寝ているはずなのに疲れがとれないなど不調を感じることはありませんか? 心身の健康のために必要とされる「成長ホルモン」の分泌には眠りの深さが大きく関わっています。睡眠の質を上げるために今すぐできる習慣を紹介します。
隠れ睡眠不足!? 眠りの質をチェック
睡眠をとっているにもかかわらず、以下のような不調はありませんか? チェックしてみましょう。
睡眠には「休憩」のほかに「体のメンテナンス」という重要な役割があります。ここでいうメンテナンスとは、脳や体の細胞を再生すること。そのため睡眠の質が悪いと、たっぷり寝ているつもりでも不調が改善されないということが出てきます。
睡眠中に分泌される「成長ホルモン」とは?
筋肉や肌、免疫機能に影響。体脂肪を減少する働きも
体のメンテナンスに大きくかかわっているのが、主に睡眠中に脳下垂体から分泌される成長ホルモン。体のあらゆる細胞を再生させる重要なホルモンです。
たとえば筋肉トレーニングをすると筋細胞が壊れますが、眠っている間に分泌される成長ホルモンによって新しい筋細胞に再生され、より若く強い筋肉になります。睡眠は筋肉の成長の促進剤になっているのです。
- 〔成長ホルモンの主な働き〕
- 運動などで壊れた筋肉細胞を新しく再生。筋肉の成長を促す。
- 紫外線などによって壊れた肌細胞を新しい肌細胞に再生。肌にハリを出す。
- 壊れた免疫細胞を新しい免疫細胞に再生。高い免疫機能が維持できるため、風邪をひきにくくなる。
- 壊れた内臓の細胞を新しく再生。より健康になる。
- 脂肪を分解して体脂肪を減少させる。
成長ホルモンには、眠っている間にさまざまな細胞を再生したり代謝にかかわったりする作用があります。睡眠中に成長ホルモンをいかに多く分泌させられるかが健康のカギとなるのです。
成長ホルモンを多く分泌させるには?
最初の3時間をぐっすり眠ることが重要
成長ホルモンは寝ついてから3時間(深く眠っている時間)の間に大量に分泌され、浅い眠りの時間が多い後半ではほとんど分泌されなくなります。つまり、眠り始めの3時間でいかに深く眠るかが大切な要素となります。
熟睡できない理由は「寝すぎ」かも?
基本的には誰でも眠り始めの3時間は一番深い睡眠をとっています。それなのに浅くなってしまう原因は、過剰なストレス、加齢、起きている時間が短いなど。
起きている時間が短い場合、たとえば午後に長時間の昼寝をしてしまうと、夜、眠気が来ないため眠りが浅くなってしまいます。「なかなか寝付けない」「眠りが浅い」といった悩みは、寝過ぎから起こっていることもあるのです。
ぐっすり眠る5つのコツ
対策1:頭・体の両方を使って脳と体の疲れのバランスをとる
頭だけ、または体だけが疲れても深く眠れないため、働いている人は仕事とプライベートで違うことをするのがおすすめ。
対策2:うたた寝や午後の長い昼寝でリズムを崩さない
午後どうしても眠い場合は15分程度(浅い眠りの間に起きられる時間内)で仮眠を。
対策3:日中は太陽の光を浴び、夜間は照明を落とす
昼間は眠くなるホルモン「メラトニン」の分泌を抑えるためにできるだけ太陽の光を浴び、夜間は分泌量を増やすために明るい光を見ないようにしましょう。
対策4:寝る前に体温を上げておく
体温が高い状態から低い状態への落差が大きいほど、眠気がおきやすくなります。日中や夕方に体を動かしたり夕食で温かいものや辛いものを食べたりするほか、寝る1時間前に入浴するとよいでしょう。
対策5:ストレスをため込まない
ストレスを感じると目覚めを促すホルモン「コルチゾール」の分泌量が増えます。自分に合ったストレス対策を行いましょう。
現在問題となっているのが、ウイズコロナ時代の睡眠の質の悪化です。外に出る機会や体を動かす機会が減ったり、自宅でのデスクワーク時間が増えたりして、脳と体の疲れのバランスを崩しがちに。思い当たる人は対策1~5を実践してみましょう。
この方にお話を伺いました
スリープクリニック調布 院長 遠藤 拓郎 (えんどう たくろう)
東京慈恵会医科大学卒業、同大学院医学研究科修了。スタンフォード大学などへ留学。東京慈恵会医科大学助手、北海道大学医学部講師を経て、調布・銀座・青山・札幌にスリープクリニックを開院。スリープドクターとして、テレビやラジオなど多くのメディアで活躍中。著書は『75歳までに身につけたいシニアのための7つの睡眠習慣』(サンクチュアリ出版)など。