ヤクモソウは母によい草として、日本の民間薬でよく用いられてきた生薬です。
ヤクモソウは、お血(血流障害)を除いて血行を促す、月経を整える、利尿して水腫を除くなどの作用がある婦人薬です。浄血・新陳代謝・補精の薬として、婦人の産前産後や血の道といわれる症状に用いられます。中国では、ヤクモソウの種子をジュウイシと呼び、ヤクモソウと同様に血流改善効果を期待して、不正出血・月経過多などに用いられます。目の症状にも効果があり、視野を明るくするといわれています。
ヤクモソウには、ルチンや結晶性アルカロイドのレオヌリンなどの有効成分が含まれているため、腎臓炎によるむくみにも効果のあることが実証されています。熱に弱いヤクモソウの場合、煎じるのではなく薬酒にして取るのが効果的です。
ヤクモソウの名の由来は、婦人の病気に優れた効力があるからとされています。欧米でも、Mother wort(母の草)と呼んでいます。古書に「ヤクモソウを久しく服すれば子をもうけしめる」と記載されているように、子宝の薬草としても利用されてきました。ヤクモソウはメハジキの地上部のことで、茎をまぶたに挟んで遠くに飛ばす「目弾き」遊びから名付けられました。学名の「Leonurus」は、ギリシャ語の「ライオンの尾」が由来です。長い花穂がライオンの尾に見えるためと伝えられています。
西洋でも、古くはローマ時代からヤクモソウの仲間は重要な薬でした。心臓によいハーブとされ、「心臓の暗い気を取り去り、楽しく快活で陽気にするためにはこれ以上優れたハーブはない」と、ハーブ療法の古書にも記載されています。