リンゴに似たさわやかな香りのカモミール。白く可憐な花姿の一方で、「苦難に耐える」「逆境で生まれる力」という、たくましい花言葉をもつハーブです。日本では、「カミツレ」という名称で知られています。
乾燥させた葉はハーブティーの原料になるほか、一緒に植えた花や野菜にアブラムシなど害虫がつくのを防いでくれるため、「コンパニオンプランツ」としてもよく使われます。
カモミールの栽培方法について、種まきから栽培するときの手順や注意点、保存方法について解説します。
種まきからはじめるカモミールの栽培方法
ジャーマンカモミールは、3~4月か9~10月に種まきをして育てます。
プランターや地面に直接種を植えるよりも、一度育苗ポット(植木鉢のような形をした、苗を育てる専用の容器)などで丈夫な苗を育ててから植え替える方が、病害虫の被害にあいにくく丈夫に育つのでおすすめです。
種をまいて苗を育てる
まずは、市販されている種まき用の土を購入しておきましょう。15~20℃の気温のときに種をまけば、1〜2週間ほどで発芽します。
〔How to〕
- 育苗ポットに種まき用の土を入れる。
- なるべく重ならないようにパラパラと種をまき、種が隠れるよう土を数ミリ被せる。
- 土の上から軽く指で押さえて固め、種が流れないように注意して水を与える。
※水を張った一回り大きい容器に育苗ポットごと沈めて底から吸水させるか、霧吹きで優しく水をかけましょう。 - 土が乾燥しないように水やりをしながら日当たりのよい所で管理し、葉と葉が軽くふれあうようになったら生長の遅い芽を取り除く。
- 本葉が5~6枚になったらプランターや地面に植え替える。
プランターで育てる
カモミールは、水はけのよい土を好みます。市販のハーブ用の土を使うか、赤玉土7:腐葉土3の割合で混ぜた土に化成肥料を混ぜたものを用意しましょう。
※赤玉土・腐葉土・化学肥料は、いずれもホームセンターやインターネット通販などで購入可能です。
〔How to〕
- プランターに鉢底石をしき、土を1/3ほど入れる。
※鉢底石:軽石や黒曜石などで作られた石。水はけをよくし、根腐れを防いでくれます。 - ポットから苗を取り出し、植えて水やりをする。
- 日当たりのよい場所で管理する。
※真夏(7〜8月)は午前中だけ日が当たる場所で管理しましょう。
地植えで育てる
カモミールを地植えで育てるなら、苗を植える1〜2週間前に土作りをはじめます。
雨によって酸性に傾いた土はカモミールが苦手とする土質なので、一度も手を加えたことのない庭土を使うときは、苦土石灰(くどせっかい)などを混ぜて中性から弱酸性へ酸性度合を弱めておきましょう。
※苦土石灰はホームセンターやインターネット通販などで購入可能です。
苗を複数植えるときは、15〜20cmほど間隔をあけて植えてください。
〔How to〕
- 苗を植える2週間ほど前に30cmほど庭土を掘り起こす。
- 掘りあげた土の3割ほどの腐葉土と、少量の化成肥料を混ぜる。
- 植える場所1㎡あたり苦土石灰をコップ1杯分(50〜100g)混ぜる。
- 土を2週間寝かせたあと、15~20cm間隔で植え穴を掘り、苗を植える。
カモミールの水やりと肥料
プランターは、土の表面が乾いたら底から流れ出すくらいたっぷりの水を株元に与えます。地植えなら苗を植えたときの1回だけで、その後の水やりは不要です。また、追加の肥料は不要です。
カモミールは乾燥に強い植物なので、根腐れで植物を枯らしたことがある方は、できるだけ乾燥させてから水やりをしましょう。
常に水やりをするのではなく、土が乾燥してから数日ほどは乾燥状態を維持した方が大きく生長してくれます。
カモミールの切り戻しや花の収穫、保存方法
切り戻し
切り戻しとは、伸びすぎた枝や茎を切り取って、株を短くし、植物の姿を整えることをいいます。新芽・実・花へ養分をまわして生長を促す効果があり、風通しをよくすることで病害虫の予防にもなります。
カモミールは湿気に弱く、茎葉が茂ることによる株の蒸れは防ぎたいところです。葉っぱ同士が重なりあっている部分があれば、茎や葉を切り取ってください。風通しをよくして病気や害虫の発生と、蒸れによる根腐れを予防しましょう。
収穫と保存方法
カモミールの花の中心にある黄色い部分を収穫して乾燥させれば、自家製ドライハーブの完成。3~5月の花を咲かせたあとが収穫の目安です。
咲き終えて花びらが落ちるか、反り返って中央部分が盛り上がってきたら、黄色の部分を摘み取ってください。水洗いをして、風通しのよい日陰で1週間ほど乾燥させ、シリカゲルなどの乾燥剤を入れた密閉できる容器に保存します。
乾燥させたカモミールは、カモミールティーにするほか、ポプリ(室内香)にしても楽しめます。
カモミール栽培での注意点
カモミールはアブラムシがつきやすい植物です。風通しが悪い場所や環境に置いたとき、窒素分の多い肥料を与えすぎたときに、アブラムシは特に発生しやすくなります。適度に切り戻しをし、日当たりのよい場所で乾燥気味に育てましょう。
また、アブラムシを見つけたら市販の殺虫剤を散布するか、牛乳スプレーなどの手作りの殺虫剤を吹きかけて、こまめな退治を心がけましょう。
アブラムシ対策に!手作り殺虫剤「牛乳スプレー」
牛乳スプレーは、牛乳の膜が乾燥したときに収縮する性質を利用して、アブラムシを圧死・窒息死させる自然農法の殺虫剤です。牛乳を霧吹きの容器に入れてカモミールの葉にまんべんなくかけ、牛乳が乾燥するのを待ちましょう。
牛乳は放置すると悪い臭いに変わるので、乾燥したら水を入れた霧吹きやジョウロで洗い流すのを忘れないようにしてください。
カモミールとコンパニオンプランツ
コンパニオンプランツはと、野菜や花と一緒に植えることでよい影響をあたえる植物のことを指します。カモミールは「植物のお医者さん」といわれ、コンパニオンプランツとしても活躍します。
特に相性のいい野菜はカブで、生育を促し、アブラムシを防いでくれる効果があります。植え付けのときに、カモミールの種を一緒にまくか、そばにカモミールを植え付けたプランターや鉢を置くとよいでしょう。
さらに、ルッコラやクレソンなどアブラナ科のハーブと寄せ植えにすると、風味がよくなるとも言われています。ハーブをよく育てる方は、寄せ植えにもぜひ挑戦してみてください。
カモミールはハーブティーやポプリとして楽しめるほか、コンパニオンプランツや、グランドカバー(ガーデニングで地面を隠すために植えられる植物)としても活躍します。育て方を知っていると、さまざまなところで役に立ちそうですね。
ジャーマンカモミールの効能や使い方については以下で詳しく紹介しています。併せてチェックしてみてください。
この記事は、「ハーブのつぼby Yomeishu」と「HORTI (ホルティ)」(運営:GreenSnap株式会社)が共同で制作しています。HORTIは、植物にまつわる困りごとを解決し、もっと手軽に楽しんでもらうためのWEBメディアです。