免疫力を高めるために私たちができることを、食生活を中心に紹介します。風邪予防に役立つ栄養素や食べ物、簡単レシピも公開。日々の生活に取り入れてウイルスに負けない体づくりをしませんか?
免疫力アップには食事・食べ物が大切
免疫力が低下すると風邪などの感染症にかかりやすくなります。免疫力は、加齢、ストレス、睡眠不足、栄養バランスの乱れ、腸内環境の悪化、季節の変わり目、疲労などさまざまな要因で低下してしまいますが、生活習慣や食事の見直しによって高めることが可能です。
食生活では、免疫細胞の多くが集まっている腸の環境(腸内環境)を整えることが大切です。また、さまざまな食べ物から栄養素を摂取することで多彩な腸内細菌を育み、そのバランスを整えることも意識するとよいでしょう。
食事以外の風邪予防策については以下の記事で詳しく紹介しています。
風邪予防に効果的な栄養素と食べ物・飲み物
免疫力を高めるのに役立つ栄養素や食べ物を紹介します。
風邪予防に効果的な食べ物は、粘膜保護・免疫力を高めるビタミン(うなぎ、果物、きのこ類など)や、免疫細胞や抗体の材料となるタンパク質(肉、魚、卵,大豆など)です。
栄養素はそれぞれが助け合って体内での働きや吸収を高めています。免疫力を高めたいからといってここに紹介されたものばかりを食べるのではなく、日々の食生活をよりよいものにするための食材選びや調理、献立の参考にし、継続的に摂取するとよいでしょう。
ビタミンA:粘膜の健康を守りウイルスの侵入を防ぐ
感染予防に大切な皮膚や粘膜の健康維持に役立ち、ウイルスや細菌の侵入を防ぎます。また、免疫力を低下させる活性酸素を減らす、抗酸化作用ももちます。脂溶性ビタミンなので、油で調理すると吸収しやすくなります。
- 〔多く含まれる食品〕
- うなぎ、卵、レバー、緑黄色野菜など
ビタミンC:免疫力を高めウイルスの増殖を抑える
白血球には、体内に入ってきたウイルスなどの異物を処理する働きがあります。ビタミンCは、そうした白血球の働きを助けて免疫力を高めるのに加え、抗酸化作用もあります。ただし、熱には弱いビタミンです。
- 〔多く含まれる食品〕
- 果物、じゃがいも、れんこん、ピーマンなど
ビタミンD:免疫システムの働きを調整し感染症から体を守る
免疫作用を強化します。脂溶性ビタミンなので、油で調理すると吸収しやすくなります。また、適度に日光に当たることで皮膚でも生成されます。
- 〔多く含まれる食品〕
- きのこ類、鮭、イワシ、サバなど
ビタミンE:抗酸化作用で細胞を守り、血行を促して免疫機能の低下も防ぐ
抗酸化作用のほか、血行を促す働きがあります。免疫細胞は体温が上昇すると働きが活発になりますが、ビタミンEによって血行が促進されると、体温の低下が抑制されると共に免疫細胞が血液にのって全身を巡るようになり、免疫力がアップします。油と一緒に摂取することで吸収率が高まります。
- 〔多く含まれる食品〕
- アーモンドやゴマなどの種実類、うなぎ、緑黄色野菜など
亜鉛:免疫細胞の働きを活性化し風邪の回復を早める
日本人には不足しがちな栄養素の亜鉛。白血球に含まれ、免疫細胞を活性化させます。また、ビタミンAを粘膜にとどめる働きもあります。
- 〔多く含まれる食品〕
- 牡蠣、魚介類、牛肉、チーズなど
タンパク質:免疫細胞や抗体の材料となり強い体をつくる
免疫細胞や抗体を含む体のあらゆる組織や、体を動かすエネルギーの材料となるもの。タンパク質が不足すると体の熱を生み出し体温を維持する筋肉も、減少してしまいます。疲労回復にも役立ち、健康を維持するのに必要な栄養素です。
- 〔多く含まれる食品〕
- 肉、魚、卵、大豆など
乳酸菌やビフィズス菌:腸内環境を整え全身の免疫力をアップさせる
腸内環境を整える善玉菌です。乳酸菌には、リンパ球の一種でウイルスに感染した細胞などを排除するナチュラルキラー細胞や、体内に侵入したウイルスを処理するマクロファージを活性化したりする働きがあります。
- 〔多く含まれる食品〕
- ヨーグルトや乳酸菌飲料、漬物、みそ、しょうゆなど
ナチュラルキラー細胞について、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひこちらもチェックしてみてください。
