つらい夏の冷えや冷房病の治し方をチェック!胃腸から不調をケア
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つらい夏の冷えや冷房病の治し方をチェック!胃腸から不調をケア

1日で20℃にも及ぶ温度変化にさらされる夏。体温調節が上手くいかなかったり「冷房病(クーラー病)」になったりして、不調を訴える人が多くいます。現代医学と漢方を併用した診療を行っている橋口玲子先生に、セルフケア方法を教えてもらいました。

〔目次〕
夏の冷えがつらい理由とは? どんな症状?
「冷房病」を防ぐセルフケア
お腹を温め胃腸機能を高める夏の簡単薬膳

夏の冷えがつらい理由とは? どんな症状?

夏の冷え

冷え症にはつらい公共の場の冷房温度

診療所に来られる冷え症の患者さんは、年齢も冷えのタイプもさまざまです。若くても筋肉量が少なく運動量の少ない人や年配の方に多いのが、全身的に寒がりで、特に腰から下や背中、首筋が冷えるタイプ。

一方、寒がりではないけれど手足の先だけ冷えるというタイプは、若い女性やストレスを抱えやすい人によく見かけます。また、お腹がいつも冷たい感じで胃腸の不調を起こしやすいという人もいます。

そして、タイプはどうであれ多くの方から聞くのが「夏のほうが冬より冷えがつらい」。

冷房設備が普及している日本では、オフィスや電車の中はもとより、スーパーマーケットやコンビニも冷房が効いています。温暖化防止や省エネルギーのために「冷房は25℃設定に」と呼びかけられていますが、実際には22℃以下のところが多いのではないでしょうか。

確かに熱中症予防は重要です。高齢者の熱中症の大半は自宅内で起きていますので、日中だけでなく熱帯夜にも冷房を利用することが求められます。屋内でも体を動かす仕事だと、25℃設定では暑くてバテてしまうでしょう。

しかし、座りっぱなしのデスクワークでは、女性よりも筋肉量の多い男性や若い人でも「冷房病」になることがあります。もともと冷え症の人ではなおさらです。なお、冷房病は正式な病名ではなく冷房の中に長くいた結果起こる不調の総称。冷え、脚のむくみ、だるさ、肩こり、胃腸の不調などを指しています。

20℃にも及ぶ屋内外の温度差が体の負担に

冷房による冷え以上に体の負担が大きいのが、屋内外の温度差です。温暖化やヒートアイランド現象で夏の外気温は上昇。駐車していた車の中やコンクリートの路上は40℃を軽く超えるので、冷房の効いた屋内との温度差は20℃くらいあることになります。

春や秋の季節の変わり目に、日によって気温が10℃前後変化すると体調を崩すことがありますが、夏の体は一日の中でそれ以上の温度変化にさらされていることになります。冬場はコートなどを身に着けることで衣服内の温度を保つことができますが、夏の衣服や日傘による温度調節には限界があります。

15℃の冷水で胃の働きは低下する

胃の動きの低下

夏は清涼飲料水やアイスクリーム、かき氷、冷たい麵類など、冷たい飲食物の摂取が増えることも体調に影響します。

摂取した飲み物の温度で、胃の動きがどう変わるか調べた研究(※)では、15℃の冷水で胃の動きが低下したとあります。15℃の冷水を体温と同じ37℃前後になるまで胃の中にとどめるために、胃の動きが低下したと解釈されています。

胃の重要な働きは、強酸性の胃液(pH1~2)で食物を粥状くらいになるまで消化することですが、飲食物の温度調整という役割もあるというわけです。

冷たい麺類をよく噛まずにつるつると食べ、キンキンに冷えた飲み物をガブ飲みしたら、飲食物が胃内にとどまる時間は相当延びて、胃もたれを感じることでしょう。

ちなみにこの研究は、朝食を食べない人の割合が20代では男性30%、女性20%にも及び、理由として「朝は食欲がない」が多いことから、胃の動きを改善するために、"朝一番にとる飲み物はどの温度が適切か"を検討する目的で行われました。朝食を抜くことが習慣になっていると、胃の正常な動きが低下し、朝の食欲低下の一因になっているようです。

