身近な不調である便秘。その原因はさまざまで生活習慣を見直したり、ツボやマッサージ、運動を取り入れたりすることが改善に役立ちます。また便秘の症状も「毎日お通じがあるかないか」だけでは判断できません。正しい便秘の知識と対策について、専門医が詳しく解説します。
便秘と考えられる4つの主な症状
4つの状態のうち、2つ以上を満たすのが便秘です。
症状1:便が硬すぎる
排便が毎日あったとしても、便が硬いと便通への障害となります。
症状2:力まないと出ない
力まないと出なかったり、排便に時間がかかるのは便秘の症状です。
症状3:残便感がある
たとえ量が少なくてもすっきりとして不快感がなければ問題ありませんが、残便感がある場合は便秘の疑いがあります。
症状4:週の排便回数が3回未満
便の回数は何をどれだけ食べたかに左右されるので、毎日排便がなくても心配しなくてもいいでしょう。ただし週の排便回数が3回未満の場合は便秘が疑われます。
便秘解消におすすめのツボ
体には便秘解消に有効なさまざまなツボがあります。指の腹を使って、いた気持ちいいくらいの強さでゆっくりと押してみましょう。
手のツボ(合谷・左神門)
- 〔合谷〕
- 親指と人差し指の骨が交わるくぼみの部分
- 〔左神門〕
- 左手首の小指側。骨と筋の間のくぼみの部分
腕のツボ(間使)
- 〔間使〕
- 手首の内側から手前に指5本を揃えたとき親指が当たる部分
脚のツボ(三陰交、足三里)
- 〔三陰交〕
- 内くるぶしに手の小指を当て、4本分揃えた時に人差し指が当たっている部分
- 〔足三里〕
- 膝の外側の皿の下にあるくぼみから指4本分下がった位置
お腹のツボ(天枢、大巨)
- 〔天枢〕
- おへそに人差し指をおき指3本を揃え、薬指が当たる左右のポイント
- 〔大巨〕
- おへそ横・下から指3本分の部分の左右のポイント
背中のツボ(便秘点、左大腸兪)
- 〔便秘点〕
- 肋骨の一番下の骨から指2本分下がり、背骨から外側に指4本分の部分
- 〔左大腸兪〕
- 骨盤の上のラインで体の中心から左に指2本分の部分
便秘解消におすすめのマッサージ
大腸押し上げマッサージ
- 〔やり方〕
- 腰の下に5cm程度の厚さの枕や座布団を敷いて仰向けになり、膝を軽く立てる。
- 左右の太もものつけ根に両手を当てる。
- お腹が少しへこむくらいの力で、大腸全体をユサユサと押し上げるイメージで両手をおへその下まで動かす。
- 同じ要領で中央・右側・左側と繰り返し、約1分行う。
便秘を解消・予防するための対策
対策1:規則正しい生活が基本
毎日同じ時間に寝て同じ時間に起床し、朝日を浴びることで睡眠のリズムを整え、規則的な生活サイクルを保つと、排便のリズムも整いやすくなります。
対策2:バランスのよい食事を心がける
栄養バランスを考えた偏りのない食事を心がけ、排出しやすい「いい便」をつくりましょう。特に朝食には、眠っている大腸を目覚めさせる働きがあります。軽くでもいいので欠かさないようにしましょう。
また便がコロコロしていて出しにくい人や、お腹が張らず便の回数が少ない人は、1日20gを目安に自分に合った量の食物繊維をとることをおすすめします。
ただし、腸の状態は人それぞれ。バランスのよい食事をとったりしたからといって全員が便秘解消できるわけではありません。必要な摂取量も一人ひとり異なります。食べ物の種類や量を加減しながら、何を食べると体調がよいか試してみることが大切です。
食べ物については以下の記事でも詳しく紹介しています。
対策3:シニア世代は意識して水分摂取を
便秘解消には水分の摂取も欠かせませんが、必要以上に増やす必要はないでしょう。ただし、注意が必要なのがシニア世代。食事の量が減るため、自然と摂取する水分量も減少してしまいます。意識的に水分をとるために、1日の中で飲む量やタイミングを設定しておくとよいでしょう。
対策4:適度な運動も効果的
アスリートには便秘が少なく、運動によって便が大腸を通過する時間が短縮され、硬い便や残便感が解消されることがわかっています。特に、テニスやゴルフ、ラジオ体操第一のような、お腹にひねりやストレッチを加える運動が有効です。続けることが大切なので、習慣にできる運動を選びましょう。
ジョギングやウォーキングは直接的な便秘解消効果はあまり期待できませんが、便秘の原因になるストレス解消につながるというメリットがあります。
便秘の原因はさまざまです。「治そう」という意識ではなく、「よりよい毎日を過ごすために自分の体に合うものを試してみよう」というポジティブな感覚で向き合えば、無理なく楽しく便秘の解消に取り組めますよ。
なお生活習慣の改善で便秘が解消されない場合、漢方薬が処方されることがあります。主な漢方薬については下記でご参照ください。
この方にお話を伺いました
国立病院機構 久里浜医療センター 内視鏡部長 水上 健 (みずかみ たけし)
1965年福岡県生まれ。90年慶應義塾大学医学部卒業。医学博士。横浜市立市民病院内視鏡センター長などを経て、2011年より現職。慶應義塾大学非常勤講師(便秘外来担当)。専門は大腸内視鏡検査・治療、過敏性腸症候群(IBS)・便秘の診断・治療。開発した無麻酔大腸内視鏡挿入法「浸水法」は国内外で広く導入されている。著書に『慢性便秘症を治す本』(法研)、『ねじれ腸 落下腸 滞った便がグイグイ出てくる 快うんマッサージ』(主婦の友社)など。