水溶性食物繊維:腸内環境を整えて免疫力を高める
善玉菌のエサになり、善玉菌が増えて腸内環境を整えるのをサポートします。
- 〔多く含まれる食品〕
- 海藻類、果物、ごぼうなどの野菜、きのこ類など
鉄:酸素を運び免疫細胞をサポートする
赤血球に含まれるヘモグロビンを構成する成分で、免疫細胞の活性化に必要な酸素を届ける役割を担います。
- 〔多く含まれる食品〕
- 赤身の肉や魚、ほうれん草、ひじき、大豆など
セレン:抗酸化作用をもち、免疫機能の維持に貢献
自然界に広く存在する必須ミネラルで、抗酸化作用をもち、免疫機能の維持を助けます。
- 〔多く含まれる食品〕
- カツオ、マグロ、ナッツなど
オメガ3系脂肪酸:免疫機能を調整する
DHAやEPA、α-リノレン酸といったオメガ3系脂肪酸には、免疫の過剰な反応や炎症を抑え、免疫機能を調整する働きがあります。体内で生成できないため、食べ物から積極的にとる必要があります。
- 〔多く含まれる食品〕
- サバやイワシなどの青魚、アマニ油、エゴマ油
ポリフェノール:活性酸素を除去し、免疫細胞の健康を助ける
ほとんどの植物が自分の身を守るためにつくり出す、苦みや渋み、色素の総称です。よく知られているものは、アントシアニンやカテキン、カカオポリフェノール、ショウガオールなど。抗酸化作用があり、免疫細胞の健康を維持するのに役立ちます。
アントシアニンには、粘膜免疫の主役ともいえるIgAという物質を増やす働きがあることも分かっています。
- 〔多く含まれる食品〕
- ブルーベリー(アントシアニン)、緑茶(カテキン)、ココア(カカオポリフェノール)、生姜(ショウガオール)など
風邪予防のための食事・生活習慣のポイント
腸内環境を整える
腸は、免疫細胞の約7割が集中する体内最大の免疫器官です。腸内環境を整えることは免疫力を高めることとなり、風邪にかかりにくくなります。逆に腸内環境が乱れ悪玉菌が増えると、免疫力が低下し、風邪にかかりやすくなるだけでなく、便秘や下痢などといった腸の不調も起こしやすくなります。
腸内環境を整える鍵を握るのが、腸内細菌の中の善玉菌です。善玉菌が行う発酵によってつくられる短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)には、悪玉菌の繁殖を抑制したり、腸のバリア機能を高めたり、免疫機能を調整したりするなど、免疫力を高める働きがあります。
善玉菌を増やすには、その代表格である乳酸菌やビフィズス菌などを含む、ヨーグルトや乳酸菌飲料、漬物、みそ、しょうゆなどの発酵食品や、善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維を多く含む食べ物を積極的にとるのがおすすめです。
ただし、腸内細菌は善玉菌ばかりが存在すればよいわけではありません。善玉菌・日和見(ひよりみ)菌・悪玉菌がバランスよく存在し、かつ菌の種類が多様性に富んでいることが望ましい状態です。
腸活や腸内細菌については以下の記事で詳しく紹介しています。
温かい食事をとる
ウイルスは35~36℃の環境を好みます。また、免疫力は体温の上昇に伴い高まります。このことから、風邪予防には体を中から冷やさないことが大切だといえます。冷たい食事やドリンクは控え、スープや鍋料理などの温かな料理をとったり、生姜や根菜、寒い土地や冬にとれるものなど、体の温まる食材を取り入れたりするとよいでしょう。
水分補給を意識的に行う
風邪をひきやすい季節は空気が乾燥しがちで、体の中も水分不足に。口や喉が乾燥しているとウイルスも侵入しやすくなるため、ドリンクをこまめにとることや、鍋や汁ものを食事に取り入れることで、水分を補うようにしましょう。
栄養バランスのよい食事を心がける
栄養バランスが偏ると、健康維持に必要な栄養が不足して風邪をひきやすくなります。免疫力を高める栄養素の中でも、風邪予防のために意識してとるとよいのが、免疫細胞の材料となるタンパク質と免疫力を高めるのに役立つビタミンCです。
コンビニのお弁当で食事を済ませるときも、これらの栄養素を意識して、副菜やくだもの、乳製品などを添えるとよいでしょう。また、アルコールは免疫の働きを阻害するので飲み過ぎには注意してください。
