中性脂肪は体のエネルギー源となる大切な成分ですが、過剰な蓄積は心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気のリスクを高めます。中性脂肪を減らしていくのに役立つ、暮らしの改善方法を紹介します。
中性脂肪とは?
中性脂肪とは、グリセロールという物質と3つの脂肪酸が結合した、トリグリセリド(TG)とも呼ばれる体の脂肪の1種です。食べたものに含まれる脂肪が小腸で消化吸収され、中性脂肪になるほか、肝臓で、脂肪酸とグリセロールから新たにつくられます。
健康によくないイメージもある中性脂肪ですが、体に欠かせない役割があります。
- 〔中性脂肪の役割〕
- 糖質の不足を補い、エネルギー源となる
- 脂溶性ビタミン(油に溶けやすいビタミンA、D、E、K)を吸収しやすくする
- 皮下脂肪になって体温を維持する
- 内臓脂肪になって内臓を保護する
糖質のエネルギーが1g当たり4kcalなのに対し、中性脂肪は9kcalと効率よくエネルギーを備蓄できるものですが、消費し切れず蓄積されると、肥満やさまざまな疾患のリスクも高まります。中性脂肪が存在する意義を知った上で、健康維持に活かしていくことが大切です。
中性脂肪が高い原因

中性脂肪が高い理由は、食生活や生活習慣の乱れ、運動不足などがあげられます。以下で詳しく解説します。
食生活の乱れ
中性脂肪の増加の大きな要因が、食べ過ぎや飲み過ぎ、偏った食事による肥満です。脂質の少ない食事であっても、糖質やタンパク質を多くとっていればエネルギー過多となり、余剰分は脂肪として蓄積されます。
特に、精製された食品、甘いもの、アルコールは中性脂肪の合成を促したり、分解を阻害したりするので注意しましょう。
生活習慣の乱れ
生活のリズムが乱れると、自律神経のバランスが崩れて脂肪の分解に影響します。特に次のことには注意しましょう。
遅い時間の食事
夜遅い時間に食事をとると、摂取したエネルギーが十分に消費されず、中性脂肪が蓄積されやすくなります。夜は脂肪蓄積を促す「BMAL1(ビーマルワン)」というタンパク質が多く分泌されることも、中性脂肪値を上昇させる一因に。
睡眠不足

十分な睡眠がとれていないと、食欲を増進させるホルモン(グレリン)が増え、食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減るため、過食しやすくなります。また、睡眠不足は脂肪の燃焼を促す成長ホルモンの分泌も妨げます。
運動不足や座りっぱなし
脂肪の蓄積は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることで起こります。そのため、消費エネルギーが少ない運動不足の状態では中性脂肪が蓄積されやすくなります。
運動習慣がないだけでなく、仕事などで長時間座りっぱなしの状態を続けている人も要注意。消費エネルギーの少なさに加え、下半身の筋肉量の低下や、筋肉が使われないことによる脂質代謝の低下が中性脂肪の増加につながります。
基礎代謝の低下など加齢による体の変化
筋肉量は20代をピークに加齢と共に減少し、40代以降はサルコペニア(筋肉量や筋力が減少し、身体機能が低下した状態)のリスクが高まるとされます。
特に女性は、女性ホルモンの分泌が変化する更年期に筋肉量の減少が顕著になります。筋肉量の減少に比例して、エネルギー消費の約60%を占めるとされる基礎代謝(何もしなくても消費されるエネルギー)も落ちていきます。基礎代謝が低下するとエネルギーとしての中性脂肪の消費量も落ち、余剰が生まれて中性脂肪値が上がりやすくなります。
さらに、加齢に伴い、筋肉の質が変化して筋肉の細胞内や細胞間に脂肪が増加しやすくなることや、脂肪の代謝を助ける体内水分の保有率が低下することも、中性脂肪値を上げる原因に。脂質異常症の予備軍が増えるのも40代以降とされます。
生まれもった体質
遺伝的な要因によって、中性脂肪の代謝能力が低かったり、「家族性高脂血症」という中性脂肪値が異常に高くなる病気にかかりやすかったりする人がいます。若い頃から中性脂肪値が高い、家族に同様の人がいるといった場合は、その可能性があると考えられます。
病気や薬の影響
甲状腺機能低下症や糖尿病、肝臓病、腎臓病、クッシング症候群、ネフローゼ症候群などは、中性脂肪の合成を促したり脂質代謝を低下させたりして、中性脂肪を増やす場合があります。また、ステロイドやサイアザイド系利尿薬、経口避妊薬(ピル)、βブロッカー、向精神薬、HIV治療薬の服用で中性脂肪値が上昇することもあります。
ストレス
ストレスがかかると副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されますが、コルチゾールの慢性的に過剰な分泌が続くと、体の代謝機能が低下し、中性脂肪の合成が促されます。
また、コルチゾールと同じくストレス時に副腎髄質から分泌されるカテコールアミン(ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンの総称)も、中性脂肪の材料となる脂肪酸を増やし、インスリンの働きを低下させます。
ストレスは過食や飲酒につながりやすいという点でも、中性脂肪値に影響するといえます。
中性脂肪が高いとどんな健康リスクがあるの?

