貧血対策に良い食べ物・飲み物は?症状や原因を医師が解説
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貧血対策に良い食べ物・飲み物は?症状や原因を医師が解説

全身の倦怠感やめまい、耳鳴り、動悸、息切れなどを感じたら、それは貧血が原因かもしれません。特に生理によって血液を失う女性は貧血になりやすく、半数以上が貧血もしくは貧血予備群といわれています。

そこで、貧血になる原因とその症状を解説。貧血に良い食べ物&飲み物と、食事のコツや注意点など、貧血に効果的な対策をご紹介します。

〔目次〕
貧血の症状と原因とは?
貧血に良い食べ物と栄養素
貧血に良い飲み物
貧血対策の簡単レシピ
貧血対策の食事のコツ
貧血対策の食事の注意点
貧血に関するQ&A
セルフケアで貧血の症状が改善しない場合

貧血の症状と原因とは?

「貧血」とは、血液の量が少なくなることではなく、赤血球中の赤い色素であるヘモグロビン(血色素)濃度が低下している状態のこと。ヘモグロビンは酸素と結合して、全身に酸素を届ける役割を果たしているため、この濃度が低下すると動悸や息切れが現れるほか、重症になると爪や粘膜が弱ったり、心臓が弱ったりして体全体の老化が進むこともあります。

ヘモグロビンは鉄とタンパク質が結合してできており、貧血の中でも大半を占めるのが鉄不足による「鉄欠乏性貧血」です。女性は生理や妊娠・授乳で鉄分が失われやすく、男性よりも貧血になる割合が高め。過度なダイエットや偏食などの不摂生も貧血の要因になります。

〔鉄欠乏性貧血の原因〕
成長著しい思春期や妊娠・授乳期で鉄の需要が増加
鉄の摂取量の不足
生理、その他病気による出血で鉄が喪失

鉄欠乏性貧血はゆっくり進むことが多いので、自覚症状が出にくいもの。健康診断で指摘され、初めて気づく場合もあります。

階段を上るときに息が切れやすかったり、生理のときに頭痛がひどかったりするのは鉄欠乏性貧血のサインかも。以下のリストでチェックしてみましょう。

〔鉄欠乏性貧血チェック〕
□ 顔色が悪いといわれることがよくある
□ 倦怠感や疲労感、息切れがある
□ 頭痛が増えた
□ 氷をガリガリ食べたくなる
□ 爪が白っぽく平ら
(以下、女性の方向け)
□ 生理周期が短く、3週間に近い
□ 生理中、出血量の多い日が4日以上続く

3個以上当てはまる場合は、鉄欠乏性貧血の可能性があります。

貧血に良い食べ物と栄養素

貧血を改善するには、鉄分を豊富に含む食品、特に「ヘム鉄」を多く含む肉や魚介類と、「非ヘム鉄」を含む野菜類などをバランス良くとることが大切です。また、鉄分の吸収を助けるビタミンCや赤血球の生成に必要なビタミンB12なども、積極的に摂取したい栄養素です。

鉄欠乏性貧血の予防・改善は食事が基本です。毎日の食事で上手に取り入れていきましょう。

貧血予防には鉄分(ヘム鉄・非ヘム鉄)が大切

貧血予防には鉄分(ヘム鉄・非ヘム鉄)が大切

鉄は、赤身肉や赤身の魚など動物性食品に含まれるヘム鉄と、野菜や海藻などの植物性食品に含まれる非ヘム鉄があります。

圧倒的に体内に吸収されやすいのはヘム鉄ですが、非ヘム鉄の豊富な青菜類はビタミンCも多く、鉄はビタミンCと一緒にとることで吸収力がアップするので、栄養バランスを心がけながら効率よく補いましょう。

ヘム鉄を多く含む食べ物

ヘム鉄の含有量が多い食材は主に以下です。調理の参考にしてください。

豚レバー ...... 13.0mg
鶏レバー ...... 6.5mg
豚ヒレ(焼き) ...... 1.6mg
輸入牛肉もも(焼き) ...... 3.3mg
かつお(生) ...... 1.9mg
きはだまぐろ(生) ...... 2.0mg
卵(約2個分) ...... 1.5mg

※ 100gあたり出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

非ヘム鉄を多く含む食べ物

非ヘム鉄は、タンパク質を多く含む動物性食品と組み合わせることで吸収しやすくなります。

ほうれん草(ゆで) ...... 1.8mg
小松菜(ゆで) ...... 2.1mg
ひじき(ステンレス釜・ゆで) ...... 0.3mg
もずく ...... 0.7mg
納豆 ...... 3.3mg
絹ごし豆腐 ...... 1.2mg

