「通勤途中で急にお腹が痛くなってトイレに駆け込んだ」、「近頃ずっと下痢と便秘を交互に繰り返している」などの症状に悩まされてはいませんか。そのような症状の原因は「過敏性腸症候群」かもしれません。
今回は過敏性腸症候群の治療とセルフケアの方法について、橋口先生が実際に診療にあたり、症状が改善した2人のケースと一緒に紹介します。お腹の不快な症状に困っているという人は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
ストレス世代に多い「過敏性腸症候群」とは
腹痛、下痢、便秘、お腹の張り、お腹がゴロゴロするなど、お腹の不快な症状が続き、腸に炎症性疾患など明らかな原因がないものを過敏性腸症候群と呼びます。
症状は排便によって一旦は和らぎますが、お腹が落ち着かなくて長時間トイレから出られないこともあります。体質の影響もありますが、主にストレスや緊張によって始まったり悪化したりすることが多い病気です。
ケース1:学校に行けなくなったA君の症状が改善した例
夏休み明けに学校に行けなくなってしまった中学1年生のA君のケースを紹介します。A君は中学に入学後、緊張が続いて腹痛と下痢を繰り返すようになってしまいました。頑張って登校しなければとは思うものの、しんどくて行けないという状態が続きました。
来院時は精神疲労が強く抗うつ剤が必要な状態だったので、しばらく学校は休むよう指示を受けたA君。休養によってお腹の症状は和らぎましたが、徐々に通学を再開すると腹痛と下痢が強くなったため、下痢がひどいタイプの過敏性腸症候群に用いる薬も投与されました。
A君の回復には波がありましたが、体調が少しずつ良くなってきた頃にギターの練習を始めました。ギターが上達するとともに、さらに音楽を学びたいという意欲が出てきて、心身両面で回復してきています。
このA君の例で分かるように、過敏性腸症候群の治療には心身両面からのアプローチが必要です。お腹の薬だけでは症状は緩和するものの根っこからは良くなりません。
また、A君でいうギターのように自分の楽しみ、意欲、自信につながるセルフケアは症状の治療にとても役立ちます。
ケース2:体調に合わせたハーブティーのセルフケアで症状が改善した例
30代から過敏性腸症候群の治療を始めた主婦のBさんは、外出中の腹痛や下痢に対する不安が強く、無理にでも排便してからでないと家を出られない状態でした。
便通がないと不安になるのでお腹の治療は漢方薬を中心にして、不安を予防するメンタル面の治療も並行して行いました。
さらに、セルフケアとしてジャーマンカモミール、ペパーミント、レモングラスを中心としたハーブティーを取り入れてもらいました。
ジャーマンカモミールには腸の痙攣予防とリラックス、ペパーミントとレモングラスは腸の蠕動(ぜんどう)を促進してお腹の張りをとり、リフレッシュさせる作用があります。時間はかかりましたが症状は良くなり、薬は徐々に減量・中止できました。
ハーブの効能を知って、自分の体調に合わせてハーブティーを作って飲むことは安心、自信を引き出す積極的なセルフケアになります。
自分が過敏性腸症候群かどうか気になったら、お腹の調子をセルフチェックできる記事があるのでぜひ参考にしてみてください。
血便や体重減少を伴う場合は、腸の炎症による病気と区別するために大腸内視鏡検査が必要なので必ず受診しましょう。
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この方にお話を伺いました
緑蔭診療所 橋口 玲子 (はしぐち れいこ)

1954年鹿児島県生まれ。東邦大学医学部卒。東邦大学医学部客員講師、および薬学部非常勤講師、国際協力事業団専門家を経て、1994年より緑蔭診療所で現代医学と漢方を併用した診療を実施。循環器専門医、小児科専門医、認定内科医、医学博士。高血圧、脂質異常症、メンタルヘルス不調などの診療とともに、ハーブティやアロマセラピーを用いたセルフケアの指導および講演、執筆活動も行う。『医師が教えるアロマ&ハーブセラピー』(マイナビ)、『専門医が教える体にやさしいハーブ生活 』(幻冬舎)、『世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典』(マイナビ)などの著書、監修書がある。