カイロは体を手軽に温められる便利なアイテムですが、貼る場所によって効果が異なることをご存じですか? 全身の冷えやお腹の冷え、腰痛の緩和など、目的に合わせて貼る場所を変えることが上手に使うポイントです。
カイロの効果的な使い方と、冷えや腰痛に効果的な場所・ツボ、使用する際の注意点などについて解説します。
温める場所のポイント
カイロは、貼って温めて気持がよいと感じる位置に貼るのがよいでしょう。結果的にその位置が、体を温めたり血行を促したりするのに有効なツボということもあります。カイロの代わりに貼るタイプのお灸などを使って、ピンポイントでツボを温めるのもおすすめです。
冷え対策におすすめの場所・ツボ
冷え性(冷え症)に効果的なツボはいくつかあり、お腹の冷えに効くものや足の冷えに効くものなどさまざまです。温めたい部位別の効果的なツボをご紹介しますので、カイロを貼る位置の参考にしてください。
全身の冷えには「大椎(だいつい)」のツボ
首には頸動脈という太い血管があり、体を温めるのに効果的です。特に首のうしろ側のつけ根には「大椎(だいつい)」というツボがあり、全身を温めるだけでなく、首や肩のこりを和らげるのにも効果的です。
お腹の冷えには「関元(かんげん)」のツボ
へそから指幅4本分下にあり、お腹の冷えによる痛みや下痢、婦人科の悩みなどに有効です。
利尿にも役立つといわれ、体が冷えて眠れないというときにおすすめの快眠ツボでもあります。
下記記事では、お腹が冷える原因と、それが引き起こす症状、対策について詳しく解説しています。こちらも参考にしてください。
足の冷えには「太谿(たいけい)」のツボ
太い血管が通っているくるぶしにあるツボで、内くるぶしとアキレス腱の間のへこみにあります。足だけでなく全身の血流を改善するのに効果的です。
女性特有の冷えには「三陰交(さんいんこう)」のツボ
足のくるぶしの頂点から、手の指4本分(親指以外の4指)上、すねの骨(頚骨)の内側のくぼみにあるツボです。
婦人科系の病症全般に有効で、血流を促す作用もあり、体が温まり生理痛などを和らげる効果があります。女性に多い貧血気味で眠れないタイプにもおすすめです。
※ 妊娠中の方は医師にご相談ください。
「三陰交」のツボは下半身のむくみ解消にも効果があります。下記記事では部位別にむくみの原因と解消に効果的なマッサージ・ツボをご紹介していますので、むくみが気になる方はこちらもチェックしてみてください。
腰痛や風邪予防、下痢や便秘におすすめの場所・ツボ
冷えからくる腰痛や風邪、下痢や便秘などに効くツボもあります。症状を感じたときだけでなく、日頃から押したり温めたりするとよいでしょう。
腰痛には「命門(めいもん)」のツボ
腰は、冷えによる腰痛や生理痛などを感じやすい場所です。そういうときに効果があるのが、おへそのちょうど裏側にある「命門(めいもん)」のツボ。全身を温め、腰痛も和らげる効果があります。
風邪予防には「風門(ふうもん)」のツボ
「かぜ(風邪)が入ってくる門」と書く「風門(ふうもん)」は、背中の上部、肩甲骨の間にあるツボです。肩まわりの血行がよくなり、風邪予防だけでなく、風邪をひいた後の症状緩和にも有効です。
下痢・便秘には「大腸兪(だいちょうゆ)」のツボ
「大腸兪(だいちょうゆ)」のツボがあるのは、背骨と左右の骨盤のラインが交わるところ。背骨に沿って親指で上から下にたどっていき、骨盤とぶつかった左右指2本分外のポイントです。体を温め、腸の働きを活性化するので、下痢や便秘の改善に有効です。
低温やけどには注意しよう
カイロは冷えを感じたときに手軽に使えて便利ですが、下記のような使い方には注意をしましょう。
- 〔やってはいけないカイロの使い方〕
- ・カイロを直接肌に貼る
- ・靴用、靴下用のカイロを靴をはかずに使用する
- ・こたつなど、ほかの暖房器具と併用する
- ・カイロを貼って就寝する
カイロが直接皮膚に長時間触れていると「低温やけど」の危険があります。「低温やけど」は、触れていて心地よいと感じるような比較的低い温度(約44~60℃)で生じるため、初めは熱さや痛みを感じにくく、本人が気づかないうちに症状が進行していくのが特徴です。
皮膚が赤くなったり水疱ができたりするほか、ひどい場合は皮膚細胞が壊死してしまうこともあるので注意が必要です。
また、就寝の際にカイロを貼って寝たり、こたつなどのほかの暖房器具と併用したりすると、カイロが安全に使用できる温度を超えてしまう可能性が。やけどなどの危険があるので絶対に避けましょう。
カイロを使う際は、衣類の上から貼り付けたり、ハンカチなどに包んで当てたりするのが正解。カイロを貼っている部分をベルトなどで圧迫することでも、低温やけどを引き起こす可能性があるので注意してください。
寒い季節にはカイロを上手に活用して、体のケアに役立ててください。
この方にお話を伺いました
目黒西口クリニック 院長 南雲 久美子 (なぐも くみこ)

日本東洋医学会認定漢方医学専門医、日本消化器内視鏡学会認定医、認知症サポート医、介護支援専門員。大学卒業後、東京慈恵会医科大学内科研修・入局、関東逓信病院(現NTT東日本関東病院)消化器内科非常勤嘱託を経て、北里研究所東洋医学総合研究所にて、漢方・鍼灸を学ぶ。1996年に東洋医学と西洋医学を融合して治療する目黒西口クリニックを開業。著書に『新版 冷え症・貧血・低血圧』(主婦の友社)、『タイプ別 冷え症改善ブック』(家の光協会)、『名前のない病気 不定愁訴』(家の光協会)がある。