※ 100gあたり出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

鉄分の吸収を助けるビタミンC・ビタミンB群・タンパク質

鉄分の吸収を助けるビタミンC・ビタミンB群・タンパク質

鉄分はビタミンCと一緒にとると吸収率が上がります。さらに造血に必要な栄養素をバランスよく摂取することが貧血改善には大切です。

〔造血のためにとりたい栄養素〕
ビタミンC ...... 鉄の吸収力をアップ。
タンパク質 ...... ヘモグロビンを構成する栄養素。鉄と同じようにきちんととりましょう。
ビタミンB群 ...... 葉酸(ビタミンBの一種)とビタミンB12は赤血球をつくる際に必要です。

鉄欠乏性貧血の食事での改善には時間がかかるので、特にこの食べ物というより鉄分、タンパク質、その他を継続してとることが大事です。

ビタミンを多く含む食べ物

ビタミンCは、主に野菜や果物、じゃがいも、サツマイモなどに多く含まれていて、特に赤パプリカや果肉が黄色のキウイフルーツ、ブロッコリーなどに豊富です。

柑橘系のジュースや、加熱によるビタミンCの損失が少ないピーマン、じゃがいもでとるのも手。ヘム鉄を含む肉類を摂取するときは、レモン汁をかけるとさっぱり食べられるだけでなく、鉄の吸収率もアップできるのでおすすめです。

また、葉酸を多く含む食材は牛レバー、豚レバー、卵黄、大豆、納豆、ほうれん草、ブロッコリーなど。ビタミンB12は牛レバー、豚レバー、魚介類、貝類、卵黄、チーズなどに豊富です。

タンパク質を多く含む食べ物

タンパク質が多い食材は、肉類、魚介類、卵類、大豆製品、乳製品などです。

特に牛乳やチーズなどの乳製品に含まれるタンパク質は、消化の過程でCPPという物質に変わり、鉄分の吸収をサポートします。

貧血に良い飲み物

貧血に良い飲み物としては、鉄分を豊富に含むネトルや、鉄分の吸収を助けるビタミンCが豊富なローズヒップなどを使ったハーブティが挙げられます。

ハーブティー

ハーブティー

血液の健康に有効とされる「ネトル」はノンカフェインで胃腸に負担をかけず、飲みやすいので日常茶に向いています。

鉄分やクロロフィルを多く含み、貧血予防にはもちろん、抗炎症作用もあることから「血液の見張り番」と呼ばれるネトル。利尿作用もあり生理前のむくみ改善のセルフケアにも。

ビタミンCが豊富なローズヒップとブレンドして飲めば鉄分の吸収もアップします。

ローズヒップのブレンドティーについて知りたい方はこちらをご覧ください。

貧血対策の簡単レシピ

鉄は吸収が良くないので、毎食に鉄の豊富な食材をとるのがポイントです。

卵の黄身はヘム鉄を含むので、朝は卵納豆と青菜の味噌汁がおすすめ。毎食とるのに便利なカツオの角煮とか、レバーペーストのような常備菜もいいですね。赤身肉のひき肉でキーマカレーをつくっておいて、パスタ、炒飯などに使い回すのもあり。

また鶏レバーや卵を使用した料理として、パテ・ド・カンパーニュのレシピもほかの記事で紹介しています。

非ヘム鉄を多く含むほうれん草も毎日の食事に多く取り入れたい食材です。そこで、ほうれん草に卵とハムのタンパク質を加えた食べ応えのある「ほうれん草のごちそうサラダ」のレシピをご紹介します。酸味のある風味豊かなドレッシングが食欲をそそります。

ほうれん草のごちそうサラダ

〔材料〕2人分
サラダほうれん草(※) ...... 60g
ベビーリーフ ...... 20g
ハム ...... 2枚
ゆで卵 ...... 1個
■オニオンチーズドレッシング
A
おろし玉ねぎ ...... 大さじ1
酢 ...... 大さじ1と1/2
塩 ...... 小さじ1/4
黒こしょう ...... 少々
B
オリーブオイル ...... 大さじ3
粉チーズ ...... 大さじ1/2

※ 普通のほうれん草の場合は茹でてから使用。

〔つくり方〕
ほうれん草とベビーリーフは水につけて汚れを落とし、パリッとさせる。ほうれん草は根元を落として3cmの長さに切る。しっかりと水気を切り、乾いたふきんに包んで冷蔵庫で冷やしておく。ハムは食べやすい大きさに切る。
ボウルにAを入れてよく混ぜてから、Bを加えて混ぜる。
2に1を入れて和え、器に盛ってゆで卵を飾る。

