料理に独特の香りと食感を添えてくれる香味野菜・みょうが。あまり手がかからずプランターでも育てやすい野菜なので、自分で育ててみるのはいかがですか?
みょうがの旬と収穫時期、栽培方法をご紹介。栽培するときの手順と育て方のポイント、収穫&保存の方法、そしてよくある栽培の疑問点についても解説します。
みょうがとはどのような野菜?
みょうがは日本を含むアジア東部を原産とする香味野菜。3世紀末に書かれた「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」にもその名が見られるなど、古くから全国に自生しています。
現在は日本各地で栽培されており、主な産地である高知県では90%以上のシェアを誇ります。台湾や韓国などでも生育が確認されていますが、食用の野菜として栽培している国は日本以外にないと言われています。
一般的にみょうがとして食べられているのは、地下茎から直接出てくる花蕾(からい)(花の蕾のこと)で、苞葉(ほうよう)に包まれて膨らんでいて、苞葉の間から花冠(かかん)(花びらのこと)を出します。「花みょうが」「みょうがのこ」とも呼ばれ、いずれも夏の季語となっています。「ハナミョウガ(花茗荷)」と呼ばれる別植物があるので注意しましょう。
みょうがの旬
みょうがは1年を通して流通していますが、旬は7〜10月。その中でも7〜8月頃に収穫されるものを「夏みょうが」、9〜10月頃に収穫されるものを「秋みょうが」と呼びます。
また、春に地上に伸びてくる葉鞘を、光を当てずに柔らかく育てた「みょうがたけ」も食用になります。
みょうがの栄養成分とその効果・効能については以下の記事を参照してください。
みょうが栽培で準備するものやコツとは?
みょうがの生産農家ではハウス栽培と露地栽培で周年生産していますが、一度植えてしまえば数年収穫できる上にあまり手のかからない野菜です。害虫被害も少ないので、家庭菜園の初心者にもおすすめです。
ただし、地植えする場合は広がり過ぎに注意が必要です。ここではその心配がなく集合住宅でもチャレンジできるプランターでの栽培方法をご紹介します。
地下茎(ちかけい)
みょうがの繁殖は種ではなく、根のようにも見えて横に伸びる地下茎(ちかけい)を植えつけて育てるのが一般的です。
園芸店やホームセンター、通販などで購入が可能。しっかりと太く、根が多くついているものがおすすめです。
品種は多くなく、夏みょうがの早生種、秋みょうがの中・晩生種があります。
プランター
地下茎で殖える野菜なので、プランターは60㎝程度の長さが必要です。株間を開けて風通しをよくするため、大き目のものを選びましょう。
培養土
園芸店やホームセンターで販売されている野菜用の培養土を使用します。買うときは袋に印刷されている配合表を確認し、水持ちがよい軽くない土を選ぶようにしましょう。
鉢底ネット
鉢の底に鉢底用のネットを敷いておくと、土の流出や虫の侵入を防ぐことができます。
なお、乾燥しやすく、容積の限られているプランターでは、水はけと通気性をよくするために用いる軽石などの鉢底石は敷きません。
わら、もみ殻、腐葉土など
わら、もみ殻、腐葉土などがあるとよいかもしれません。地下茎の植え付け後、乾燥を防ぐために土を覆うマルチングとして使用できます。
特に、もみ殻は、ミョウガタケ栽培で葉鞘に光を当てないように株元に被せるのに役立ちますし、マルチとして少し厚めに敷き詰めることで、みょうがの花蕾の苞葉(ほうよう)と苞葉の間に土が入り込むのを防ぐことができます。
みょうがの栽培方法
準備が整ったらいよいよ栽培です。ミョウガの基本的な育て方をご紹介します。
植え付け
みょうがの植え付けの最適時期は3〜5月頃です。地下茎が長い場合は15㎝程度に切り分けます。
プランターに上10cmくらいのスペースを残して土を入れます。次に地下茎をその上に芽が上になるように置きます。数本ある場合は等間隔に並べます。地下茎を置いたらその上に土を5cmくらいかけます。保湿のためにもみ殻を敷くときは土3cm、もみ殻2cmくらいで敷き詰めます。
その後、水をたっぷり与えます。わらなどがあれば上から覆うとよいでしょう。
水やりと追肥
土の表面が乾燥したら水やりをしましょう。
2年目の春先3月頃に牛糞堆肥と土を半々に混ぜたものを土の上に載せます。もみ殻などを敷いている場合は、それらを一端よけて敷き、その上にもみ殻などを被せます。牛糞堆肥はゆっくりと長く効く緩効性肥料です。土の上に2~5cmくらい敷き詰めるとよいでしょう。
