防風

防風[ボウフウ]

Saposhnikoviae Radix

ボウフウは、風邪を防ぐ重要な生薬として、お屠蘇(とそ)にも古くから用いられてきました。

防風
ボウフウSaposhnikovia divaricata Schischkin の根および根茎。セリ科の特有な香りを持つ植物です。夏から秋に白色の小花を咲かせます。
ボウフウの効果と効能

古書に「風邪を治療する最要のものだから」と名前の由来が説明されている通り、ボウフウには発汗・解熱作用があり、四季を通じて感冒による頭痛、悪寒、発熱や予防薬として使われます。痛みを止める作用もあり、関節炎・筋肉痛・身体疼痛・リウマチなどに用いられるほか、消炎・排膿作用があるので、湿疹や皮膚のかゆみ、皮膚が化膿する病気の場合には、薄荷(ハッカ)や荊芥(ケイガイ)などの生薬と合わせて使われます。

ボウフウの有効成分には、抗ウイルス作用、解熱作用、消炎鎮痛作用、血圧降下作用、胃粘膜を守る作用、関節炎を抑制する作用などがあることも薬理実験で報告されています。薬酒に合う生薬で、独特な香りの精油成分がアルコールによって効果的に引き出されます。

防風
ボウフウこぼれ話

ボウフウは、江戸時代に中国から苗が伝えられ、奈良県大宇陀の森野旧薬草園で、江戸幕府の命によって栽培されました。森野藤助にちなんでトウスケボウフウ(藤助防風)、ほかに宇田防風、種防風とも呼ばれています。ボウフウの名前がついた有名な薬に、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)があります。体の代謝を促す漢方薬で、皮下脂肪が多く、便秘がちの人によく合います。最近は、肥満を解消する薬としても使われています。

お正月に、一年の無病息災を願って飲むお屠蘇にも、ボウフウが使われています。屠蘇には悪鬼や邪気を払う力があり、元旦に飲むと疫病を防ぐと言い伝えられています。

icon_reference参考文献一覧

  • 朝日百科 植物の世界シリーズ 朝日新聞社
  • 漢方210処方生薬解説 昭和漢方生薬ハーブ研究会編 じほう
  • 漢方診療のレッスン 花輪寿彦 金原出版
  • 漢薬の臨床応用 中山医学院編 神戸中医学研究会訳・編 医歯薬出版
  • 薬になる植物百科 田中孝治 主婦と生活社
  • 漢方のくすりの事典-生薬・ハーブ・民間薬- 米田該典監修・鈴木洋著 医歯薬出版
  • 月刊漢方療法 Vol.1 No.4(1997-7) 滝戸道夫 薬草百話ベニバナ
  • 健康と病の民俗誌 医と心のルーツ 宗田一 健友館
  • 世界薬用植物百科事典 A.シェヴァリエ原著・難波恒雄監訳 誠文堂新光社
  • 中薬大辞典 上海科学技術出版社 小学館
  • 都薬雑誌 Vol.19 No.9 、Vol.26 No.2
  • 日本薬草全書 水野瑞夫監修・田中俊弘編集 新日本法規
  • 日本のハーブ事典 村上志緒 東京堂出版
  • 牧野和漢薬草大図鑑 北隆館
  • マムシ愛用 栗原愛塔 徳間書店
  • 身近な漢方薬材事典 鈴木昶 東京堂出版
  • メディカルハーブ 英国ハーブソサイエティ編 日本ヴォーグ社
  • モノグラフ 生薬の薬効・薬理 伊田喜光・寺澤捷年監修 医歯薬出版
  • 薬用ハーブの機能研究 健康産業新聞社

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