ケイヒは香りと味に特徴のある、古くから世界各地で用いられてきた生薬です。
ケイヒには、体の冷えを取り除き、血の巡りをよくする成分が含まれています。そのため、冷え症(冷え性)や冷えからくる肩こり・関節痛・腹痛・下痢・月経痛などの痛みにも効果が期待できます。養命酒では、体を温める作用にも貢献しています。
また、食欲不振や、胃腸のもたれ、胃の痛みなどを改善してくれる芳香性健胃薬としての作用もあることから、多くの胃腸薬にも配合されています。発汗解熱作用があり、風邪の予防や初期症状に効きめがあるため、風邪の特効薬として知られる葛根湯や桂枝湯にも使われています。主成分である精油成分は加熱すると揮発してしまうので、煎じるより薬酒で取り入れたほうが効率的です。
ケイヒの仲間は、世界各地で古くから香辛料や薬として用いられてきました。古代バビロニアの都市シュメールの楔形(くさびがた)文字で書かれた粘土板や、古代エジプトの古文書にもその名が記されています。漢方の本場中国へは、紀元前2500年頃までにインドや中央アジアからシルクロードを経由して伝わったとされ、中国の古い書物では「牡桂」「桂枝」「桂心」として記述されています。日本へは飛鳥時代に遣唐使によって唐文化の一つとしてもたらされ、奈良時代には中国から輸入品が、貴族など上流階級の間で使用されていたようです。正倉院の薬帳にも「桂心」としてその名が見られます。