「顔色が悪い」と感じるのは、血行不良など日常の体調変化が影響していることが大半です。しかし、中には病気が原因であるケースも。顔色の変化の原因やケア方法、受診の目安を詳しく解説します。
顔色が悪い原因とは?

鏡を見るとなんとなく顔色がさえなかったり、いつもより顔色の悪く感じられたりすることがあります。顔色が悪い原因として、血行不良や鉄欠乏性貧血が挙げられますが、それ以外の原因も考えられます。
貧血
鉄欠乏性貧血や潰瘍や外傷からの出血で貧血になると、血液が不足するため、顔色が青白く見えます。
血行不良
顔が青白くなったり、くすんで見えたりします。
血行不良が引き起こす症状や詳しい改善方法は、以下の記事で紹介しています。
低体温や緊張・ストレス
血管が収縮し、血流が不足して青白く見えます。
睡眠不足など生活の乱れ、疲労
睡眠不足や栄養の偏りなどにより、肌の状態が悪化して顔色がくすんで見えます。
肝臓や腎臓の病気
肝機能の低下で血液中のビルビリンという成分の濃度が高まると黄色くなり、腎機能の低下で老廃物などが蓄積されると色素沈着が起こりやすくなります。
顔色が悪いときの治し方は?

血行不良や顔色の改善のため、体の中からと外からのセルフケア法をご紹介します。これらのセルフケアで不調が改善されない場合は、医療機関を受診しましょう。
鉄分を積極的に摂取する
鉄欠乏性貧血を改善するには、鉄分を豊富に含む食品、特に「ヘム鉄」を多く含む肉や魚介類と、「非ヘム鉄」を含む野菜類などをバランス良くとることが大切です。また、鉄分の吸収を助けるビタミンCや赤血球の生成に必要なビタミンB12なども、積極的に摂取したい栄養素です。
鉄欠乏性貧血の予防・改善は食事が基本です。毎日の食事で上手に取り入れていきましょう。貧血対策におすすめの食べ物、飲み物は以下の記事で紹介しています。
質の良い睡眠をとる
睡眠には疲労回復や血管修復、自律神経の調整などといった働きがあり、血行に深く関わります。夕方に運動をしたり、就寝1~2時間前に入浴したりすることは、入眠しやすさにつながります。
また、質の良い睡眠を得るため、就寝前に食事や飲酒、スマートフォンの操作などをしない、寝室や寝具を心地よい状態に整えるなど、就寝前の過ごし方や就寝環境も見直してみましょう。
適度な運動・ストレッチをする
肩関節や股関節などの大きな関節には、たくさんの血管が集まっています。肩や腕を回したりウォーキングをしたりして、大きな関節を動かすと血行が促され、顔色を改善する効果があります。また、脊椎(背骨)は脳から続く神経が通る場所。血流をコントロールする自律神経とも深くかかわるため、ストレッチなどで背中、特に肩甲骨周辺のこわばりをほぐすことは血行促進に有効です。
ストレスを管理する
ストレスをためないためには、自分にとってのストレス要因を明らかにし、その要因から距離を置くようにすることが大切です。また、自分なりのストレス発散法やリラックス法を見つけるとよいでしょう。腹式呼吸(深呼吸)は心身のリラックスにつながり、血行の改善にも有効です。
体を冷やさないようにする
皮膚の表面近くに太い血管が通る首、手首、足首を冷やさないようにしましょう。特に冷えやすい足首は、レッグウォーマーで保温を。やけどに注意しながら、ドライヤーで1分程度温めるのもおすすめです。また、冷暖房は適切に利用してください。
その他、詳しい冷え改善策は以下の記事で紹介しています。
ツボ押しなどで顔の血流を促す

