ハンピは、滋養強壮剤として、日本人に愛用されている生薬です。
ハンピは、マムシから取れる生薬で、古くから強壮強精、新陳代謝の良薬として知られてきました。漢方では強壮・解毒作用を期待して酒に漬け、全身の衰弱や内臓機能の衰え・できもの・しびれ・脳卒中後の麻痺・痔疾などに用います。民間療法では黒焼きやマムシ酒にして、疲労回復や冷え症(冷え性)などにも用いられています。最近の研究ではハンピの有効成分に、強心作用、血球数および血色素を増加させる作用があることがわかっています。
明治以降、マムシを滋養強壮剤として用いることが増え、現在でも多くの滋養強壮ドリンク剤に、ハンピチンキとして配合されています。薬酒でハンピを服用すると、ハンピ内のアミノ酸などのさまざまな有効成分が、アルコールによって効率よく抽出され、吸収されやすくなる利点があります。
南北朝時代の武将・楠正成は、軍人の心得として「五八霜(マムシの粉末のこと)を馬に食べさせると、大変元気がつくので10日、20日は餌を食わさなくても大丈夫だ」と語った一節があります。競馬では出走前に馬にマムシを与えると、馬力が出てよく走るという話もあるようです。
島根県には「伯州散(はくしゅうさん)」「伯耆の黒グスリ」という薬があります。これは、マムシの黒焼きに、鹿角(鹿のツノ)と津蟹(モクズガニ)の黒焼きを混ぜたもので、悪性のはれもの・化膿性の病気・慢性のおできに効く良薬として伝えられています。