「冷え症は冬に気を付けるもの」と思っていませんか? 実は冷え症の人は夏バテをしやすいので、夏こそ注意が必要です。
体を温める力が弱く汗をかきにくい冷え症の人は、体の余分な熱を放出するのが苦手。そのため、体温調節にエネルギーを消耗してしまいます。さらに夏は、よく冷えた室内と外の温度差によって自律神経も乱れやすく、体調が戻りづらいことも。
気温が高く"冷え"の症状を自覚しづらい夏こそ、意識的にセルフケアを行いましょう。
夏バテを招く冷え症とは
冷え症とは、手や足先、上腕部など体の一部分が温まらず、冷えているような感覚が常に自覚される状態のこと。夏の冷え症の原因のひとつがクーラーです。
薄着でクーラーが効いた場所で長時間過ごし、さらに冷たい飲み物などをとっていると、体の表面だけでなく、内臓まで冷えてしまいます。体が冷えると、夏の暑さに対応するためにいっそうエネルギーを消耗します。
その結果、食欲が低下し、さらなるエネルギー不足で夏バテに。すると頭痛やめまい、倦怠感や疲労感といった夏バテの症状が引き起こされるのです。
また、充分な栄養がとれないまま、日々のストレスや疲れで自律神経が乱れると、血の巡りが悪くなって冷えが悪化するという悪循環にも陥ってしまいます。
冷えによる夏バテ! 症状セルフチェック
一度冷房で冷えると腕や足がしばらく冷たいままだったり、熱がこもりやすかったりということはありませんか?
以下のチェック項目にひとつでも当てはまった人は、今日からセルフケアを始めましょう。
生活習慣による冷え
☑ 緑茶やコーヒーを1日に何杯も飲む
緑茶やコーヒーに含まれるカフェインは、とり過ぎると体を冷やす原因になります。
ホットでも飲み過ぎにはご注意を。
- 〔セルフケア〕
- 体を温める作用のある番茶やほうじ茶、紅茶もバリエーションに加えましょう。
☑ 脇の下よりお腹の方が冷たい
冷たい食べ物、飲み物のとり過ぎで内臓が冷えています。
- 〔セルフケア〕
- 例えば、冷たいお蕎麦やそうめんを食べるときは、温かいお茶やスープも食べるなど、冷たい物は温かい物と一緒にとりましょう。
☑ 舌下静脈が太い
舌下静脈とは舌の裏にある紫色のくっきりとした2本の筋。体の冷えからくる血行不良はこの舌下静脈に現れます。舌の裏にある血管が太く目立っている場合は冷房の当たり過ぎや冷たい物のとり過ぎなどで体が冷えている証拠です。
- 〔セルフケア〕
- 入浴などで体を温め、血流を促しましょう。
この3つに当てはまっている人は、日ごろから体を冷やしすぎているかも。食事や入浴で体を温めましょう。
▶夏野菜で水分代謝&タンパク質で筋肉量を維持
▶夜は湯船に浸かって血行促進
筋肉量・運動量の減少による冷え
☑ 1分間片足で立っていられない、1時間歩くとヘトヘトになる
筋肉量が減少すると基礎代謝が下がり、生み出される熱の量も減ってしまいます。
- 〔セルフケア〕
- 1日8,000~10,000歩を目標に、脚全体の筋肉を使うように大股ぎみで歩きましょう。
ペースはゆっくりでOK!
このタイプの人は、運動量を増やすととともに食事の見直しを。
自律神経の乱れによる冷え
☑ 舌先が赤い
不眠や疲労によるストレスは舌先に現れます。舌先の赤身が強いのは、ストレスによって自律神経が乱れ、血行も悪くなっている証拠です。
- 〔セルフケア〕
- 趣味に集中する時間や、ストレッチなどでリラックスする時間をつくりましょう。
ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、血行が悪くなることで冷え症につながります。入浴やツボ押し、ストレッチを試してみてください。
▶夜は湯船に浸かって血行促進
▶覚えておきたい万能ツボ
▶ヨガやストレッチでリラックス
夏の冷え症を改善! 5つの簡単対策
冷えを軽く見て不調を放置していると、大きな病気につながることもあります。セルフチェックで自分の夏の冷えタイプがわかったらしっかり対策を。
今日からすぐできるかんたん対策をご紹介します。
夏野菜で水分代謝&タンパク質で筋肉量を維持
夏バテ予防のための食事のポイントは、水分代謝・血行促進とビタミンC・タンパク質をとること。
体にこもった余計な熱を下げるには、水分代謝を促す夏野菜を。生姜やにんにくなど体を温める食材と一緒にとると冷え過ぎを防いでくれます。
暑さや睡眠不足のストレスで消費されるビタミンCを補うにはスイカもよいでしょう。また、夏バテ予防にはタンパク質をしっかりとることも大切です。特に夏のエネルギー不足にはビタミンB1が豊富な豚肉がおすすめです。
夏こそインナーや重ね着を
腕や上半身の冷えが気になる人は、薄手のカーディガンやストールを持ち歩くとよいでしょう。足先は冷えやすいので、靴下やストッキングをはいて予防を。
お腹は冷房だけでなく、汗をかくことでも冷えてしまいます。丈が長めのインナーでしっかり守りましょう。薄手の夏用腹巻きもおすすめです。
冷房の強い場所で長時間過ごす際には、ひざ掛けや貼るカイロなども活用を。
夜は湯船に浸かって血行促進
暑いからとシャワーだけで済ませず、夜は40~41℃のお湯を入れた湯船に10分程度浸かって体を温めましょう。
- 〔おすすめ入浴方法〕
- 5分間胸まで浸かる
- 残り5分間は首まで浸かる
冷えが気になるときは生薬である当帰(とうき)入りの入浴剤がおすすめです。血行を促し、心身もリラックスして自律神経が整います。
その他、おすすめの入浴剤は以下の記事をご覧ください。
覚えておきたい万能ツボ
労宮(ろうきゅう)
手のひらの真ん中、くぼんだところが「労宮」。自律神経の働きを整え、体のだるさや冷えなどの症状を改善します。
合谷(ごうこく)
親指と人差し指のつけ根にある「合谷」。頭痛やストレス、冷えからくる肩こりなどを改善します。
どちらも反対の手の親指で痛気持ちいい程度の力加減で押しましょう。ツボについてもっと知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
ヨガやストレッチでリラックス
筋肉や関節をゆっくりと伸ばすヨガやストレッチは、自律神経のうちの副交感神経が優位に。体がリラックスするための血流がよくなり、代謝も上がります。
息を吸って準備をし、ゆっくり吐きながら伸ばしましょう。
寝る前に簡単ストレッチ
- 〔How to〕
- 仰向けに寝て片ひざを抱えこみ、胸に近づける
股関節やひざ関節を柔軟にする効果もあります。リラックス効果があるヨガポーズについては、以下の記事も参考にしてみてください。
冷えについてもっと知りたい方は以下の記事も要チェック。冷えを改善して、元気に夏を乗り切りましょう。
この方にお話を伺いました
野木病院副院長、筑波大学附属病院臨床教授 加藤 士郎 (かとう しろう)

野木病院にて東洋医学(漢方)外来を担当。筑波附属病院に漢方外来を開設すると共に学生には研修医を対象に教育活動も行う。医学博士、日本東洋医学会専門医・指導医。