四十肩・五十肩の改善におすすめのストレッチ! 原因や症状を医師が解説
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四十肩・五十肩の改善におすすめのストレッチ! 原因や症状を医師が解説

ある日突然、肩に痛みを感じたり、腕が上がらなくなったりする「四十肩・五十肩」。同じ肩のトラブルでも肩こりとは症状が異なり、痛みのせいで睡眠不足になることもあります。四十肩・五十肩の原因と症状、改善におすすめのストレッチなどを、肩関節疾患に詳しい医師の橋口宏さんに聞きました。

〔目次〕
四十肩・五十肩とはどんな症状?
四十肩・五十肩の原因は
四十肩・五十肩を改善するおすすめストレッチ
四十肩・五十肩の「夜間痛」を和らげる寝方のポイント
四十肩・五十肩に漢方薬は効く?
四十肩・五十肩と間違いやすい腱板断裂やリウマチなどの症状

四十肩・五十肩とはどんな症状?

「四十肩・五十肩」とは肩関節の周辺に炎症が起こり、痛みと運動障害が表れる症状です。
ある日突然痛みが出て、腕が頭の上まで上げられなくなったり、体の後ろや前、外側に回せなくなったりします。

肩こりとよく混同されますが、肩こりは姿勢の悪さやストレスなどにより、首や肩の筋肉に血行不良が起こったり疲労がたまったりするもの。肩こりは首筋や肩甲骨周辺に痛みを感じることが多いですが、四十肩・五十肩は肩関節と二の腕で、痛みの出る場所も異なります。

四十肩・五十肩は数週間〜数カ月たつと自然に治まることがありますが、ずっと肩を動かさずにいると、関節周りが固まって腕が動きにくくなることも。ストレッチなどで柔軟性を保つことが大切です。

四十肩・五十肩は同じ「肩関節周囲炎」

肩関節周囲炎

四十代に起こるから「四十肩」、五十代の痛みは「五十肩」とされていますが、いずれも同じ「肩関節周囲炎」という病気です。

肩関節周りの筋肉や腱(けん)、靭帯(じんたい)などの組織に炎症や損傷が起こることで痛みが表れ、関節が動かしにくい状態(拘縮:こうしゅく)が起こります。

四十肩・五十肩を発症する人は、40代後半から60代がほとんどで、そのほかの年代は多くありません。性別による違いは見られず、左右どちらの腕に起こるのかについても明らかな傾向はありません。

ただし、デスクワーク中心の人は発症しやすいとされています。コロナ禍におけるリモートワークの普及や外出自粛による運動不足が影響して、20代、30代など若い世代にも増えています。

※「腱」とは筋肉と骨をつなぐ繊維質の結合組織のこと。肩には、肩甲骨と上腕筋をつなぐ板状の腱、「腱板」があります。

四十肩・五十肩の症状セルフチェック

四十肩・五十肩の主な症状をご紹介します。1つでも当てはまる人は、要注意です。

〔四十肩・五十肩チェック〕
□ 肩を動かすと痛む
□ 腕を上げにくい
□ 腕を体や頭の後ろに回しにくい
□ 腕をひねりにくい
□ 寝返りを打つと痛みで目が覚める
□ 服の袖に手を通すときに肩や腕が痛む

四十肩・五十肩の原因は

四十肩・五十肩の原因

突然痛みに襲われる四十肩・五十肩ですが、実はなぜ起こるのか、明らかな原因は分かっていません。ただし、下記のことが影響すると考えられています。

四十肩・五十肩の主な原因は「加齢」と「運動不足」

四十肩・五十肩の原因で、最も多いと言われているのが「加齢による骨などの老化」と「運動不足」です。

肩関節周りの骨や軟骨、靭帯(じんたい)、腱(けん)などが老化すると、硬くなったり萎縮したりします。そこに負荷がかかると炎症が起こり、四十肩・五十肩になりやすいと言われています。

