むくみの原因はさまざまで、食生活、運動量、季節や体調の変化などが考えられます。解消するには、生活習慣を見直すと同時に、漢方薬を頼るのも一案です。医師や薬剤師に相談の上、体質に合ったものを使いましょう。
むくみはなぜ起こる? 日常生活に潜む原因とは
むくみとは、皮下組織に余分な水分がたまってしまった状態のこと。水には冷やす性質があるため、むくみは冷えにもつながります。
体が冷えると血流が滞り、頭痛や肩こり、生理痛といった不調を引き起こすほか、だるさなどの原因にもなるため注意が必要です。まずはむくみを引き起こす生活習慣を知りましょう。
塩分のとりすぎ
塩分をとり過ぎると、体は体内の塩分濃度を下げるために水分をため込もうとします。喉も渇くため水分を必要以上にとってしまい、むくみにつながります。
水分のとり過ぎ
水分の摂取量を増やして不調が起きている場合、汗などで体から排出される水分と、飲み物などから摂取する水分のバランスが乱れている可能性があります。
お酒の飲みすぎ
血液中のアルコール濃度が高くなると血管が拡張し、水分代謝が乱れてむくみが生じます。飲酒時のおつまみで塩分摂取が増えることも影響すると考えられます。
このほか、冷え、ホルモンバランスの変化などむくみが起こるメカニズムの詳細は以下の記事で解説しています。併せてご一読ください。
東洋医学で考えるむくみを招く体の不調
気・血・水のバランスの乱れ
東洋医学ではむくみの基本的な原因として、健康な体に必要な3つの要素である「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の巡りの悪さが挙げられます。
水分の巡りが悪い状態を「水滞」として、水分の偏りを整える対処をします。しかし、水の巡りが悪くなる原因には、体の健康の基礎となる「気・血」が関係していることも。
体のエネルギーとなる気が滞ると内臓の働きに影響を与えてさまざまな不調の元になりますが、そのひとつがむくみです。もうひとつが、血流との関係。血がよどみ流れが悪くなると、血液中の水分が体の各部位に残ってしまい、手足のむくみとなります。
脾・腎・肺の機能低下
消化吸収を司る「脾」、膀胱と連携して水分を排出する「腎」、呼吸に関わる「肺」の働きが低下すると水分代謝が悪くなり、むくみが生じます。
さらに、「脾」の範疇である胃腸は湿気を嫌う臓器であり、湿度の高い梅雨時期や台風シーズンなどは外からの「湿邪(しつじゃ・湿気の邪気)」の影響を受けてむくみが悪化しやすくなります。
なお、むくみが生じる部位によっても原因が異なり、全身もしくは手足がむくみやすい人は「脾」、下半身がむくみやすい人は「腎」、顔がむくみやすい人は「肺」が弱っていると考えられます。
タイプ別! むくみにおすすめの漢方3選
漢方薬でむくみは改善されるのか?
東洋医学では、「むくみ=未病」のとき、自ら健康になろうとする力「自然治癒力」を高めることを重視しています。「生薬」は、体に不要なものを取り除いたり、代謝を良くしたりと、それぞれの生薬が多くの薬効成分を含んでいるため、複数組み合わせることで効能の幅が広がります。
冷えによる胃腸の不調からくるむくみに「藿香正気散(かっこうしょうきさん)」
メインの生薬である藿香に「湿邪」を取り除く働きがあり、胃腸の働きを助け体の水はけを改善します。冷たいもののとり過ぎで胃腸が冷え、機能低下が起きたときにもよく処方される漢方薬です。
肥満を伴うむくみを改善する「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」
胃腸の働きを助けて水分代謝を促します。ダイエットの漢方薬としても知られ、疲れやすくて汗をかきやすい「水太り(肥満症)」の人の体質改善にも使われます。
水の巡りを良くする「五苓散(ごれいさん)」
余分な水を排出し、水の巡りが滞る「水滞」の状態を解消するのが「五苓散」。胃腸の消化吸収機能を高めながら水分バランスを調整します。お酒や水分のとり過ぎによるむくみの改善に有効です。
また、頭部に水分が停滞すると顔にむくみが生じることがあります。顔のむくみを除くツボ、マッサージを以下の記事で紹介しています。漢方薬と併せて活用してみてはいかがでしょうか。
この方にお話を伺いました
鍼灸師 国際中医専門員(国際中医師) 田中 友也 (たなか ともや)
兵庫県神戸市にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」で健康相談にのる。関西学院大学法学部卒業後、イスクラ中医薬研修塾にて中医薬を学び、北京中医薬大学などで研修。季節に合った健康法や食養生をつぶやくTwitterが人気。日本中医薬研究会会員。著書は『不調ごとのセルフケア大全 おうち養生 基本の100』(KADOKAWA)など。