痛みとかゆみを伴うしもやけは冬の大敵。温めると症状がひどくなるのも厄介です。しもやけにならないためにはどうすればよいのか? 原因や対策、なったときの対処法をお伝えします。いち早く予防法を知りたい方はこちらをご確認ください。
かゆいしもやけの原因とは?
そもそもしもやけとは?
冬季に見られる「しもやけ(凍瘡)」は、冷えによる血行不良で手足の先や耳、頬などが赤色~赤紫色に腫れるものです。ジンジンするような感覚が起きやすく、むずがゆい、痛い、熱いなどの症状が現れ、体が温まると、痛みやかゆみが強まったりします。
しもやけの原因は?
しもやけは、繰り返す寒冷刺激や気温差によって毛細血管が収縮し、血流が悪化することによって起こります。手足の先など、体の末梢部分は冷えやすく、毛細血管が収縮しやすいので、その周囲の皮膚が炎症を起こすことが多いです。
冬のシーズンを通して悩まされる方もいますが、意外にも、真冬より初冬や春先など、朝晩が冷えて日中は暖かくなる、寒暖差が大きい季節に多く見られます。単に気温が低いだけではなく、ある程度の湿気もあるときの方ができやすいのが特徴です。
手袋や靴の中が濡れたり蒸れたままになっていたりしても、手足の皮膚表面の温度が下がりやすいため、しもやけができやすくなります。
かゆいしもやけの症状
しもやけは手足の先、耳のほか、頬や鼻先などにもできます。症状は2種類あり、いずれも痛みやかゆみが現れます。
悪化すると水疱になったり、破れて傷が深くなったりした場合には潰瘍(かいよう)になることもあります。
- 〔しもやけの症状〕
- 樽柿型(たるがきがた)
患部全体が赤紫色に腫れ上がります。子どもに多く見られます。 - 多形紅班型(たけいこうはんがた)
小さな赤い発疹が各部位に複数発生します。大人に多いです。
しもやけにならないための予防対策
手足を保湿し、皮膚のバリア機能を保つ
日頃から手足を保湿し、皮膚のバリア機能を整えておくことが重要です。
手の保湿ならワセリン系やヒルドイド系(ヘパリン類似物質)、足の皮膚が硬くゴワゴワしている場合は尿素配合のクリームを使用して保湿するのがおすすめです。
ヒルドイド系は、しもやけの初期症状にも使用できます。
手足を湿ったままにしない
しもやけの予防には手足を湿った状態で放っておかないことが大切です。手洗いの後は十分に水気を拭き取り、運動後などに汗で靴下が湿っていたら乾いたものに取り換えるようにしましょう。手足に汗をかきやすい方はしもやけになりやすいので、冬でも汗をかいたらそのままにせず、すぐに拭くようにしてください。
手袋や靴下で保温する
しもやけは手足と耳にできることが多いので、手袋や靴下、帽子などで保温しましょう。
巡りをよくして手足を温める
体の巡りをよくして手足を温めるには、漢方も効果的です。代表処方は当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)と四物湯(しもつとう)です。これらの漢方は、しもやけになってからも用いられます。
普段の入浴やマッサージで血行を促進するのもよいでしょう。
手足の冷えには温めるよりリラックスが効果的
加齢とともに起こる冷え症は基礎代謝が低下するのが原因ですが、「元気だが手足の先が冷えて辛い」という若い人の冷えは交感神経の緊張度が高いために末梢血管が収縮し血行が悪くなって起こります。ストレスや睡眠不足だけでなく、「頑張らなきゃ」と気合が入っていても交感神経の緊張度は上がります。
このタイプの冷えはストーブなどで温めてもなかなか温かくなりませんが、ほっとすると副交感神経が優勢になり手足もじんわり温かくなってきます。コーヒーなどのカフェイン飲料は血管収縮作用があるので、替わりにジャーマンカモミールやリンデンのハーブティがお薦め。どちらもリラックスを促し保温効果や血管拡張効果もあります。
スパイスや薬酒を暮らしに取り入れる
漢方では手足の先の冷えはエネルギーの素である「気」が隅々までうまく巡らないために起こると考えます。気の巡りをよくする生薬は陳皮(みかんの皮)、蘇葉(シソの葉)、烏樟(クロモジ)など香りのよいものが多いのはアロマセラピー効果もあるのかもしれません。
気の巡りをよくするだけでなく、お腹の中から温めるのも大事です。シナモン、カルダモン、フェンネル、クローブ、サンショウなどのスパイスにはお腹を温め、気の巡りもよくする薬膳効果があります。薬酒の中にはこれらの温める成分が豊富に含まれているものがあるので、手軽な冷え症対策として毎日少しずつとるといいでしょう。
養命酒製造の薬酒「ハーブの恵み」にはお腹を温め気の巡りをよくする生薬がたくさん含まれており、普段は元気だが手足が冷たい、風邪をひきやすい、疲れると食欲がおちやすいという方に向いています。年齢とともに下半身の冷えが強くなり食も細くなってきたという方には「薬用養命酒」の方が向くでしょう。
かゆいしもやけの治し方
出てしまったしもやけをすぐに治してくれる塗り薬というのは残念ながらありません。ビタミンEには血行をよくする作用があるので、昔からビタミンE入りの軟膏がよく処方されますが即効性は期待できません。しもやけは、予防が肝心です。日頃から保湿などで皮膚のバリア機能を整えておけば、軽くなりかけても回復することがあります。
軽めの初期症状にはヒルドイド系の市販薬を使うのもよいでしょう。
かゆみがひどい場合には、ステロイドを使用して治療した方がよいことがありますが、その要否や強さをご自身で判断するのは難しいので、その場合は、医療機関を受診してください。
この方にお話を伺いました
緑蔭診療所 橋口 玲子 (はしぐち れいこ)

1954年鹿児島県生まれ。東邦大学医学部卒。東邦大学医学部客員講師、および薬学部非常勤講師、国際協力事業団専門家を経て、1994年より緑蔭診療所で現代医学と漢方を併用した診療を実施。循環器専門医、認定内科医、医学博士。高血圧、脂質異常症、メンタルヘルス不調などの診療とともに、ハーブティーやアロマセラピーを用いたセルフケアの指導および講演、執筆活動も行う。『医師が教えるアロマ&ハーブセラピー』(マイナビ)、『専門医が教える体にやさしいハーブ生活 』(幻冬舎)、『世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典』(マイナビ)などの著書、監修書がある。