「なんだかやる気が出ない」「物事に集中できない」なんてことはありませんか? もしかしたらそれ、脳疲労のサインかも。
スマートフォンやテレビを見るのが日課になっている人は、使い方によっては脳が情報量に耐え切れずに疲れている可能性があります。簡単に大量の情報にアクセスしやすい今こそ、対策をしましょう。
脳疲労の原因
脳を疲れさせる原因のひとつが、スマートフォンやテレビからの情報過多。便利なスマートフォンも、頻繁に見ると脳に膨大な情報処理を強いるため、脳疲労につながります。その結果、物忘れが多くなったり、意欲や判断力が低下したり...。
家にいる時間が増え、よくスマートフォンやテレビを見てしまうという人は要注意。まずは、脳が疲れてしまう仕組みを知ったうえで、セルフチェック・対策をしましょう。
脳疲労のメカニズム
人は受け取った情報を、脳の前頭前野と呼ばれる場所で処理しています。その機能は大きく分けて2つ。反射的に情報を処理する「浅く考える機能」と、過去の情報や自分の考えを加味した上でその人らしい思考をする「深く考える機能」です。
実は、「浅く考える機能」が働いているときは「深く考える機能」はフリーズ状態に。絶えず多くの情報をインプットし続けると「浅く考える機能」ばかり働き、反射的に次から次へと情報の仕分けや処理をし続けるため脳はヘトヘトになってしまいます。
毎日を忙しく過ごす現代人は、日常的に「浅く考える機能」ばかり働かせるので、「深く考える機能」はほとんど使われず錆ついた状態に。その結果、2つの機能のバランスが乱れ、脳疲労に陥りやすくなってしまいます。
脳疲労が心身へ与える影響
受け取った情報を処理する前頭前野は、脳の司令塔として思考や理性、判断、意欲、創造といった人間らしい能力を司っているところでもあります。そのため、「浅く考える機能」と「深く考える機能」のバランスが乱れて脳が疲れると、それらの能力に影響することも。
具体的にどのような影響を及ぼすのか、詳しく見ていきましょう。
思考力、判断力の低下
物事を論理的に考える・選択するのが難しくなります。
コミュニケーション力の低下
会話の内容をうまく捉えられなかったり、会話のテンポについていけなくなったりします。
集中力の低下
注意力が散漫になり、家事や仕事などがはかどらなくなります。
意欲の低下
読むつもりで買った本が山積みになるなど、趣味や好きなことに対してもやる気が起きなくなります。
想像力や企画力の低下
ひらめきやアイデアなどが浮かばなくなります。
感情のコントロール力の低下
感情を抑制できず、訳もなく泣き出したり、カッと頭に血が上ったりします。
痛みに敏感になる
軽い肩こりや頭痛、腰痛などの痛みに敏感になる傾向があります。
原因不明の不調が起こる
便秘や下痢、頭痛など受診しても原因がわからない症状が現れます。
脳疲労セルフチェック
脳が疲れると、これまで紹介したようなさまざまな不調が起きてしまいます。自分の脳が疲れていないかセルフチェックをしてみましょう。
- ☑ 今まで楽しんでいた趣味よりもスマートフォンを利用する時間が増えた
- ☑ 知っている人の名前がすぐ出てこない
- ☑ 何かを取りに行ってその目的を忘れることがよくある
- ☑ 手持ち無沙汰なときや心配事があるとき、反射的にスマートフォンやテレビのリモコンを触ってしまう
- ☑ 慢性的な肩こりや頭痛、便秘や下痢など原因不明の不調がある
- ☑ 寝つきが悪い、または夜中に何度も目が覚める
- ☑ 最近イライラしやすく、怒りっぽくなった
- ☑ 何もする気が起きず、興味もわかない
当てはまる項目が多ければ多いほど脳が疲れているサイン。さっそく対策を行いましょう。
脳疲労を防ぐために注意すべきポイント
心配事や不安があるときは脳疲労の悪循環に注意
