森を再生、クロモジを特産品に育て、町を活性化
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森を再生、クロモジを特産品に育て、町を活性化

南信州伊那谷の「いいじま森の会」(長野県飯島町)は、「自然保護・町の活性化・人の交流」を目的とし、クロモジの植樹・育成から、町の特産品としてクロモジの商品開発、流通に取り組んでいます。
会長の福田富穂さんと副会長兼クロモジ商品開発担当の伊藤秀一さんにお話を伺いました。

クロモジを活用、新しい森のスタイルを目指す

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自然豊かな傘山(からかさやま)山頂から望む中央アルプス

いいじま森の会は、「自然を想う」、「森といきる」を活動の合言葉にしています。
福田さんと伊藤さんがクロモジを知ったのは、ボランティアで里山整備などに携わるようになってからのこと。

「山登りが趣味で飯島町に移住し、檜の間伐後にその周辺に自生する多くのクロモジを見て、何かに活用できないかと感じました」と言う福田さん。

地元出身の伊藤さんは、同じく足元にあるクロモジに気付き調べると、近所に工場がある養命酒の原料の一つがクロモジであることを知ります。「養命酒駒ヶ根工場に伺い、クロモジについて勉強させてもらったんです。身近にある植物に芳香と機能性があることに驚き、活用しない手はないと思いました」。

もう1人加えて3人が意気投合し、20195月に本会を設立。町の財産を後世へ持続させるために新しい森のスタイル創りを目指しました。

クロモジ認知のため力を入れたPR

地元で調査するとクロモジの認知はわずか1割程。
そこで、地元メディアを中心に積極的にPRをしたそうです。

「クロモジは香りもよく、健康への期待もある素材なので、認知が上がれば良さは広まり、会員が増えれば認知も広がると考えました」、また「養命酒の原料【生薬名:烏樟(うしょう)】であることも手伝い、クロモジの香りを手にしながら、自信をもってPRができました。さらに士気も高まっています」と。
瞬く間に共感の輪は広がり、地元メディアでも数々取り上げられるようになりました。

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地元メディア表紙を飾る、会長福田富穂さん      副会長兼クロモジ開発担当の伊藤秀一さん

期待溢れるクロモジの商品化、面白さ&難しさ

クロモジの商品化に意欲が湧いたのは、数年前に長野県主催で行われた"山の感謝祭"イベントでした。
勉強のために参加した伊藤さんは、様々な団体、養命酒製造が出展するブースを見てクロモジ関連商品の多さに驚きつつ、自分たちもまずはやってみよう!と刺激を受けたと言います。

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2021年"山の感謝際"、「いいじま森の会」出展ブース

早速、モノづくりの経験があるメンバーをリーダーに、まずはクロモジ茶づくりを実施。
使用する部位や茶葉の作り方を試行錯誤した結果、飯島町に自生するクロモジは、葉と葉柄を焙煎するとコクが出て美味しいということが分かりました。これを特徴とし、お茶の専門業者の協力を得て、商品化に漕ぎ着けました。

次にクロモジ蒸留水の作成を試みました。
蒸留器を購入し、2年間で試行した蒸留はなんと50回!
データを取って研究を進めつつ、地元の化粧メーカーやアロマテラピー経営者にもアドバイスを受けたりし、商品化を果たしました。

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試験、商品化のために使用した蒸留機

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いいじま森の会のクロモジ商品

「自然素材は採取時期によって成分や芳香が一定しないのが難しいところですね。その半面、春先の香りは爽やかで夏場はぐっと濃くなるなどの違いが面白い。採取して23週間乾燥させて蒸留すると芳しい香りになることが分かってきました」と、伊藤さんは自然の奥深さを楽しそうに教えてくれます。

クロモジ茶をパウダー化、食への展開

クロモジ茶をパウダー化し生地に混ぜ込むと、バジルのようなハーブ香るクロモジパンが焼き上がり、地元で人気も上々。
現在、その他の商品開発にも鋭意取り組み中とのことで、食品としてのポテンシャルの高さを感じます。

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地元パン屋「チョコタン」で販売している、あんこ入りクロモジパン

町の交流・活性化、クロモジの育成と保護活動

「いいじまの森の会」もう一つの活動の柱は、クロモジの育成と保護です。
2020年5月には、町の協力を得て広さ1000㎡の育林場を整備し、別の場所で間引いた幼木を移植しました。
植樹作業を3回、植え付けたクロモジは合計100本。

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植栽イベントには信州大学の学生さんたちも参加

「育林場を設けることでクロモジを保護すると共に、育つ様子を町民にも見てもらい、皆で学び、研究し、深く知ってもらえたら嬉しいですね」と伊藤さん。

福田さんは、「森の再生を行う中で、この活動が地域経済の安定や町の交流・活性化につながることを実感しています。機能性が期待されるクロモジを保護し、森林セラピーなど健康づくりの取り組みをプラスすることで、ヘルシーツーリズムとして、さらには"健康長寿の延伸"に貢献できると感じています」と願いを込めて語ってくださいました。

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《お話を伺った皆さま》

いいじま森の会 会長 福田富穂さん

いいじま森の会 副会長 伊藤秀一さん

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