天候の変化に伴い、めまいやだるさ、節々の痛みなどを感じることはありませんか? 天候の影響で起こる不調を「気象病」といいます。東洋医学で考える「水」の過多と自律神経の乱れが原因で、むくみ解消が改善の鍵に。気象病のなりやすさをセルフチェックし、対策を行いましょう。漢方医学と西洋医学の両方に精通する医師が解説します。
気象病とは?
天候の変化に伴う不調
天候が不安定な時季は、天気が悪くなるのに伴い、頭痛や肩こりがひどくなったり、めまい、だるさ、節々の痛みに悩まされたりする人が見られます。そうした天候の変化に伴う不調は、昨今、「気象病」と呼ばれるようになりました。
「気象病」とは、気圧や気温の変化によって引き起こされるさまざまな症状の総称ですが、医学的に病気として認められているものではありません。
症状の特徴は?
気象病の症状は多様です。頭痛、めまい、肩こりを感じる人が比較的多く、不眠や食欲低下が生じる人もいます。また、天候が変化する少し前から不調を感じ始める人が多いというのも特徴です。
これらの症状は実はその人がもともと抱えていた不調が天候の影響で悪化し、自覚できるかたちとなって現れるのだと考えられています。
気象病経験者は6割以上
気象病の症状や強さは人それぞれで、多くは一時的なもの。発症のメカニズムもわかっていない部分があります。そのため医療機関で症状を訴えても診断がつきにくく、適切な治療に至らない場合もあります。
しかし気象病経験者は全国平均で6割以上というデータもあるなど、天候の変化による体調不良を感じる人は決して少なくないのが実情です。
気象病のなりやすさをセルフチェック
男性より女性に多い
気象病の感じ方には男女差があり、どちらかというと女性に多く見られます。月経周期や更年期に伴うホルモンバランスの変化によって、気象の影響を受けやすいためだと考えられています。
気象病のなりやすさをチェック
以下の項目にチェックがつくほど、天候の影響を受けやすい体質だと考えられます。気象病に注意したほうがいい場合は、この後紹介する「今すぐできる気象病対策5選」 を参考に、セルフケアを行いましょう。
- 〔こんな症状があれば要注意〕
- □ 晴れた日と雨の日では体調が異なる
- □ 雨が降りそうなのがわかる
- □ 耳鳴りやめまいが起こりやすい
- □ 乗り物酔いをしやすい
- □ 季節の変わり目に体調を崩しやすい
- □ 冷え症だ
- □ ストレスが多い
- □ 天候によって気分の浮き沈みがある
- □ 大きなケガをしたことがある
「むくみ」と「血行不良」が改善の鍵
気・血・水の「水」の過多が原因の一つ
天候の影響でなぜ不調が現れるのでしょうか。そこには東洋医学において体を構成するとされる「気(き)・血(けつ)・水(すい)」のうち、「水」が大きく関係しています。
天気が崩れるときは気圧が下がります。すると血管にかかる圧力も減少し血圧はスムーズになりますが、気圧の変化が急激だった場合、血流の調節機能が対応できずに巡りが停滞することも。すると血液と体の組織との間で行われる水分代謝に乱れが生じます。
さらに雨の日は湿度も高くなるため、皮膚や呼吸器から必要以上の水分が体に入ってきます。これらのことから体内に水分が過剰にため込まれ「水」が過多になります。その結果生じるのがむくみや血行不良であり、加えていえば大きな寒暖差も自律神経を乱して、その原因になります。
むくみと血行不良の解消が第一歩
脳がむくんで周囲の神経を刺激すれば頭痛が起こり、肩周辺がむくんで血行が悪くなれば肩こりが生じます。耳の器官のむくみや血行不良は、耳鳴りの原因になります。
隠れた不調を見つけて改善するのは難しいかもしれませんが、悪化のきっかけとなるむくみや血行不良の予防と解消は気象病を改善する第一歩になります。
今すぐできる気象病対策5選
1:「衣食住」を見直す
まずは生活の基本である「衣食住」を見直し、体調管理の基盤を整えましょう。
【衣】体温調節しやすい衣類を選ぶ
季節の変わり目は体温調節を意識した衣服選びが大切です。例えば吸湿性と肌触りのよさを兼ね備えた綿、絹などの天然素材で、脱ぎきしやすいものがおすすめです。
【食】色の濃い野菜や果物をとる
ポリフェノールが豊富で抗酸化作用があるといわれるさつまいも、骨を丈夫にするカルシウムが豊富なチンゲン菜など、色の濃い野菜や果物が、体づくりに適しています。
【住】睡眠環境を整えてぐっすり
睡眠不足が「水」や「血」の流れを悪くし、むくみを引き起こすことがあります。寝具内の温度と湿度に注意し、睡眠環境を整えるのが◎。適度に暖かく通気性のよい羽毛の掛け布団や、吸湿性の高い面のシーツを使うなどして、寝具内を快適な状態に保ちましょう。
2:肩周辺のストレッチをして筋肉のむくみを解消
1回あたり10~15秒ずつ、無理のない範囲で行ってください。
肩の位置を正すストレッチ
- 手のひらを上にして肩の高さで両腕を出す。
- 高さを保ったまま、腕を左右にできるだけ大きく広げる。背中が丸まらないように注意し、肩や背中の筋肉を刺激する。
- 1と2を繰り返す。
首~肩の筋肉をほぐすストレッチ
- バンザイをするように手を上げ、小指が内側に来るように手のひらを後ろに向ける。
- 腕が耳に近づくようにぎゅっと寄せる。
3:深い鼻呼吸をする
鼻からゆっくり吸ってゆっくり吐く深呼吸を3~4回繰り返します。緊張やストレスの緩和につながり、「気・血・水」の巡りが改善されやすくなります。
4:爪のつけ根のツボを押して血流アップ
指先には毛細血管が密集しています。爪の両端、生え際から2mmほど下の部分にある「井穴(せいけつ)」というツボを刺激すると、血流が促されます。強すぎないように注意しながら1日数回、全ての指を順番に刺激しましょう。
5:簡単なことから運動を習慣にする
むくみ解消には運動習慣をつけることが大切です。まずはいすに座ったまま、足の曲げ伸ばしをするといった簡単なことから始めて、徐々に体を動かす習慣をつけていきましょう。
ここ数年、新型コロナの影響で外出機会が減ったことなどで運動不足になり、むくみや不調を抱える人が増えています。気象病に負けない体をつくるため、日々の生活や運動の習慣などを見直し、体調を整えていきましょう。
この方にお話を伺いました
藤田医科大学部客員講師 今津 嘉宏 (いまづ よしひろ)
愛知県生まれ。慶応義塾大学病院で外科医として働きながら漢方医学を学ぶ。さまざまな医療機関での勤務を経て、東京都港区に「芝大門いまづクリニック」を開業。西洋医学と漢方医学の両方に精通し、「頭のてっぺんから足の先まで」を合言葉に診療を行う。著書に『仕事に効く漢方診断』(星海社新書)など。