ニンジンは朝鮮人参や高麗人参とも呼ばれて、古くから不老長寿の万能薬として珍重されてきました。
古書ではニンジンについて、「五臓を補い精神を安らかにし、魂魄(こんぱく)を定めて驚悸を止め、邪気を払い、目を明らかにして心を開き智を益す。長く服用すれば身を軽くし寿命が延びる」と記載されています。胃腸系・呼吸器系を活性化するために欠かせない薬です。生体の持つ恒常性を保持して、免疫機能を高める効果があります。強壮強精・消化促進・下痢止め・精神安定・血糖降下・強心・保温・抗疲労など幅広い効能が期待できる、漢方の最要薬の一つです。
ニンジンの有効成分には、疲労の回復・記憶過程の改善・抗ストレス・消化管運動亢進・ストレス性胃潰瘍抑制・高血糖の改善・抗アレルギーなどの作用が報告されています。ニンジンはアルコールと相性がよいことでも知られ、人参酒は疲労回復や病気予防に日本や韓国で古くから愛用されています。
オタネニンジンの属名「Panax」はギリシャ語で「すべてを治療する万能薬」という意味です。江戸時代、徳川吉宗が国内での栽培を奨励してニンジンの種子を各藩に分け与えたことから、オタネニンジン(御種人参)の名がつきました。ニンジンの代用品として用いられる竹節人参はトチバニンジンの根茎、田七人参はサンシチニンジンの根です。野菜のニンジンはセリ科で、生薬のウコギ科のオタネニンジンとは別の植物です。
ニンジンの滋養強壮効果を利用した韓国料理に、参鶏湯(サムゲタン)があります。鳥を1羽丸ごと使い、中に高麗人参などを詰めて一昼夜煮込んだもので、食べれば病気知らずといわれています。