「和精油」とは、日本に古くから自生する植物や、生活に馴染みのある植物からつくられる、日本特有の香り。
近年、クロモジ、ハッカ、ヒノキ、ヒバ、ユズなどの柑橘類、ショウガなど、各地方特有の香りも生まれ、国内外で「和精油」への注目が集まっています。
和精油「クロモジ」は、東北、関東、東海、中部、北陸、近畿、中国地方の各地域で、地元産のクロモジの葉や枝から精油を抽出し、生産販売されています※。
※日本アロマ環境協会公式ホームページ「和精油生産情報一覧」より。
日本固有の、心安らぐ「クロモジ」の香り
意外にも、日本での精油生産の歴史は古く、明治時代から昭和の中盤にかけて精力的に行われてきました。
クロモジやハッカ、ラベンダー、ホウショウ(クロモジ同様クスノキ科)などの植物から精油を採取し、石鹸や化粧品の香料として、国内外で使用されてきたのです。
その後、合成香料の出現により一旦衰退するも、日本でのアロマテラピー(芳香療法)の広まりにより、生産の復活や新たなる開発・生産が活発になっています。
和精油が注目される理由のひとつとして、日本の大地で育つ植物は、日本人にとって安らぐ香りだと感じられること、"生産者の顔の見える精油"への安心感が挙げられるでしょう。
海外でもメイドインジャパン精油への信頼性は高く、欧米、アジア圏などへ順調に輸出量を増やしているようです。
イタリアでは和精油の中でもクロモジに人気が集まったという記事も。
自然を守りながら、緻密な技術によって精油を開発する和精油の取り組みは、国内外に誇る文化といえるでしょう。
その中でも日本固有の植物であるクロモジの香りは、ますます注目されそうです。
クロモジは伊豆半島の各所で戦前から精油が抽出されてきた歴史がある
クロモジの枝葉から精油を抽出する様子
クロモジは高級香水ローズウッドのような香り
アロマテラピストの多くが驚くのは、クロモジの香りが数々の高級香水に使われるローズウッドの香りに似ていること。
クロモジの木の姿からは想像しにくい、フローラルな香りの"ギャップ"も魅力の一つだと感じます。
私が担当するアロマテラピーの授業で学生がこの香りをテイスティングする場面では、「花みたいないい香り」、「高級感があって好き」との声が溢れます。
香水等の実習では、バラやジャスミンと同様に、クロモジ精油に柑橘系やハーブ系精油をブレンドして楽しむ様子が見られ、若年層からの評判も上々です。
拡大するアロマ市場と期待されるクロモジ製品
クロモジの芳しい香りを嗅ぐ----この瞬間から私たちの心身では、アロマテラピー体験が始まります。
太古の昔から、人々は香りで心身を癒やしてきました。
伝承されてきた香りの力は、近年の研究により五感の中でも脳にいち早く刺激を与え、自律神経系、免疫系、内分泌系に作用し、心身のバランスを整えることが分かっています。
「クロモジの木からこんなに甘い香りがするなんて!」という声も
イギリスに本部がある国際アロマセラピスト連盟(IFA)のカンファレンスでも、クロモジの鎮静作用や抗菌作用、安眠作用などへの期待が発表され、多くのアロマセラピストたちがその香りと共に、その働きに関心を寄せていました。
(公社)日本アロマ環境協会が発表したアロマ市場調査※によると、日本のアロマ市場規模は3,564憶円(前回調査比107%)。
その中でもアロマ化粧品の割合が高く(前回調査比112%)、精油配合のボディケア、スキンケア製品は、女性と共に男性のニーズも高まっています。さらにライフスタイルの変化により居住空間の充実に価値がおかれる今、生活の様々な場面にアロマ製品が広がっていく兆しも。
加えて、日本特有の和精油の人気も定着しているようです。
拡大傾向にあるアロマ市場において、希少度の高い国産クロモジの製品に期待が寄せられます。
この方にお話を伺いました
株式会社ジャパンライフデザインシステムズ所属 葛和 恵奈子 (くずわ えなこ)

英国IFAアロマセラピスト/AEAJアロマセラピスト/AEAJアロマセラピーインストラクター/メディカルハーブコーディネーター
編集者として取材で出会ったハーブ&アロマのチカラに魅せられ、メディカルハーブ健康術&生活術を学ぶ。専門学校講師として、またイベントやセミナーでTPOに合わせたハーブ&アロマ活用方法を伝えている。