生活のリズムを整える
食事だけでなく、睡眠や運動も見直して、生活のリズムを整えることも風邪予防の一助になります。睡眠は疲労回復や細胞の修復には欠かせないもの。質の高い睡眠をとることは免疫力を高め風邪をひきにくい体をつくるのに有効です。また、適度な運動は、血流を促して体温を高め免疫力アップを助けます。テレビ体操を行ってみたり、通勤時にエスカレーターでなく階段を使ったりするなど、すき間時間を見つけて無理のない範囲で体を動かしてみましょう。
風邪予防におすすめの簡単レシピ
タンパク質をチャージ! 鶏むね肉とブロッコリーのガーリック炒め
タンパク質が豊富で免疫細胞の材料になる鶏むね肉と、ビタミンC、β-カロテン、食物繊維を含むブロッコリーを、抗菌作用があり免疫力をサポートするにんにくを使って香り高く炒めた食べ応えのある1品です。
- 〔材料〕2人分
- 鶏むね肉 ...... 200g
- ブロッコリー ...... 1/2株(約150g)
- にんにく ...... 1片
- オリーブオイル ...... 大さじ1
- しょうゆ ...... 小さじ1
- 塩 ...... 小さじ1/2
- こしょう ...... 少々
- レモン汁(お好みで) ...... 少々
- 〔つくり方〕
- 鶏むね肉は一口大に切り、塩・こしょうを少々振る。ブロッコリーは小房に分け、沸騰したお湯で2〜3分下茹でして水気を切る。にんにくはみじん切りにする。
- フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れ、弱火で香りが出るまで炒める。
- 中火にして鶏むね肉を加え、表面が白くなるまで炒める。
- ブロッコリーを加え、全体をざっと炒める。
- しょうゆを回しかけて味を整える。
- 塩・こしょうで味を調え、お好みでレモン汁をかける。
免疫の働きを整える! 鮭ときのこのホイル焼き
タンパク質とオメガ3系脂肪酸、ビタミンDがたっぷりの鮭と、β-グルカンで免疫力をサポートするきのこを、ホイルで包んでふっくらと蒸し焼きにします。
- 〔材料〕2人分
- 生鮭(切り身) ...... 2切れ
- きのこ(しめじ、しいたけなど) ...... 100〜150g
- 玉ねぎ ...... 1/2個
- にんじん ...... 1/2本
- 紫蘇(あれば) ...... 2枚
- バター ...... 10g
- 塩 ...... 少々
- こしょう ...... 少々
- 酒 ...... 大さじ1
- レモン(お好みで) ...... 少々
- 〔つくり方〕
- 鮭は軽く塩・こしょうをふる。きのこは石づきを取り、小房に分ける。玉ねぎは薄切り、にんじんは細切りにする。
- アルミホイルを2枚用意し、それぞれの中心に半量のバターを置く。その上に鮭を置き、さらにきのこ・玉ねぎ・にんじんをのせる。
- 酒を全体にふりかけ、風味づけに紫蘇をのせる。
- ホイルの端を閉じて、蒸し焼きになるようにしっかりと包む。
- フライパンまたはオーブントースターで、中火〜180℃で約15分加熱する。
- ホイルを開けて火が通っていれば完成。お好みでレモンを絞ってさっぱりといただく。
さらに以下の記事で、免疫力を高める薬膳レシピを紹介しています。ぜひ試してみてください!
この方にお話を伺いました
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部 部長・一般社団法人 栄養まるごと推進委員会 理事長 濱 裕宣 (はま ひろのぶ)

給食栄養管理と臨床栄養管理をバランスよく機能させ、患者の立場に立った食生活の向上指導にあたる。「慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ」(出版文化社)、「その調理、9割の栄養捨ててます! 」(世界文化社)など、同病院栄養部監修による多くの健康レシピ本に関わる。「世界一受けたい授業」(日本テレビ)、「ヒルナンデス」(日本テレビ)、「めざましテレビ」(フジテレビ)など多くのメディアにも出演。また、栄養まるごとプロジェクト活動で学校給食での「皮ごとたべる文化」を広めている。