血液中の中性脂肪値が高い状態であっても自覚症状はほとんどありません。この状態を放置すると、動脈硬化のリスクが高まり、心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患につながりやすくなります。
脳卒中・心筋梗塞
中性脂肪値が高くなると、血液がドロドロになったり、血管壁に「レムナント」やコレステロールがたまりやすくなったり、悪玉コレステロールが増えたりします。これらのことから、血管壁が厚く硬くなる動脈硬化のリスクが高まり、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れる脳出血といった脳卒中、心臓に酸素と栄養を運ぶ冠動脈が詰まって心臓を動かす筋肉が壊死してしまう心筋梗塞が起こりやすくなります。
脳卒中は命の危険を回避しても、体の麻痺や高次脳機能障害(記憶障害や言語障害、性格の変化など)といった、日常生活に支障を来し生命維持にもかかわる後遺症が高い確率で現れます。
また、心筋梗塞は、心不全などの合併症を起こすことが多く、命にもかかわります。早期の治療で助かりますが、壊死した筋肉は元に戻らず、心臓の機能低下は避けられません。
糖尿病
糖尿病のうち2型糖尿病は肥満や高血糖が発症に影響するもので、高血圧の合併率も高い疾患です。
中性脂肪が内臓脂肪として蓄積されると、脂肪細胞から分泌される生理活性タンパク質(アディポサイトカインまたはアディポカイン)の分泌異常が起こり、体に悪影響を及ぼす悪玉のアディポサイトカインの分泌が増加します。この悪玉のアディポサイトカインの働きによってインスリンの働きが低下し、糖尿病のリスクが高まります。
脂肪肝

中性脂肪の製造場所であり貯蔵庫でもある肝臓に、脂肪が多く蓄積した状態が脂肪肝です。脂肪肝に加え、肥満、耐糖能異常、高血圧、高中性脂肪血症、低HDL血症のいずれかを併発しているのが代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)であり、そこから肝炎や肝硬変、肝がんに進行することがあります。
中性脂肪の増加は自覚症状が現れにくいのに加え、肝臓も「沈黙の臓器」とよばれるほど不調が自覚しにくい臓器です。そのため、重症化してから不調に気づく場合もあります。
メタボリックシンドローム
中性脂肪の余剰分は小腸の周辺に内臓脂肪としてたまりますが、内臓脂肪はたまりやすく、短期間で内臓脂肪型肥満になってしまう恐れがあります。
メタボリックシンドロームは、この内臓脂肪型肥満に加えて、(1)高血圧、(2)高血糖、(3)脂質異常(HDLコレステロールが低いか中性脂肪が高い)のうちいずれか2つ以上に当てはまる状態を指します。
急性膵炎
中性脂肪が1,000 mg/dLを超えると、急性膵炎という激痛を伴う疾患のリスクが高くなります。この疾患は、中性脂肪によって膵臓内の毛細血管が詰まったり、消化酵素が脂肪を分解する際に生じる遊離脂肪酸が膵臓の組織を傷付けたりすることで起こります。
中性脂肪を減らす効果的な方法

中性脂肪を減らすには、食生活の改善や適度な運動、質の良い睡眠などが挙げられます。続けていくことが大切なので、まずは無理のない範囲で取り組めるところから始めてみましょう。
食生活の改善
中性脂肪を減らすためには、具体的な食材選びだけでなく、日々の食べ方や生活習慣の全体像を見直すことが近道です。
以下の記事では、適切な摂取カロリーの計算方法から、糖質・脂質との上手な付き合い方、太りにくい食事のタイミングまで詳しく解説しています。食生活を整えたい方は、ぜひあわせてご覧ください。
適度に運動を行う

