモジ推進室フェロー 丸山 徹也 (まるやま てつや)

丸山 徹也

1958年長野県生まれ。1981年静岡薬科大学薬学部卒業後、養命酒製造株式会社入社。中央研究所研究部長、商品開発センター長を歴任。2020年よりクロモジ推進室フェロー。薬剤師。

※この記事の情報は、『養命酒だより2020年秋号(養命酒製造株式会社)』より参照しています。

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