頭痛、吐き気など二日酔いの症状を和らげるのに効果的なツボのほか、「酒毒」の排出を促す身近な飲み物を紹介します。飲み過ぎたときのセルフケアに役立ててみてください。
なぜ二日酔いになるの?
頭痛や吐き気、喉の渇き、胃もたれ、胸焼け、下痢、むくみなどの症状をもたらす、二日酔い。その原因は、ズバリ「お酒の飲み過ぎ」です。なぜ飲み過ぎるとつらい症状が起こるのか。そのメカニズムは明らかになっていませんが、お酒を飲むことで生じる脱水や低血糖、アルコールの分解で生じるアセトアルデヒドの影響、炎症反応、胃腸障害などが、複合的に作用していると考えられています。
東洋医学においては、お酒の代謝には五臓のうち「脾(ひ)」「腎(じん)」「肝(かん)」が大切だと考えます。体内に入った食べ物や飲み物は、「脾」で消化・吸収が行われ、過剰な水分などは「腎」によって体の外に排出されます。「肝」もデトックスに関与します。しかし「脾」「腎」「肝」の許容量を超えると、その働きが阻害されて必要な栄養が摂取できなくなるだけでなく、本来不要であるはずのものが体内に残り、体調不良の原因に。
お酒の飲み過ぎによって体内の「水」のバランスが乱れると、排出されるはずの「水」が停滞して「水毒」の状態になり、体にむくみが生じます。また、体内に残される老廃物を「酒毒(しゅどく)」と呼び、二日酔いも酒毒によって起こると考えます。
二日酔い解消に効果的なツボ
二日酔いのつらい症状を抑えるツボを紹介します。心地よいくらいの強さで、1日5、6回を目安に押します。気持ちがよければ1回押すだけでもOKです。
内関(ないかん): 吐き気や胃のむかつきを押さえるツボ
手首の横紋から指3本ほど肘に向かった位置で、グーを握ったときに浮かび上がる手首内側の2本の腱の間にあるツボ。
百会(ひゃくえ): 頭痛を緩和するツボ
両耳を結ぶ線と顔の正中線が交わる、頭のてっぺんのくぼみのあるツボ。
太衝(たいしょう): 肝機能を助けるツボ
足の親指と人差し指の間の、骨と骨とが交わる指側のくぼみにあります。
行間(こうかん): 肝機能を助けるツボ
足の親指と人差し指の間にあるツボ。つまんで、ツンと痛みを感じるくらい刺激するとよいでしょう。
番外編/労宮(ろうきゅう): 飲み会で気持ちを落ち着けるツボ
知らない人が多い飲み会の前などは、ソワソワしたりドキドキしたりすることも。手を軽く握ったとき、人差し指と中指の先端の中間にあるツボを押すと気持ちが落ち着きます。
お酒を飲むときには体を冷やさないことも大切!
お酒を飲んで体を冷やすと、胃腸に負担をかけるだけでなく、夜トイレが近くなって睡眠の質が低下します。お酒の選び方や飲み方を見直してみましょう。
麦茶が夏に美味しいのは、麦には体を冷やす作用があるから。同じ麦を原料とするビールも体を冷やします。体を温めるワインや、芋や米を原料とした焼酎なら胃腸の負担を和らげます。お湯割りやホットワインなら、なおいいでしょう。「とりあえずビール!」という人は、特に1杯目はゴクゴクと飲むのではなく、口の中に少し置いて冷たさを和らげてから飲み込むようにしてみてください。
またお刺身やお寿司など、冷たいおつまみばかりだと、冷たいお酒と同様に体が冷えてしまい、消化不良などにつながります。温かいメニューもとり入れつつ、消化吸収や水分代謝を高める食べ物をおつまみに選ぶとよいでしょう。
二日酔いの解消に効果的な食べ物・飲み物
お酒を飲んだ翌朝は解毒と排出を心がけましょう。水分摂取は欠かさずに行います。酒毒を排出するための白湯、アルコールの分解を促す柑橘類のジュース、利尿作用のある緑茶、解毒の働きのあるコーヒーなどがおすすめです。脱水症状がある場合はスポーツドリンクや経口補水液・味噌汁を飲むのもよいでしょう。
味噌汁が二日酔いに効果的である理由やおすすめの具材などを、以下記事で紹介しています。ぜひ参考にしてください。
韓国では二日酔いの際、「ハチミツ水」が飲まれます。薬膳では、ハチミツには解毒作用があり、胃腸を保護する働きがあるからだと考えられます。食事では、もやしやハトムギ、豆類、海藻、シジミやアサリといった貝類をとり入れてみてください。
二日酔いの解消に効く食事については以下の記事でも詳しく紹介しています。
二日酔いが和らいだら経絡をさすってみよう
つらい二日酔いになってしまったらまずは安静にして休みましょう。ツボ押しなどをとり入れつつ、症状がラクになってきたら体の側面をさすったり伸ばしたりしてみてください。寝転がったまま行ってもOK。体の側面には「肝」の経絡(けいらく: 「気・血・水」の通り道)と連携する「胆(たん)」の経絡があり、解毒に有効ですよ。
また、二日酔いにならないための対策を以下記事にて詳しく解説しています。チェックしてみてください。
この方にお話を伺いました
鍼灸師 国際中医専門員(国際中医師) 田中 友也 (たなか ともや)

兵庫県神戸市にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」で健康相談にのる。関西学院大学法学部卒業後、イスクラ中医薬研修塾にて中医薬を学び、北京中医薬大学などで研修。季節に合った健康法や食養生をつぶやくX(旧Twitter)が人気。日本中医薬研究会会員。著書は『不調ごとのセルフケア大全 おうち養生 基本の100』(KADOKAWA)など。