日頃から体を動かす機会が少なく、肩関節をあまり動かさずに同じ姿勢を続けていると、さらにリスクが高まります。デスクワーク中心の人に発症例が多いのもこのためです。

病気の影響で四十肩・五十肩の症状が出ることも

四十肩・五十肩の症状を引き起こす病気があり、主なものは以下の3つ。このほか心因性によるものもあります。なお、きっかけになった病気が改善すると症状は収まります。

糖尿病

血糖値がコントロールできないことにより血行が悪化。腱組織が変性して発症します。糖尿病患者の10~20%は四十肩・五十肩になります。

脂質異常症

過剰になったコレステロールが腱組織に沈着すると、炎症を起こしやすくなり、痛みを発生させます。

甲状腺の疾患

甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進(こうしん)症といった疾患があると、腱組織が変性しやすくなります。痛みや腕が動かしにくくなるなど、症状が表れます。

四十肩・五十肩を改善するおすすめストレッチ

四十肩・五十肩 ストレッチ

四十肩・五十肩は、最初に強い痛みが出るのが一般的です。その後、痛みはだんだん弱まり、肩関節が動かしにくくなります。

痛みが強い時は無理に動かさず安静にしていることが重要ですが、ずっと関節を動かさないでいると、関節周りが固まって腕が動きにくくなることが。痛みに留意しながら肩の筋肉を動かし、可動域を広げることが大切です。

そこで、四十肩・五十肩の症状改善におすすめのストレッチをご紹介します。お風呂などで血行を良好にしてから、呼吸を止めずに行うのがコツ。痛みを感じたらやめるなど、無理のない範囲で行いましょう。

四十肩・五十肩の症状に合わせた対処法を知りたい方はこちらをご覧ください。

拳上(きょじょう)運動(10回)

四十肩・五十肩 挙上運動

仰向けになり、痛む方の手をもう片方の手でつかむ。
肩の力を抜き、つかんだ手の力で、両手をゆっくりと頭の方に持ち上げる。痛みを感じたら10秒止めて戻す。

テーブルスライド(10回)

四十肩・五十肩 テーブルスライド

テーブルの前に座る。肩の力を抜いてテーブルに両手を伸ばして置く。
腕を前に伸ばしたまま体を前に倒す。痛みを感じたら10秒止めて戻す。

背中で内旋(ないせん)運動(10回)

四十肩・五十肩 内旋運動

立った姿勢で両手を背中に回す。手のひらを外向きにする。
痛くない方の手で痛む方の手をつかむ。肩の力を抜いて、ひじを曲げながら背骨に沿わせるようにして持ち上げる。痛みを感じたら10秒止めて戻す。

振り子運動(10回)

急性期や慢性期でも行えます。

足を肩幅程度に開き、痛みのない方の手をテーブルなどにつく。
肩の力を抜き、痛い方の腕を前に垂らしておじきの姿勢をとる。
腕を振り子のように前後・左右に30秒動かす。
10回繰り返す。

首・肩・背中のマッサージも有効

菱形筋 前鋸筋 肩甲挙筋 僧帽筋 三角筋

首から背中、肩周辺にある菱形筋、前鋸筋、肩甲挙筋、僧帽筋、三角筋といった筋肉をマッサージすると、血行が促され、痛みやこわばりが和らぎます。指圧のように強く押すと筋肉が疲労し、「もみ返し」と呼ばれる痛みが出るので、気持ちよさを感じる程度の強さでもみほぐすように行いましょう。痛みのない強さであれば急性期に行っても問題ありません。

四十肩・五十肩の「夜間痛」を和らげる寝方のポイント

四十肩・五十肩 夜間痛

痛みで眠れないという人も多い四十肩・五十肩。このような就寝時の痛みを「夜間痛(やかんつう)」と言います。

人の肩は背中よりもやや前側についているため、平らな床に仰向けで寝ると、重力で肩に負担がかかります。すると肩の関節を安定させるために筋肉に力が入り、痛みが出ると考えられます。

寝るときの姿勢や寝具を工夫して、症状を和らげましょう。

痛む肩を上にして横向きに

肩の関節が体の内側に向いている方が楽になるので、痛む肩を上にして横向きに寝ます。その際、抱き枕などを使って肩の高さを保つといいでしょう。

仰向けはタオルで高さを調整

仰向けになった際、重力で肩が床の方向に下がると痛みの原因に。肩からひじにかけてタオルなどを敷いて、手をお腹の上に乗せて寝ると肩の高さが安定します。

枕の高さを変えてみる

枕は高すぎても低すぎても痛みが出ます。タオルなどを使ってつらくない高さを探ってみましょう。

痛む肩を保温する

寝ている間に肩が冷えると、痛みが起こることがあります。寝具やタオルで肩を覆い、痛む部分を冷やさないようにしましょう。

四十肩・五十肩に漢方薬は効く?