顔色が青白く見えたりくすんだりしている場合は、顔への血流が滞っている場合も。首の後ろを温めたり、顔の筋肉を動かしたりすると、血行が促進されて顔色を改善できます。鎖骨の上のくぼみの真ん中にある「欠盆(けつぼん)」は、顔や首のリンパが流れ込むツボ。刺激すると、顔の余分な水分が流れ、血色がよくなります。
顔色が悪いのは危険? 考えられる病気とは

顔色は血液の色を反映するものであり、顔色の悪さが病気の兆候を示している場合があります。ただし、女性はお化粧で顔色がわかりにくいことも。
顔色だけでなく、まぶたの裏側や唇、爪の色にも変化がないか注意し、気になる場合は医療機関を受診しましょう。
心臓や肺の病気、アナフィラキシー
次のような状態で顔色が悪くなっている場合もあります。これらは命にもかかわるので、早急に医療機関を受診してください。
- 〔すぐに医療機関を受診するケース〕
- 心不全や心筋梗塞などの心臓の病気によって、血液が十分に送り出されていない。
- 喘息(ぜんそく)や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症などの肺の病気で、うまく呼吸ができず血中の酸素濃度が低下している。
- 急激に重いアレルギー反応が起こるアナフィラキシー。
肝臓の病気
肝臓の機能が低下すると、血中のビルビリンという物質の量が増えて皮膚や白目が黄色っぽく見えたり、代謝や血行が低下して顔色がくすんだり土気色に見えたりします。放置すると肝炎や肝硬変、肝臓がんなどのリスクが高まります。
腎臓の病気
腎臓の機能低下により、体内の老廃物が排泄されずに蓄積されたり、腎臓でつくられるホルモンが減少して貧血が起こったりすると、肌に色素沈着が生じ、顔色が黒っぽくくすんで見えるようになります。腎不全や尿毒症、腎臓病、腎炎などは、初期段階では気づきにくく、いつの間にか進行していることも多い病気です。
甲状腺機能低下症
甲状腺の機能が低下して甲状腺ホルモンが不足すると、血流や造血機能が低下して、青白い顔色になります。また、肌のターンオーバーが乱れたり顔がむくんだりすることも顔色の悪さにつながります。
アジソン病
副腎皮質から分泌されるコルチゾールなどのホルモンが慢性的に不足する難病です。コルチゾールの血中濃度が低下するとACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌が増え、その影響によって色素沈着が起こり、顔色が黒ずんで見えるようになります。
顔色が悪いときのQ&A

Q:元気だけど顔色が悪い場合も危険?
疲れやストレスなどで血流が滞ったり、目の下にクマができたりすると、顔色が悪く見えることがあります。このような一時的なものであればあまり心配はありませんが、自覚症状がないままに進行する病気もあります。顔色の悪さが気になったら医療機関を受診したほうがよいでしょう。
受診科は内科でよいのですが、女性の場合は子宮の病気の可能性もあるので、婦人科の受診をおすすめします。
Q:顔色が白色や土色になる原因は?
冷えや睡眠不足などによって顔の血流が不十分になっていたり、病気が影響していたりします。前者は一時的なもので生活習慣の改善などで対処できますが、後者は医師の診断と適切な治療が必要です。
Q:顔色が悪いときに病院を受診する目安は?
次のような状態であれば速やかに医療機関を受診してください。
- 〔速やかな受診が必要なケース〕
- 意識がない。
- 呼吸が苦しい。
- 顔色の悪さが数日続いている。
- 休んでも顔色の悪さが改善しない。
- めまいや倦怠感、腹痛などほかの症状を伴っている。
この方にお話を伺いました
御苑アンジェリカクリニック院長 / 東京慈恵会医科大学大学院 非常勤講師 / 医師・博士(医学) 神藤 慧玲 (しんとう えり)
千葉大学医学部卒。千葉県内の大学病院にて研修・北里研究所病院東洋医学研究所にて漢方研修終了。東京都内大学病院・総合病院の勤務を経て東京都新宿区にクリニック開業。月経困難症や更年期の女性の痛みの診療をはじめ、漢方診療を行う。















