厳しい寒さが和らぎ、梅の花が咲き始めると、モノクロの景色がぱっとカラフルに色づき春の到来を予感させます。梅の開花はかぐわしい香りとともにやって来る、心弾む季節のお知らせです。
梅雨になると花を落として成長する梅の実も、梅干しや梅酒として古くから利用され、日本人に親しまれてきました。今回はそんな梅の実に隠された、私たちの身体に嬉しい様々な効果や効能をご紹介します。
梅の効果・効能
梅の効果・効能① 「食中毒予防」
梅干しには、食べ物が腐るのを遅らせる働きがあるため食中毒予防に効果的です。これは梅干しに含まれるクエン酸が、食中毒の原因となる細菌の増殖を抑えるためであり、科学的にも証明されています。昔から食べられている「日の丸弁当」は食中毒予防の観点から、合理的な食べ方かもしれません。
梅の効果・効能② 「胃腸への効果」
梅には殺菌効果や整腸作用などがあり、古くより民間で使われてきました。熟す前の梅の実を燻(いぶ)したものが「烏梅(ウバイ)」という生薬で、胃腸の調子を整えるのに役立ちます。
※妊娠中の大量摂取は避ける。
梅の効果・効能③「カルシウムの吸収促進」
梅に含まれるクエン酸には、カルシウムの吸収を促進する効果があります。カルシウムは吸収されにくい栄養素であり、日本人は慢性的なカルシウム不足だと言われています。そこで梅を日々の食生活に取り入れることでカルシウムの吸収率を高め、カルシウム不足が原因で起こる骨粗しょう症予防も期待できます。
梅の効果・効能④ 「動脈硬化予防」
梅干しは、動脈硬化の予防にも期待ができます。これは梅干しに、動脈硬化の原因となる血圧の上昇を抑える働きがあるためです。
梅の効果・効能⑤ 「疲労回復効果」
梅に含まれるクエン酸は、疲労回復にも効果的です。クエン酸はエネルギーの元を作り出す回路をスムーズに動かす作用を持っているため、疲労を蓄積しにくくする働きがあります。疲れがたまっている体には梅干しがおすすめです。
梅の効果・効能⑥ 「食欲増進効果」
梅の酸味成分には、唾液の分泌を促し食欲を増進させる働きがあります。そのため梅干しを使った料理は、夏バテなどで食欲が落ちてしまったときに特におすすめです。レシピは次の記事を参考にしてみてください。
また、食前酒として梅酒を飲むことも食欲増進に期待ができます。これはアルコールの作用で胃液分泌が促進されるためです。
梅の花酒の作り方
梅の実ではなく、梅の「花」でお酒をつくるのも一興です。つくり方は梅酒と同じで、果実酒用のホワイトリカーに無農薬の梅の花を3カ月ほど漬けるだけ。花びらを浮かせて彩りを添えたいですね。
早春のおでかけは梅園へ♪
開花期には近隣の梅林へ足を運ぶと、よりいっそう春の訪れを感じることができます。梅園は、関東なら小田原の曽我梅林や水戸の偕楽園、関西なら大阪城梅林や、京都の城南宮があります。
特に、偕楽園は日本三名園のひとつで、約百品種3千本もの梅が開花するさまは見事です。偕楽園では6月限定で実梅を販売しているので、2月に目で楽しんだ梅を使って梅干しやジャム、梅酒などをこしらえるのもいいですね。梅の花でもお酒がつくれますから、ぜひお試しを。
自分で加工した梅ならば暮らしの一年のサイクルに定着させやすく、健やかな体を保つ一助となるはずです。
偕楽園
梅のこぼれ話
花を落とした梅が実をつけて急成長するのは梅雨。完熟したら実は地面に落ちますが、青から黄色に変わる実の色によって、使う用途が変わります。青梅はジュースやシロップにすると澄んだ色に仕上がりに。実のコリコリとした歯ごたえも楽しめます。
完熟したものは赤シソ、塩を用いて梅干しにします。ちゃんと浸かったものを食べると、ぷっくりとした肉質に旨みが凝縮され、一粒でごちそう感さえ漂います。
この方にお話を伺いました
養命酒製造株式会社 クロモジ推進室フェロー 丸山 徹也 (まるやま てつや)

1958年長野県生まれ。1981年静岡薬科大学薬学部卒業後、養命酒製造株式会社入社。中央研究所研究部長、商品開発センター長を歴任。2020年よりクロモジ推進室フェロー。薬剤師。