激しい運動は糖質の消費に有効ですが、軽めの運動のほうが、糖質と脂質をバランスよく消費できます。有酸素運動で脂肪を減らしてから、無酸素運動で筋肉をつけるとよいでしょう。
- 〔簡単にできる運動の例〕
- 有酸素運動:通勤や買い物などを利用したウォーキング(目標1日8,000~10,000歩)、ストレッチなど
- 無酸素運動:階段の1段飛ばし、ふき掃除を利用したスクワット、腹筋など
有酸素運動による脂肪燃焼は20分以上たってから始まるとされますが、1回20分以下の運動でも合わせて20分以上行えば、脂肪燃焼量は連続して20分以上行った場合と同じとされています。
また、食前に運動を行うと脂肪が消費されやすくなります。運動によって筋肉量を維持したり増やしたりすることも、基礎代謝の低下の予防に役立ちます。
なお、座っている時間が長い生活ほど中性脂肪値が上がり、こまめに立ち上がるようにすると中性脂肪値が下がるといわれています。デスクワークなどで座りっぱなしでいることが多い人は、30分~1時間ごとにタイマーをセットして立ち上がるようにする、公共交通機関では座らない、スタンディングデスクを使う、手に届かない範囲にものを置くなどの工夫をしてみましょう。
体力をつける詳しい方法は以下の記事で紹介しています。
質の良い睡眠をとる
睡眠時間が短かったり、途中で目覚めてしまったりするような質の悪い睡眠は、自律神経を乱し、食欲や体調管理に悪影響を及ぼします。夜更かしをせず、寝室の温度や湿度、寝具、パジャマ、照明などを整えて、心地よく眠れる環境も用意しましょう。
就寝前の過ごし方も、睡眠に影響します。寝る前は、刺激の強いブルーライトを浴びるスマートフォンなどの使用、食事、飲酒を避け、心身をリラックスさせてください。就寝の90分ほど前に、ややぬるめの38~40度の湯に浸かることで、副交感神経が優位になり、スムーズに入眠できます。
質の良い睡眠をとるための習慣は以下の記事で紹介しています。
アルコールのとり過ぎは注意

適量のアルコールには、ストレスを和らげたり、血行を促したりする働きがあります。1日の飲酒量の目安は、日本酒なら1合、ビールなら大びん1本程度。それ以上にならないように意識しながら、週に1、2日の休肝日も設けて楽しみましょう。
ただし、就寝前の飲酒は睡眠の質を低下させるので控えてください。また、ビールや日本酒、カクテルなど糖質が多いお酒、揚げ物などの高カロリーなおつまみ、酒量が増えるしょっぱいおつまみは中性脂肪を増やす原因にもなります。
焼酎やウイスキーなどの糖質が控えめなお酒や、カロリーが低い食材、食物繊維やタンパク質を多く含む食材を使ったおつまみを選びましょう。
ストレスをためない
ストレスは、ホルモン分泌に影響したり過食につながったりすることで、中性脂肪の増加の一因になります。自分なりのストレス解消法を見つけ、あまり溜め込まないようにしましょう。
良い睡眠と規則正しい生活は、自律神経を整え、ストレスに強い体づくりに役立ちます。また、腹式呼吸は心を落ち着かせてストレス解消につながります。腹筋が鍛えられるだけでなく、酸素が全身に行き渡りやすくなって脂肪の代謝アップも期待できるでしょう。
ツボ押しでストレスが解消することもあります。以下記事を参考に試してみてください。
自分の健康状態を定期的にチェックしよう

女性の場合、妊娠・出産でも中性脂肪値は増加します。また、男性は20代後半から体重が増加しやすくなりますが、それに伴って中性脂肪値も高まる傾向に。
ただし、コレステロールとは異なり、中性脂肪値の上昇は年齢とはあまり関係ありません。自覚症状もないので、若い世代も油断せずに定期的に健康診断を受けて中性脂肪値をチェックし、体調管理や生活改善に役立てるとよいでしょう。
この方にお話を伺いました
公益財団法人結核予防会 総合健診推進センター所長 / 日本肥満症予防協会理事長 / 医学博士 / 日本内科学会認定医・指導医 / 日本肥満学会専門医・指導医・名誉会員 など 宮崎 滋 (みやざき しげる)
1971年東京医科歯科大学医学部卒業。糖尿病、肥満症、メタボリックシンドロームの治療に従事し、東京医科歯科大学医学部臨床教授、東京逓信病院外来統括部長・内科部長・副院長などを経て、2015年より現職。『健康診断で中性脂肪値が高めの人が読む本』(幻冬舎)、『肥満症教室』(新興医学出版社)など編著書多数。
















