風邪の約9割はウイルスが原因。現状では風邪ウイルス自体を撃退する薬がないため、頼れるのは自分の体を守る「免疫力」のみ。風邪予防のポイントを押さえて、風邪知らずで過ごしましょう。
ウイルスはどこから? 風邪対策の鉄則「保湿」と「免疫力」
風邪は、ウイルスが付着した手や物を介したり、くしゃみや咳などでウイルスを含んだ飛沫を浴びたりすることで、口や喉、鼻の粘膜から感染します。
手洗いやうがい、喉の保湿、湿度コントロールなどで、ウイルスを体内に取り込まないようにしましょう。
ウイルスを取り込まない風邪予防3つのポイント
風邪予防の基本、うがい手洗い
外出先から戻った時などこまめに行い、手や喉に付着したウイルスを洗い流しましょう。手洗いは石けんがなくても、15秒以上の流水でこすり洗いするだけで一定の効果が期待できます。
また、アルコール消毒液の場合は揮発する時にウイルスを死滅させるので、必ず乾いた手に吹きかけてすり込みながら乾燥させましょう。
うがいは水で頻繁に行うことにより効果が高まります。うがい薬の使い過ぎは口の中のよい菌(常在菌)が減ってしまう可能性もあるので、日常的には水だけで十分です。
風邪予防にはマスクや飴で保湿を
喉と鼻の粘膜が乾燥すると、ウイルスを外に排除しようとする働きが鈍ります。マスクは口や鼻の乾燥防止に役立つアイテム。呼気に含まれる湿気がマスク内にたまって、保湿効果を得られます。
使用したマスクの表面にはウイルスが付着しているので、人混みで使った物や一度外した物は新品に交換するようにしましょう。
また、喉の保湿にはのど飴をなめるのも一案。のど飴で唾液の分泌を促して潤いを保ちましょう。
室内の湿度を50%~60%に保って風邪予防
ウイルスの感染力は、温度が20.5度〜24度で湿度が50%以上になると弱まります。定期的に換気しながら、窓ガラスが曇る程度の湿度を保ちましょう。
就寝中も乾燥しやすいので加湿器を活用したり、室内に洗濯物を干したりして、乾燥を防ぐ工夫を忘れずに。
セルフケアで免疫力を高めよう
日頃から免疫力を高めるためには食事と運動が大切です。食事では旬の野菜や果物を積極的にとるのがポイント。
旬の食材には体を強くし、免疫力アップにつながる栄養が豊富です。また、腸内環境の改善もおすすめです。
また、血流がよくなると免疫細胞が活性化するので、こまめにストレッチをして血流を促すとよいでしょう。
風邪をひいたときの対処法
どんなに気をつけていても風邪をひいてしまうこともあるでしょう。早めにケアして症状を悪化させないよう心がけましょう。
風邪のひき始めであれば「葛根湯」の原料である葛を使ったお茶が効果的です。自宅でも手軽に作ることができます。
風邪を長引かせず軽い症状で済ませるには、まず免疫力を回復させること。そのために欠かせないのが睡眠です。睡眠不足は免疫力を低下させる原因でもあるので、風邪だと感じたら睡眠をとってしっかり休養しましょう。
発熱などの症状は体がウイルスと闘っている証拠です。薬で無理に解熱させたりせず、葛生姜茶などで体を温めたりして免疫力を上げるサポートをしましょう。こまめに水分を補給し、食事は栄養があり消化のよい物をとるのがおすすめです。
また、ハーブの力を借りるのもよいでしょう。ハーブの薬効成分が体に吸収されやすく、ビタミンやミネラルなどをとり入れることができるハーブティーがおすすめです。
注意すべき風邪の症状
風邪はセルフケアをしながら安静にしていれば、通常は5日ほどで自然に治癒します。ただし、症状が改善しない場合や、下表のような症状が続く場合は別の疾患や合併症が疑われるので、医療機関を受診してください。
※呼吸器疾患や糖尿病などの基礎疾患がある人は、風邪をひいたら早めに主治医と相談してください。
たとえウイルスが侵入したとしても、免疫力を高めておけば風邪の発症や重症化を防げます。毎日の予防策とあわせて、免疫力を高める生活を心がけましょう。
この方にお話を伺いました
呼吸器専門医、アレルギー内科専門医、がん治療認定医、総合内科専門医 入谷 栄一 (いりたに えいいち)
東京女子医科大学第一内科、日扇会第一病院などを経て、現職。長年の在宅診療の経験より、内科系にとどまらないオールマイティーな診療を実践する他、雑誌やテレビなどメディアでも活躍。NPO法人メディカルハーブ協会理事も務める。