また、栽培途中で葉の色が黄ばんできたら、窒素が豊富で、即効性のある油かすを、あらかじめ土と半々に混ぜてから、土の上に一握りの量の2~3倍量を施します。
ミョウガタケ栽培
みょうがの葉鞘も食べることができます。そのままでは固いので、ホワイトアスパラガスやウド、ハマボウフウ、芽イモなどと同じように、株元にもみ殻などで覆って光を遮ります。地面から葉鞘が顔を出してきたところに、山のようにもみ殻を積みます。もみ殻の頂上から葉鞘が顔を出してきたら、もみ殻を除けて地際で切って収穫します。収穫したミョウガタケは花蕾のみょうがと同じように料理に用います。春から秋までの間、花蕾の出ない時期にもみょうがを食べられるのでおすすめです。
収穫
植え付け後、2年目から本格的に収穫が可能になります。
収穫時期は、夏みょうがが7〜8月頃、秋みょうがが9〜10月頃。
花穂がふくらみ、中が締まってきたら、根元をねじり切るようにして収穫します。クリーム色の花が咲くと風味が損なわれるので、花の咲く前に収穫しましょう。
翌年への準備
多年草なので、翌年以降も収穫できます。
冬になると地表に出ている部分は枯れますが、そのまま放置しても、株元から切ってしまってもOK。冬の間も定期的に水やりをして、土を完全に乾かさないようにしましょう。
長く栽培していると、芽の数が増えたり地下茎が混み合ったりしてくるため、2~4年に1度くらいのペースで植え替えを行います。適しているのは、新芽が育ち始める2〜3月頃です。
その際に古くなった根や弱っている部分は取り除き、大きく育った地下茎は切り分けるとよいでしょう。
みょうがの育て方ポイント
みょうがは湿気を含む土を好みます。建物の北側や樹木の下など、完全に日光を遮らない半日陰で風通しのよい場所で育てましょう。
日当たりがよすぎる場合は、適度に日が当たるように日よけを設けるのがおすすめです。
また、みょうがは乾燥に弱いので水やりを忘れないように。特に夏はこまめに行う必要があります。
みょうがの栽培方法Q&A
Q : みょうがを庭に地植えしたら、殖えすぎてみょうがだらけに! どう対処したらいいですか?
広がりそうなところにもみ殻を20cm程度積んだり、段ボールを被せて完全に光を遮るなどして、ミョウガタケとしてどんどん食べましょう。
みょうがの地下茎(ちかけい)は土の中でどんどん広がっていくため、仕切りを埋め込むなども効果的です。すでに殖えすぎてしまっている場合はその部分だけ引き抜き、仕切りを埋め込むなどしましょう。
プランター栽培はこうした手間がかからず、管理もしやすいのでおすすめです。
Q : 食べきれないくらい多く収穫できました。どのように保存したらよいですか?
みょうがは冷蔵庫、または冷凍庫で保存できます。
冷蔵庫での保存では乾燥が大敵で、香りが飛んでしまいます。みょうがをよく洗い、湿らせたキッチンペーパーに包んでビニール袋などに入れておくと、乾燥を防ぐことができます。
冷凍保存も可能です。みょうがを洗って水気をふき取り、ラップで包んで密閉できる容器や袋に入れて保存します。刻んで冷凍してもよいでしょう。
Q : みょうがの花蕾(からい)が出ず、葉っぱばかりになるのはなぜ?
葉ばかり伸びて花蕾が出ず収穫できないのは、窒素肥料のあげ過ぎが原因かもしれません。窒素が多すぎることで葉ばかり茂って子孫を残す気になかなかならずに花や果実、芋などができないことを「蔓ボケ」といいます。肥料分の少ない土に植え替えるか、自然に窒素がなくなるのを待つか、一緒にほかの野菜などを混植して肥料を早く吸わせるかします。
この方にお話を伺いました
博士(農学) 元東京農業大学准教授 日本メディカルハーブ協会理事・事務局長 株式会社グリーン・ワイズ 木村 正典 (きむら まさのり)

専門は人間・植物関係学、都市園芸学、野菜、ハーブなど。ハーブの精油分泌組織の顕微鏡観察に長く携わるとともに、豊かな社会づくりのための建物緑化、都市緑化、有機栽培、学校菜園、コミュニティガーデン、市民農園、家庭菜園、ファーマーズマーケットなどの役割と意義について研究。講演活動の他、学校や集合住宅の屋上などでの菜園指導も行っている。『二十四節気の暮らしを味わう日本の伝統野菜』(GB)、『ハーブの教科書』(草土出版)、『有機栽培もOK!プランター菜園のすべて』(NHK出版)、『木村式ラクラク家庭菜園』(家の光協会)など著書多数。「NHK趣味の園芸 やさいの時間」旬ベジ二十四節気講師。