写真のゆで卵は黄身と白身に分けて白身は刻み、黄身はあら目のザルで押し出しています。輪切りや、櫛形切りにして添えてもよいでしょう。

下記記事ではその他にもほうれん草のレシピをご紹介しています。あわせて参考にしてください。

貧血対策の食事のコツ

食べ物で補えないときはサプリも活用

酢など酸味のあるものと合わせたり、よく噛んで食べたりすると胃液の分泌が促されて消化が良くなり、鉄も吸収されやすくなります。

食事でなかなか補えない場合は、鉄を強化した食品やヘム鉄のサプリメントを活用するのもよいでしょう。

貧血対策の食事の注意点

鉄分を摂取する際に注意が必要なものについてご紹介します。

牛乳の飲みすぎに注意

牛乳に豊富に含まれるカルシウムは鉄分と結合するので、大量に飲むと鉄の吸収を妨げます。特に乳幼児では「牛乳貧血」と呼ばれる貧血が起こりやすいので気をつけましょう。1日400ml程度までは問題ないでしょう。

コーヒー・緑茶・紅茶は時間を空けて飲む

緑茶や紅茶、コーヒーに含まれる「タンニン」は鉄分と結合するため、食事中や食後に飲むと鉄分の吸収を妨げてしまいます。食後2~3時間は避けましょう。病院で処方される鉄剤は吸収が良いようにできていますので、これらの飲み物を避ける必要はありません。

貧血に関するQ&A

貧血に関して多く寄せられる質問について回答します。

鉄分が一番とれる食べ物は何ですか?

鉄分が特に豊富な食材は、缶詰のあさりです。

上で解説したように、食べ物に含まれる鉄分には動物性食品に多く含まれるヘム鉄と、植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄があり、缶詰のあさりに豊富に含まれているのはヘム鉄。生のあさりやしじみにも多く含まれ、その他煮干しや豚・鶏のレバーなどにも豊富です。

一方、非ヘム鉄は、岩のりや焼きのり、乾燥きくらげなどの海藻類に豊富に含まれています。

貧血改善に即効性のある食べ物・飲み物は?

貧血改善に即効性がある食べ物や飲み物はありません。

鉄分は吸収率が低いため、食事からとる量を意識的に増やしてもとりすぎになることはなく、だからこそ体内での吸収率を高める工夫が大切です。

非ヘム鉄は、ビタミンCといっしょにとると吸収されやすくなるので、ビタミンCを含む野菜や果物などと食べるのがおすすめです。また、肉や卵などに含まれる動物性タンパク質も鉄分の吸収を助けます。

セルフケアで貧血の症状が改善しない場合

なお、食生活を見直しても貧血が続く場合、消化器系や痔による出血、子宮筋腫による過多月経などの可能性があります。また、鉄分の吸収には個人差があり、食事に気をつけていても生理のある間は鉄欠乏性貧血が続くという女性も少なくありません。セルフケアで改善しない場合は医療機関を訪れましょう。

鉄剤を飲むと吐き気や便秘、下痢などが起こるのでとるのを中止してしまう女性がいますが、それらの消化器症状を改善する吐き気止めなどを一緒にとれば続けられることが多いので、医師に相談して処方してもらいましょう。

鉄剤は吸収が良いので、少ない量でも効果的に貧血が改善します。体内に鉄分の貯金ができるまで鉄剤を服用し、その後は食事で維持するのがよいでしょう。鉄剤終了後も半年おきくらいには血液検査を受けて、また貧血になっていないかチェックしてもらうことをおすすめします。

この方にお話を伺いました

緑蔭診療所 橋口 玲子 (はしぐち れいこ)

橋口 玲子

1954年鹿児島県生まれ。東邦大学医学部卒。東邦大学医学部客員講師、および薬学部非常勤講師、国際協力事業団専門家を経て、1994年より緑蔭診療所で現代医学と漢方を併用した診療を実施。循環器専門医、認定内科医、医学博士。高血圧、脂質異常症、メンタルヘルス不調などの診療とともに、ハーブティーやアロマセラピーを用いたセルフケアの指導および講演、執筆活動も行う。『医師が教えるアロマ&ハーブセラピー』(マイナビ)、『専門医が教える体にやさしいハーブ生活 』(幻冬舎)、『世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典』(マイナビ)などの著書、監修書がある。

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