脳は「深く考える機能」を働かせるとき、膨大なエネルギーを必要とするため、疲れているときや心配事があるときほど、「浅く考える機能」に偏りがちに。
不安や心配事から逃れるためにスマートフォンやテレビを見ているつもりでも、それが脳の負担となり脳疲労の悪循環につながっている可能性があるので注意しましょう。
脳に入れる情報を吟味しじっくり考える時間を持つ
食事をとるのと一緒で脳にもキャパシティーがあります。脳に入れる情報の種類や目的、量、そして、自分にとって害がないかを吟味しましょう。情報の中身を吟味せず、「浅く考える機能」のみを働かせていると、その間は「深く考える機能」がフリーズするので、2つの機能のバランスが乱れてしまいます。
そのため、脳の疲れ解消には、「深く考える機能」を働かせることが重要。想像力やオリジナリティーを発揮できる趣味を取り入れたり、他者と一緒に何かに取り組んだりと、1日の中でじっくり考える時間を持つのがおすすめです。
脳疲労の解消法4選
1日30分ぼんやり時間をつくる
「深く考える機能」をサポートするのが、ぼんやり時間。1日30分程度の時間をとるのが理想です。忙しくて時間が取れない場合は5分ずつでよいので、何も考えずぼーっとする時間をつくりましょう。
無心になるのが難しいときはリズム運動がおすすめ。散歩や水泳をしたり自転車に乗ったりしながら頭の中で「1・2・1・2」とリズムをとると、自然と無心になれます。また、皿洗いや風呂掃除などの単純作業に没頭するのもよいでしょう。
手間のかかる方法を選ぶ
日常生活の中で自分の手足を動かして行う楽しみを少しずつ増やしていきましょう。
例えばメールではなくあえて手紙を書く、ネットで検索したことをあえて手書きでメモする、四季折々の行事やお祝い事を楽しむなどがおすすめです。
五感を刺激する体験をする
公園など自然の多い場所で五感を研ぎ澄まし、季節を感じながら過ごすのは脳の疲労回復に有効です。
また、自分が通っていた学校などを訪れてみるのも「懐かしい」という記憶や感情を呼び覚ますので、「深く考える機能」が働き脳の機能の活性化につながります。
満足感を得られる睡眠をとる
起床したときに、「疲れがとれた」という満足感がある睡眠を心がけましょう。
睡眠中の脳では、疲労物質の代謝や脳細胞の修復が行われているので、睡眠は体だけでなく脳にとっても必要な休養です。
ポイントは睡眠の時間ではなく満足感。適切な睡眠時間は人によってまちまちなので、長さだけにこだわると、かえってそれがストレスとなり、不眠の原因になることもあります。
加齢と共にまとめて眠る力も落ちるので、昼寝などを活用し、分割でとるのも有効。昼寝をするときは夜の睡眠を邪魔しないよう、午後3時までに昼寝を済ませるのがおすすめです。
疲労に効果的な睡眠方法は以下の記事もチェック。
情報過多により、脳が疲れてしまいやすい昨今。じっくり考える時間を持ち、「浅く考える機能」と「深く考える機能」をバランスよく使って脳疲労を解消しましょう。
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この方にお話を伺いました
おくむらメモリークリニック院長 奥村 歩 (おくむら あゆみ)
岐阜大学医学部卒業、同大学大学院博士課程修了。アメリカ・ノースカロライナ神経科学センターに留学後、岐阜大学医学部附属病院脳神経外科病棟医長併任講師、木沢記念病院勤務を経て、2008年おくむらクリニックを開院。設置した「もの忘れ外来」には全国から多くの人が来院し、これまでに10万人以上の脳を診断。脳神経外科医として認知症やうつ病に関する診察も多く経験し、日本脳神経外科学会(評議員)・日本認知症学会(認定専門医・指導医)・日本うつ病学会などの学会で活躍している。