島のハーブティー「ふくぎ茶」。クロモジを使った海士町の名産品を探る
NEW

島のハーブティー「ふくぎ茶」。クロモジを使った海士町の名産品を探る

日本海に浮かぶ隠岐諸島のひとつ、島根県海士町(あまちょう)。対馬暖流の影響を受けた豊かな海と、豊富な湧水に恵まれています。ここで作られているのが、「クロモジ」を使ったお茶「ふくぎ茶」です。

海士町の港

漫画『美味しんぼ』でも紹介されているふくぎ茶。その味わいやルーツを探るべく、海士町に伺いました。

町ぐるみの改革で生まれた名産品「ふくぎ茶」

ふくぎ茶3商品

飛行機で鳥取県の米子空港へ。そこからフェリーに揺られることおよそ3時間。隠岐諸島のひとつ、「中ノ島」の海士町に到着です。

人口は約2,300人。一時は人口減から島の存続を危ぶんだ時期もあったそうですが、町ぐるみの改革が功を奏し、今は活力に溢れています。

島の魅力を発信し、島生活を応援することでIターン移住者が増加。岩がきの養殖など島の特産品を活かした新しい産業も成功しており、これからの地方自治体の運営モデルとしても注目されている島です。

ふくぎ茶も改革の中で生まれた名産品のひとつ。島では当たり前の飲み物だったふくぎ茶ですが、Iターンで島の外から来た人の意見を取り入れて商品化が実現。ふくぎ茶の誕生によってクロモジの価値が再発見されました。

「ふくぎ茶」の香りと味わい

ふくぎ茶

抗菌や消炎作用、また胃腸の不調を緩和することで知られているクロモジですが、ここ海士町では「ふくぎ」と呼ばれています。福が来ると書いてふくぎ。クロモジが生活に身近な存在であったことを思わせる名前です。

ほんのりピンク色のふくぎ茶は、香ばしい香りと、すっきりした中にまろやかさが残る味わい。胃腸に優しく、またノンカフェインなので、飲む時間を問わないところも嬉しいですね。

丁寧な作業で生まれる海士町の「ふくぎ茶」

ふくぎ(クロモジ)の葉

島内にある就労支援施設「さくらの家」は、社会福祉法人だんだんが運営する施設です。さくらの家でふくぎ茶の製造を始めたのは2007年。

現施設長の本多美智子さんは、当時大分県からIターンで来ていた後藤隆志さんとともにふくぎ茶の商品化を進めました。

さくらの家のふくぎ茶は他のハーブを混ぜたりせず、クロモジだけでできています。豊かな味わいを生むために、クロモジの枝を太さで分類して配合を工夫。すっきりと飲みやすい味わいはこの繊細な作業の賜物でした。

ふくぎ(クロモジ)の枝を太さで分類している様子

その技術は貴重な新芽の葉やクロモジの花をプラスし、さらに香り高いと評判の「ふくぎ花茶」の開発にもつながりました。ふくぎ茶の事業は、施設の運営や利用者の収入に安定をもたらしています。

ふくぎ花茶

放牧の牛と共に育つふくぎ(クロモジ)

海士町の牛(隠岐牛)

島全体で牛を放牧している海士町。特産品の一つとして高級黒毛和牛の「隠岐牛(おきぎゅう)」を肥育しています。島の森は急な斜面も多いのですが、意外なことに牛は平気で歩き回ることができるようです。

クロモジを求め、けもの道を歩くと牛の糞がそこらに落ちていました。森の木々にとっては嬉しい肥料になります。おそらくクロモジもその恩恵を受けているでしょう。海士町には牛とクロモジが共存している珍しい環境がありました。

程よく日が当たるところにクロモジが育っているのは他の産地と同様でした。ただ、急な斜面の多い島の森での伐採は相当の知見と体力を必要とする、かなりハードな仕事とのこと。

海士町では事業としてふくぎ茶の持続性を高めるためにも、クロモジを採取しやすい環境をつくろうとしています。今は、種子を集めて発芽させ、苗木を育てている最中。それらをどのように育てていくかは、これからの試行錯誤になるそうです。

海士町の夕日

ふくぎ茶は、海士町以外にも下記の店舗で購入できます。

島根館:
離島キッチン:
※記事内の情報は全て、『クロモジ研究会だより2019年9月号(養命酒製造株式会社)』より参照しています。

SHARE

   
    
北欧、暮らしの道具店
絵本ナビスタイル
Greensnap
水戸市植物公園
コロカル
HORTI(ホルティ) by GreenSnap
TOP