四十肩・五十肩 漢方

漢方では、痛みは「気」「血」「水」の巡りが滞ることで起こると考え、その人の症状や状態に合わせて薬を処方します。四十肩・五十肩に効果があるものもありますので、試してみるのも良いでしょう。

西洋医学で使う鎮痛薬には体を冷やす働きがあるため、冷えを感じる・冷えると痛みを感じる人には、体を温める漢方薬が特におすすめです。

四十肩・五十肩と間違いやすい腱板断裂やリウマチなどの症状

四十肩・五十肩 間違いやすい症状

四十肩・五十肩や肩こり以外にも肩の痛みやこわばりが表れる病気があります。自己判断で誤った対処をしてしまう場合もあるため、心配な場合は受診しましょう。

肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ)

腱板は肩の骨と骨の間にある板状の筋肉のこと。肩の使いすぎや外傷などで腱板が切れてしまうことを「肩腱板断裂」といいます。四十肩・五十肩の疑いがある人のうち、約30%が該当するというほどまぎらわしい疾患です。

四十肩・五十肩と同様に50~60代に多く、負荷のかかる利き手側の肩に多いのが特徴です。

腱板炎(けんばんえん)

肩周辺の腱に炎症が起こるもので、炎症の場所が異なる「肩峰下滑液包炎(けんぽうかかつえきほうえん)」や「上腕二頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)」などがあります。

なかでも上腕二頭筋長頭腱炎は、四十肩・五十肩の前段階と考えられます。

石灰化腱炎(せっかいかけんえん)

肩の腱に血液中のカルシウムが結晶となって沈着して起きる炎症で、加齢と共に発症しやすくなります。救急車を呼ぶほどの激しい痛みが生じる人もいれば、無症状でたまたま撮影したレントゲン写真で判明する人もいます。

リウマチ

30~50代の女性に多い自己免疫疾患。関節に炎症が起こる、激痛があるといった点で四十肩・五十肩と似ています。しかし、起床直後に強い症状を示すこと、初期症状が手指のこわばりであること、肩関節の拘縮が少ないことなどが四十肩・五十肩との違いです。

心筋梗塞(しんきんこうそく)、肺がん

心筋梗塞や狭心症(きょうしんしょう)、肺がんでも肩に痛みを生じることがあります。心疾患の場合は突発的な痛みとなり、肺がんの場合は痛みが長く続きます。

こんな初期症状や違和感が出たら医師に相談を

「そのうち治るだろう」と放置する人も多い四十肩・五十肩ですが、人によっては肩関節が動かない状態が数年続く場合も。また、内臓の疾患、ホルモンバランスの乱れ、ストレスなど、ほかの不調が隠れている場合もあるので、以下の症状が表れたら、早めに医師に相談しましょう。

〔こんなときは早めに受診〕
□ 肩の痛みが2週間~1カ月と長く続く
□ 肩に電気が走るような痛みがある
□ 肩に力が入らない
□ 肩を動かすと肩の中でゴリゴリといった音が鳴る
※腕や首を回してゴキっとするのは筋肉なので、それとは別物。

この方にお話を伺いました

米倉脊椎・関節病院院長 橋口 宏 (はしぐち ひろし)

橋口 宏

日本医科大学卒。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医。日本医科大学付属第二病院整形外科医局長、日本医科大学千葉北総病院整形外科准教授などを経て現職。肩・肘関節外科、スポーツ医学を専門とし、漢方医学にも精通。整形外科疾患に対する漢方処方の講演なども多数行っている。

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