ふとした瞬間に香りを嗅いで懐かしい思い出がよみがえったり、ほっとした経験はありませんか?
香りは本能的な行動や情動を支配する大脳辺縁系と呼ばれる部分に、一瞬でダイレクトに伝わります。
さらに香りの情報が脳の視床下部に伝わることで、自律神経系、ホルモン系、免疫系という体の3大自動調節機能に影響を与え、気分をリラックスさせたり、ストレスを軽減したりして、心身のバランスを整えてくれます。
シーンによって香りを使いこなして、香りの効果を感じて下さい♪
- 〔目次〕
- 香りの種類と効果
- 症状別!香りの活用法
香りの種類と効果
ハーブ系の香り
ハーブの多くはシソ科とセリ科に属し、清涼感のある香りが特徴です。集中できないとき、疲れを感じるときに使用すれば、頭をすっきりさせ、精神を鎮めて落ち着きをもたらしてくれるでしょう。
代表的なもの
シソ科:シソ・バジル・セージ・オレガノ・タイム・マジョラム・ミント・ローズマリー
セリ科:セリ・三つ葉・パセリ・セロリ・香菜
その他:レモングラス・クレソン
和洋のハーブ類を日常的な料理にたっぷり使い、香りを食べましょう。新鮮なものがなければ、瓶で売られている乾燥パセリなどでもOKです。ハーブビネガーやハーブオイルを常備しておくのもおすすめです。(ハーブオイル、ビネガーの作り方についてはこちら)
ハーブティーはカフェインを含まないものが多く、安全性も高いので取り入れやすい活用法です。飲むときはまず湯気を十分に吸いこんで湯気の中に含まれる揮発成分を吸引しましょう。市販のティーバッグなら手軽に始められそうです。
柑橘系の香り
みずみずしく爽やかな香りが特徴。すっきりしないとき、気持ちの切り替えができないときの心身のリフレッシュに最適。記憶力や集中力を高める効果もあります。
代表的なもの
みかん・オレンジ・レモン・ライム・シークヮーサー・グレープフルーツ・柚子・かぼす・すだち・金柑
オレンジジュースなど、柑橘系のジュースを朝の目覚めの1杯にぜひ。市販のジュースに自分でレモンなどをキュッと絞って加えれば、より新鮮な香りが楽しめます。
芳香成分は柑橘類の皮の部分に多く含まれているので、皮を削って料理に加えるのは最高のとり方。干した物を刻んで使うのもおすすめです。
食べるには酸っぱすぎる夏みかんなどは、お風呂に入れて。軽く干し、芳香成分が出やすいようにざっくり切って入れるのがポイントです。
樹木系の香り
森林の中にいるような清涼感のある香りです。神経を鎮め、気分をリフレッシュしてくれます。
森林浴はリフレッシュに最適。緑の多い公園で過ごすのも立派な森林浴です。ヒノキ製品や入浴剤でも森林浴気分が楽しめます。
代表的なもの
ヒノキ・クロモジ・クスノキ・ユーカリ・ティートリー
フローラル系の香り
華やかで甘い香りが特徴です。気持ちを明るくする効果に加え、幸福感やリラックス効果が得られます。
代表的なもの
梅・桃・バラ・ジャーマンカモミール・ジャスミン・ラベンダー・ゼラニウム
部屋や玄関に季節の香る花を生けましょう。空間のアクセントになります。花を生ける行為そのものも気持ちをアップさせます。
番外編:スパイス系の香り
身近な胡椒や、近年の激辛ブームによって注目を集めている花椒など、スパイス系の香りには、食欲増進だけでなく気分転換の働きもあり、さらに胃液の分泌や胃腸運動を促す効果が期待できます。また、食材の臭み消しや防腐効果を持つスパイスもあります。
代表的なもの
胡椒・花椒・カルダモン・シナモン
症状別!香りの活用法
朝起きられない、眠い・だるい...
フルーティーでフレッシュな香りのスイートオレンジの精油、もしくは覚醒効果や気分をシャンとさせる効果のあるローズマリーの精油を、洗面器に1滴垂らして洗顔を。シャキっと目が覚め、気分も明るく前向きになります。
仕事や家事に追われて疲れがたまってきたとき...
コーヒーやドリンク剤の代わりに、夕方はノンカフェインのハーブティーを。カモミールで一息つけば芳醇な香りが心身共にリラックスさせてくれます。
暑くて気だるいとき...
脳を活性化させる効果のあるミントのボディ・ミストを。シュッと吹きかけると汗のニオイやべたつきを抑えるだけでなく、爽やかなメントールの香りで心身共にシャキッとさせてくれます。
ミントのボディ・ミストは薬局などで手軽に買えるハッカ油で作れます。メンソールの香りは虫除けにも期待できるため、夏に嬉しいアイテムです。
詳しい作り方は下記をご覧ください。
風邪の予防や症状の緩和に...
グラス1杯の水に、ハッカ油を1滴いれた即席うがい薬を。ハッカ油の抗菌作用によって、風邪予防と症状緩和の手助けをしてくれるうがい薬は、メンソールの香りで頭重感や倦怠感もすっきりさせてくれます。
ハッカ油が混ざりやすいように、水は常温の水かぬるま湯を使うことがポイントです。
花粉症などによる鼻づまりがつらいとき...
清涼感のあるミントのハーブティーを。スーッとした香りがすっきりした気持ちにさせてくれます。辛い症状が続いて集中できないときやイライラするときなどにおすすめです。
また、抗菌・抗ウイルス作用があるティートリーやユーカリの精油を、ホホバオイルなどのキャリアオイル10mlに2滴ほど垂らして胸元に塗ると、香りによって鼻づまりが和らぎます。
※精油は大変高濃度のため、原液を直接肌につけたり、口にしたりするのは厳禁です。
「いい香りだな」と感じると、それだけでポジティブな気分を引き出し、全身に好影響を与えます。普段何気なく食べたり飲んだりしているものも「自分で自分を元気にする」という意識をもってとれば、より大きな健康効果につながります。
この方にお話を伺いました
緑蔭診療所 橋口 玲子 (はしぐち れいこ)

1954年鹿児島県生まれ。東邦大学医学部卒。東邦大学医学部客員講師、および薬学部非常勤講師、国際協力事業団専門家を経て、1994年より緑蔭診療所で現代医学と漢方を併用した診療を実施。循環器専門医、小児科専門医、認定内科医、医学博士。高血圧、脂質異常症、メンタルヘルス不調などの診療とともに、ハーブティやアロマセラピーを用いたセルフケアの指導および講演、執筆活動も行う。『医師が教えるアロマ&ハーブセラピー』(マイナビ)、『専門医が教える体にやさしいハーブ生活 』(幻冬舎)、『世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典』(マイナビ)などの著書、監修書がある。