風邪をひいたときや、胃腸が疲れたときに食べることが多いおかゆ。
胃腸に優しいことから療養中の食べ物のイメージがありますが、薬膳の考え方では「十徳」と呼ばれる効果・効能があるとされ、薬膳の本場である香港や台湾では1日のエネルギーをチャージする朝の定番メニューとして親しまれています。
鶏がらスープで炊いたおかゆに季節や体調に合った食材を加えれば、それだけで美味しく、体想いの一品に。(薬膳の基本の考え方についてはこちら)
鶏がらスープでエネルギーをチャージ「楽うま薬膳粥」
胃腸を労わる鶏がらスープで炊いた「薬膳粥」は、胃腸の調子を整え、エネルギーをチャージする一品。免疫を高める松の実を合わせることで、風邪の予防効果も期待できます。
- 〔材料〕4人分(冷凍庫で3~4週間保存可能/1人分178kcal/塩分0.5g)
- 米..................................1合
- 水..................................1000ml
- 鶏がらスープの素.........大さじ1
- 酒..................................大さじ1
- 松の実...........................大さじ2杯強
- 塩..................................小さじ1/3
〔作り方〕
- 米は研いでザルに上げて水気を切り、鍋に水とともに入れて中火にかける。
- 沸騰したら火を弱めて鶏がらスープの素、酒、茶色の薄皮をむいた松の実を加えて混ぜ、30~40分程度、米が軟らかくなるまで炊く。焦げ付かないよう時々かき混ぜ、水分が足りなければお湯を180mlほど追加する。
- 塩を振り、軽く混ぜて火を止める。
◯アドバイス
・冷えが強い時は、別名「陽草」と呼ばれ、体を温める作用をもつニラと、少しの生姜を加えていただきましょう。ニラは1cmに刻み、火を止める直前に入れます。
・本格的に作りたい方は、鶏がらスープを作るところから挑戦してみましょう。より濃厚な味わいと、豊かな香りが楽しめます。
・炊飯器で炊く場合は、米、水、酒、松の実をお粥用の機能で炊いた後、鶏がらスープの素と塩を加えます。
「楽うま薬膳粥」のアレンジレシピ!
食べ過ぎ・飲み過ぎで疲れた胃腸に「七草薬膳粥」
七草粥は奈良時代から続く年中行事ですが、今年は薬膳粥に消化を助け解毒の働きも期待できる七草をプラスした、「薬膳七草粥」としていただきましょう。
食べ過ぎた時は消化酵素のあるスズナ(かぶ)やスズシロ(大根)を多めに、お酒を飲み過ぎた時は解毒効果のあるセリを多めに入れるのがおすすめです。
※ 七草........セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ
他の材料は、上記「楽うま薬膳粥」と同様です。
〔作り方〕
- 七草はすべて、食べやすい大きさに刻んでおく。
- スズナ、スズシロ(葉以外)は炊いている途中で、葉物は炊き上がる直前に加え、ひと混ぜして火を止める。
◯アドバイス
・七草のアク抜きは不要です(量が少ないため、それほど気になりません)。
・溶き卵を回し入れて卵粥にしたり、塩鮭や干しエビを加えたりするのもおすすめ。タンパク質が取れてさらに栄養がアップします。
血の巡りを良くする「人参とごまのおかゆ」
血液を補う働きがある人参と、血流を改善する作用があるごまを合わせた、巡りをよくするメニュー。ニンジンはβ-カロテンが豊富で、免疫力を高める効果も期待できます。
- 〔材料〕2人分(1人分220kcal/塩分1.3g) ■A
- 米(研いでザルに上げる)..................1/2合
- 水.......................................................1000ml
- 人参(皮をむきすりおろす)..............100g
- 酒......................................................大さじ1 ■B
- 鶏がらスープの素......小さじ1/2
- すりごま....................大さじ2
- 塩................................少々
- 万能ねぎ(小口切り).......適量
※三つ葉やあさつきでも代用可
〔作り方〕
- Aを土鍋(通常の鍋でも可)に入れ、混ぜ合わせて火にかける。沸騰したらしゃもじで数回かき混ぜて弱火にし、蓋を1~2cmほどずらして30~40分煮る。
- 2. の米が軟らかくなったら、Bを加えて全体をゆっくり混ぜ合わせ、5分煮たら火を止める。
- 器に盛り、万能ねぎを散らす。
◯アドバイス
・お好みで冷凍シーフードミックスを入れても◎。タンパク質を補い、エネルギーチャージできます。
・シーフードを加える時は、解凍して食べやすい大きさに切ったものに酒(大さじ1)をふりかけておき、2.で酒、塩と一緒に加えて火が通るまで3分ほど煮ます。
・炊飯器を使う場合は、Aをお粥用の機能で炊いた後、Bと万能ねぎを加えます。
おかゆの「十徳」
薬膳では、おかゆに「十徳」があると言われており、古書に以下のように書かれています。
一、顔色光沢(顔色・肌つやをよくする)
二、気力健康(栄養を吸収し、体力をつける)
三、寿命延永(寿命を延ばす)
四、身支安適(胃にやさしく、体が安定する)
五、言音清朗(頭の働きがよくなり、言葉が清らかになる)
六、飢消(空腹を満たす)
七、渇消(のどの乾きを癒やす)
八、宿食除(未消化の食物を除く)
九、風除(かぜをひかない)
十、大小便調達(お通じも利尿もよくなる)
これを見ると、おかゆには風邪の時だけ食べるにはもったいないくらいの効果・効能があると言えそうです。普段から食卓におかゆを取り入れて、健康な体を手に入れましょう。
この方にお話を伺いました
料理研究家 管理栄養士 国際中医薬膳管理師 植木もも子 (うえき ももこ)

中医学や雑穀などを取り入れた、 美味しいだけでなく、体によい料理が評判。『からだを整える薬膳スープ』(マイナビ)、『いちばんやさしいさかな料理の本』(日東書院)他著書多数。