つまり、冷たいもののとりすぎは食欲低下につながるだけでなく、熱中症予防に必要な水分の吸収を遅らせることにもなるというわけです。

※出典:脇坂ら、日本栄養・食糧学会誌、2011年

「冷房病」を防ぐセルフケア

こまめに足を動かすイラスト

冷気は下にたまる!こまめに体を動かして冷えを予防

ここまでのことを踏まえて夏の冷え対策を考えてみましょう。冷房病を防ぐには個人差や活動量によってこまめに冷房を調節するのが一番ですが、なかなかそういうわけにもいきません。ご夫婦でも暑がりと寒がり(更年期以降の暑がりの女性と歳をとって寒がりになった男性という場合もあります)のために、夏は別々の部屋で生活しているという話もよく聞きます。

会社のように冷房の設定温度を一人一人に合わせることが難しい場所では、寒がりの人はひざ掛けなどで、暑がりの人はミニ扇風機などで自衛している姿を、産業医訪問でよく見かけます。これらの対策を取った上で冷え症の人におすすめしたいのは、なるべく体を動かすことです。

冷気は下にたまるので、じっとしていると足の皮膚温から低下してきます。足先やかかとを上げ下げしたり、肩回しやいろいろな方向へ伸びをしたりするだけでも、冷えだけでなく、足のむくみや肩こり対策になります。休憩時間には立ち上がって歩いたり、ひざの屈伸運動をしたりしましょう。

運動や半身浴で能動的に汗をかいて体温調節機能をアップ

汗をかく女性

冷房病や内外の温度差からくる不調対策には、運動が有効です。夏に限らず普段から運動をして能動的に汗をかいていると、体温調節機能が高まります。

猛暑の時期に運動を始める場合は、涼しい時間帯を選ぶか室内運動にしましょう。体力の低下した人では運動ではなく半身浴で汗をかくのもいいでしょう。運動や入浴の前後で水分をとるのをお忘れなく。

寝る前に簡単なストレッチをするだけでも血流がよくなり、代謝も上がります。夜寝る前におすすめのストレッチは下記をご覧ください。

胃を温める朝食で食欲不振、熱中症を予防

朝食

夏の食欲低下を防ぐだけでなく、熱中症の予防にも朝食をとることは大切です。温かいスープとパン、みそ汁とおにぎり、ホットコーヒーとサンドイッチなど、少量でいいので胃を温めながら脳のエネルギー源であるブドウ糖をとりましょう。

朝からそんなに食べられないという人は、ジャーマンカモミールとペパーミントのブレンドハーブティーをお試しください。ジャーマンカモミールが胃を温めて胃粘膜を保護、ペパーミントが胃の動きを活発にしてくれます。

起き抜けにまずハーブティーを飲むと、会社に着くころには何か食べられる準備が整うと思います。

お腹を温め胃腸機能を高める夏の簡単薬膳

スパイスや香味野菜をいつもの料理にちょい足し

いつもの料理にスバいすや香味野菜をちょい足し

胃腸の冷えを感じる人には、お腹を温め胃腸機能を高める薬膳食材もおすすめです。

とうがらし、山椒、こしょうなどの辛味や、フェンネル、クローブ、ナツメグ、シナモンなどのスパイス、にんにく、生姜、玉ねぎ、ニラ、紫蘇、香菜、バジルなどの香味野菜がそれに当たります。

夏は火を使う料理もおっくうになりますが、レトルトのカレーやパスタソースを温める時にこれらの食材を加えたり、香菜やバジルをトッピングしたりするだけでも立派な薬膳メニューです。

冷房病や夏バテでだるさや食欲低下があったら、ブドウ糖のエネルギー変換に必要なビタミンB1が豊富な豚肉のひき肉と上記の薬膳食材を炒めて小分けにし、冷凍しておくのがおすすめ。ぶっかけ麺にのせたり炒飯にしたり、スパゲティ・ボロネーゼやキーマカレーに変身させたり、美味しく簡単に夏の薬膳が楽しめます。

この方にお話を伺いました

緑蔭診療所 橋口 玲子 (はしぐち れいこ)

橋口 玲子

1954年鹿児島県生まれ。東邦大学医学部卒。東邦大学医学部客員講師、および薬学部非常勤講師、国際協力事業団専門家を経て、1994年より緑蔭診療所で現代医学と漢方を併用した診療を実施。循環器専門医、認定内科医、医学博士。高血圧、脂質異常症、メンタルヘルス不調などの診療とともに、ハーブティーやアロマセラピーを用いたセルフケアの指導および講演、執筆活動も行う。『医師が教えるアロマ&ハーブセラピー』(マイナビ)、『専門医が教える体にやさしいハーブ生活 』(幻冬舎)、『世界一やさしい! 野菜薬膳食材事典』(マイナビ)などの著書、監修書がある。

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