寒さが日毎につのる12月。事務所では、暖かい膝かけやムートンの座布団を愛用するスタッフが急増します。暖かな席を離れている間、ちょっとした事件が発生します。猫のミーちゃんに温かなイスを占領されるのです。
「ジャマだよ」と言うと、ジーとこちらを見つめ、膝掛けの上でフミフミを開始。これでは怒れません。お猫様の勝ち、愛らしい姿に思わず笑顔です。
カレーやシチュー、煮込み料理と相性バツグン
そんなミーちゃんの姿に心がホットになると、次は温かい食事が恋しくなります。シチュー、ポトフ、ロールキャベツ...12月はクリスマスもありますから、時間をかけてコトコト煮こんで作るビーフシチューもディナーにピッタリ。そんな料理をする時、肉の臭み消しと風味付けのために入れるのが「ローレル」です。他のハーブと合わせてブーケガルニにすると、より香り高くなります。
※ブーケガルニ...2本のセロリの茎の間にローズマリー、タイム、セージ、パセリの茎、そしてローレルの葉を1〜2枚添え、たこ糸で束ねたもの。煮込み料理や肉の臭み消し、風味付けに使われる。
呼び名いろいろローレル
ローレルは地中海沿岸が原産の常緑小高木で、初夏に黄色の花が咲き、葉には光沢と芳香があります。また、ローレルには、和名の月桂樹(ゲッケイジュ)、英名のベイ、スイートベイ、仏名のローリエなど、様々な呼び名があります。
ローレルの活用法
大量に収穫できる葉でハーバルバス
庭木や鉢植えで栽培するメジャーな植物ですが、西洋では古くから、葉を薬用に利用していました。乾燥した葉を刻んで布の袋に入れてお風呂に入れれば、炎症の緩和や、疲労回復が期待できるそうです。庭木としてローレルを育てると、とても料理では使い切れないほどの葉が収穫できるので、冬のお風呂でほっこり試してみてください。
古代ギリシアでは、「ベイ(ローレル)の木のあるところにいる人は、悪魔や魔女はおろか、雷や稲妻にさえ傷付けられることはないだろう」と言われ、雷、稲妻、魔法から身を守ってくれるお守りにもされました。有名なのは「月桂冠」。アポロンが月桂樹(ローレル)の葉でつくった冠を頭に載せていたのにならって、競技の勝者やローマの皇帝も月桂樹の王冠をかぶるようになりました。
キッチンリースやスタンダード仕立てに
冬は多くのハーブがお休みしてしまうので、薬用ハーブ園は寂しくなります。ローレルをコンテナに植え、スタンダード仕立てを作って飾ろうかしら。クリスマス用に赤いリボンを付けたら似合いそう。
ローレルの葉はキッチンリースにしても可愛い。飾りながら使えて一石二鳥です。
葉は料理に欠かせず、お風呂では疲れをとり、庭園には彩を与え、薬としても利用されて来たローレル。温かい煮こみ料理をいただいて元気アップし、寒い冬を乗り越えりましょう。
猫は書類入れで丸くなる~♪
- 【ローレル】
- 学名:ラウルス ノビリス(Laurus nobilis)
- 科名:クスノキ科ゲッケイジュ属
- 原産地:地中海沿岸
- 特徴:日当たりの良い場所で管理し、根詰まりさせなければ元気に育ちます。枝や葉が繁ったら、こまめに切って利用し、株に光と風が当たるようにします。
- 開花期:4月〜5月
- 栽培のポイント:排水の良い市販の園芸培養土に、籾がら燻炭を1割混ぜ、苦土石灰と緩効性化成肥料を混ぜた用土を準備します。根鉢より、ひとまわり大きな深鉢の底に炭を入れ、用土を少々入れたら株を中央に配置して植えます。枝が繁り過ぎると風通しが悪くなってカイガラムシがつきやすくなるので、注意します。
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この方にお話を伺いました
水戸 養命酒薬用ハーブ園(水戸市植物公園内) 西川 綾子園長 (にしかわ あやこ)

水戸市植物公園園長。園芸家。筑波大学第二学群農林学類卒業後、民間企業を経て水戸市植物公園開園のために水戸市へ移住。NHK「趣味の園芸」講師や書籍の執筆なども行う。2009年第14回NHK関東甲信越地域放送文化賞を受賞。2014年公益社団法人日本植物園協会常務理事就任。2017年オープンの「水戸 養命酒薬用ハーブ園」では、約40 種類のハーブを栽培。園のシンボルツリーである薬木「キハダ」を囲むウッドデッキを中央に配置し、歴史を学べる薬草エリアと、五感で楽しむハーブガーデンエリアの2つのエリアを設けている。