森のハーブを石鹼に?クロモジなどの森林資源を活用した製品で林業再生
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森のハーブを石鹼に?クロモジなどの森林資源を活用した製品で林業再生

三重県大台町はユネスコエコパーク(※)に認定される自然豊かな町。

かつては豊富な森林資源を活かした林業が盛んでしたが、全国的に木材需要は減り続けています。そこで町の森林組合が新しい産業を模索しました。その理念は、多様な生物が息づく森を守りながら、森の恵みでくらしを豊かにすること。

試行錯誤の末に生まれた石鹸には、山の男たちと林業再生の物語がありました。

※ユネスコエコパークとはユネスコが認定した、生物多様性と人間の社会活動の両立を目指したモデル地域です。世界遺産が手つかずの自然を厳格に保護することを目的としているのに対し、ユネスコエコパークでは人間が自然を学び、文化や経済の発展に寄与することが期待されています。日本には「志賀高原」や「只見」など10地域が認定されています。

真っ白の直方体に、森の恵みを凝縮。

紀伊山地に座する、三重県多気郡大台町。人口約9,000人の決して大きいとは言えない町に、森のハーブを活かした魅力的な石鹸があります。

それが、地元で採れるクロモジや、ヒノキ、スギの油分を配合した「」。木々を育てた山水で蒸留した精油を使用しており、森の恵みから生まれる優しい香りと滑らかな肌ざわりが特徴。森林の力で、洗うだけで肌に潤いを与えます。

この石鹸は大台町産の杉の板に乗せられ、使う分だけ削って使います。その所作も含めた、静謐なたたずまいが魅力です。

森のプロによるクロモジ採取

宮川森林組合の中須真史さん、森正裕さん、高瀬和幸さん

宮川森林組合の中須真史さん、森正裕さん、高瀬和幸さん

大台町では、その多様な森林資材を活用するために、地元の森林組合と町とが協力して製品開発に取り組みました。

原料を採取してくるのは、森林組合で林業に関わってきた森のプロたち。中には山岳救助隊を務める方も。地形や生態系など森を知り尽くしているからこそ、森の豊かさを守りながらその恵みを活用できるのです。

植物を採取する際も再生がしやすいように工夫。例えばクロモジの場合はのこぎりで、丁寧に、地面に水平に切ります。そうすることで切断面下部から新しい芽が生え、数年後には再び使えるくらいに成長します。

スギやヒノキといった大木の需要は全国的に減っています。これまであまり使われてこなかった木々を適切に活かすことが森の発展につながると考えています。

森の恵みを、都会にも

クロモジディフューザー.jpg

多様な森の資源を活用するために、大台町でつくっているのは石鹸だけではありません。

クロモジや、タムシバ、ヒノキ、カナクギノキなどの精油もつくっており、写真はその4種の樹木の香りをブレンドしたディフューザー。樹木の枝が森のイメージを演出します。都会の、例えばマンションの一室でも森を感じさせるたたずまいが魅力。

これらの洗練されたデザインが大台町の製品の特長でもあります。豊かな自然と、その魅力を知る森のプロがいて、さらに製品化までコーディネートできたことで、森の力が具現化されました。

豊かな森と美しい水をたたえた大台町の今後に注目です。

大台町の自然

写真提供:大台町観光協会

この方にお話を伺いました

宮川森林組合 林業振興課 中須 真史、森 正裕、高瀬 和幸 (なかす まふみ、もり まさひろ、たかせ かずゆき)

森と林業に向き合ってきた3名。山に分け入り、どこにどのような樹木がどのように生息しているかを習得。樹木は生き物で、同じ種類でも季節や生息地、採取する部位によって香りや成分は異なる。剛健ともいえる原材料への知見が繊細な製品を生み出す原動力になっている。

※記事内の情報は全て、『クロモジ研究会だより2020年9月号(養命酒製造株式会社)』より参照しています。

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