朝すっきりと起きられない、気づいたらまた眠ってしまっていた、なんてことはありませんか。
緑蔭診療所の橋口医師によると、朝起きられない、朝の体調不良で受診される方の多くは、体内時計が後ろにずれてしまうことで起こる「概日(サーカディアン)リズム障害」を起こしているそう。
概日リズム障害で朝起きられない原因と対策を知っておきましょう。
朝起きられない、概日リズム障害とは
多くの人の体内時計は24時間10分。そのため、自由に寝起きしていると毎日10分、1週間で1時間、1か月で4時間くらい実際の時間と体内時計にずれが生じます。
明け方は最も眠気が高まる時刻なので、宵っ張りの朝寝坊生活では午前3~4時頃寝て昼過ぎに起きるパターンで固定することが多いのです。
この概日リズム障害、家にこもっていて日中のルーチンワークがないと、誰でも陥る可能性があります。この状態で無理やり6~7時に起きようとしても深いノンレム睡眠中は朦朧として起きられません。
何とか起きても活動時の交感神経優勢な状態へスムーズに切り替わりにくいため、吐き気、めまい、頭重など気分が悪くなってしまいます。
概日リズム障害の症例
COVID-19に伴う1回目の緊急事態宣言解除の直前に受診した40代女性Aさん。4月の転職直後から自宅勤務になっていました。
もともと寝つきが悪く入眠時刻がどんどん後ろにずれて、受診時には明け方まで眠れず昼過ぎまで起きられない状態でした。Aさんの概日リズム障害は長期化しているわけではなく体調や精神状態にも問題がなかったので、主に以下のような生活指導で治療することにしました。
朝起きられない場合の対策法
午前中に予定を入れて強引に起きることで寝不足を作り、下記のことを実行すると短期間で体内時計を戻すことができます。
・明け方に次いで眠気が高まる夕方に寝ない(休日の昼寝は15時までに)
・夕食後眠くなった場合、早い時刻でもうたた寝ではなく布団で寝る
・明け方に目覚めたら寝不足でもそのまま起きてみる
・起床直後にカーテンを開け、空を見上げて光に当たる
体内時計は光でリセットされるので、起床直後に明るい光に当たるのはとても重要です。
・ローズマリーや、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘系の香りでシャキッと目を覚ます
香りの効果について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ただし、概日リズム障害が長期化している人や、精神的な不調を抱えている人ではセルフケアでは難しい場合もありますので、医療機関などで相談しましょう。
概日リズム障害と間違えやすい「起立性調節障害」
概日リズム障害と勘違いされやすい病気が、起立性調節障害です。思春期に多い起立性調節障害は起立時や立ちっぱなしの時に血圧が下がって気を失ったり動悸がしたりする循環器系の自律神経失調症。
朝起き不良を伴うことが多いため、朝起き不良が続くだけで起立性調節障害と勘違いされることも多い病気です。
思春期には性ホルモンの分泌が盛んになり急激な身長の伸びなどが起こります。そのため起立性調節障害が起きやすいと考えられていますが、個人差が大きい病気です。
背が高くて華奢、食が細くて長い睡眠を必要とするロングスリーパーに多いようです。このタイプの人、特に女性では20代になっても起立性調節障害が続く場合もあります。
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この方にお話を伺いました
緑蔭診療所 橋口 玲子 (はしぐち れいこ)

1954年鹿児島県生まれ。東邦大学医学部卒。東邦大学医学部客員講師、および薬学部非常勤講師、国際協力事業団専門家を経て、1994年より緑蔭診療所で現代医学と漢方を併用した診療を実施。循環器専門医、小児科専門医、認定内科医、医学博士。高血圧、脂質異常症、メンタルヘルス不調などの診療とともに、ハーブティやアロマセラピーを用いたセルフケアの指導および講演、執筆活動も行う。『医師が教えるアロマ&ハーブセラピー』(マイナビ)、『専門医が教える体にやさしいハーブ生活 』(幻冬舎)、『世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典』(マイナビ)などの著書、監修書がある。