今年は、ゴールデンエルダー(Sambucus nigra 'Aurea')がよく育ちました。
春先には黄金色、夏はライムグリーンになって収穫ガーデンの中央を明るく彩る葉。6月には香りのよい、白い花が咲きます。
このエルダーフラワー(和名:セイヨウニワトコ)を育てたのは、ここ水戸市植物公園を拠点に「ハーブのある暮らし」を体現する「ハーブ友の会」の皆さんです。ハーブを栽培・収穫し、料理や美容など幅広く活用する他に、ポプリやアレンジメントなどの作品の展示会も行っています。
収穫したエルダーフラワーで作る、花の香りを凝縮したコーディアル
今年は特に花数の多かったエルダーフラワーを収穫し、コーディアルにしてお裾分けしてくれました。その風味が、甘く華やかでとっても美味しかったので、会長直伝の作り方をご紹介しますね。
冷たい炭酸水や水で割ると爽やかに、寒い時期にはお湯で割ると香りを濃く感じることができ、じんわり温まります。白ワインや紅茶に少し加えたり、お菓子の香りづけに使うと、いつもより贅沢な味わいになりますよ。
自家製エルダーフラワーコーディアルの甘く爽やかな香りで、園内作業の疲れが和らぎました。
風邪のひきはじめに活用したい、エルダーフラワーの効能
「マスカットのよう」と表現される甘くフルーティな香りのエルダーフラワー。クセのない味わいはハーブが苦手な方やお子さんにもおすすめです。
イギリスでは「庶民の薬箱」と呼ばれ、セルフケアによく用いられています。体を温め、発汗させて熱を下げたり、炎症を抑えたり、ウイルスを抑制したりと、風邪の初期症状に効果的な薬効があるのだとか。
ところで、エルダーフラワーには神秘的な伝説が多く、古いゲルマン神話では「この木には妖精が住み着いている」、イギリスでは「日没後はこの木に近づかないほうが良い」といわれています。夜にエルダーフラワーの側を通れるのは、ミーちゃんだけかもしれませんね。
薬用ハーブ園には昨年、銅葉のエルダーフラワーを大きな陶器鉢に植えました。今年、花がいくつか咲き始めましたから、それぞれのガーデンで葉色の違うエルダーフラワーが満開に花咲く日が楽しみです。
- 【エルダーフラワー】
- 学名:サンブクス ニグラ(Sambucus nigra)
- 科名:レンプクソウ(スイカズラ)科 ニワトコ属
- 特徴:風邪やインフルエンザの初期症状などに使われるハーブ。葉と熟していない果実は有毒といわれるので要注意。日本に自生するニワトコは山野に広く自生し、打撲の時に外用で、利尿や鎮痛薬として内服される一方、魔除けに使われることもあり、小正月の飾りの材料に使われる。
- 栽培のポイント:梅雨時に葉が繁茂すると風通しが悪くなるので、混んだ枝は切って整理する。極端に水切れさせないように、また反対に水をやり過ぎて根腐れさせないように注意。春先か秋に苗を植え付ける時、腐葉土や堆肥を混入して水もちを良くさせましょう。
- 開花期:5〜6月
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この方にお話を伺いました
水戸 養命酒薬用ハーブ園(水戸市植物公園内) 西川 綾子園長 (にしかわ あやこ)

水戸市植物公園園長。園芸家。筑波大学第二学群農林学類卒業後、民間企業を経て水戸市植物公園開園のために水戸市へ移住。NHK「趣味の園芸」講師や書籍の執筆なども行う。2009年第14回NHK関東甲信越地域放送文化賞を受賞。2014年公益社団法人日本植物園協会常務理事就任。2017年オープンの「水戸 養命酒薬用ハーブ園」では、約40 種類のハーブを栽培。園のシンボルツリーである薬木「キハダ」を囲むウッドデッキを中央に配置し、歴史を学べる薬草エリアと、五感で楽しむハーブガーデンエリアの2つのエリアを設けている。