冬になると真っ赤な実を膨らませるナンテンの木。年末から年始にかけ、住宅街に入ると古い一軒家の庭や軒先で見かけることが多くなります。冬の風景にぽっと明かりをともすような赤い実にふと目を向けるとき、今年も冬が来たなぁと実感するのではないでしょうか。
難を転じて福となす
江戸時代には、「難を転ずる」につながるその名にちなんで、厄除けや幸せを招く木とされてきました。そのため、庭木として植える家が多かったそうです。不浄を清めるともされ、厠(かわや)の外にも植えられてきたとか。年末年始に、あちこちでナンテンが飾られるのも縁起がよいためなのです。
ぜひ、今年は験を担いで部屋に飾ってみませんか? 枝部をいくつか切り分けて挿した小さな花びんをあちこちに飾ると、部屋の中が華やぎます。購入の際には、比較的大きなものを選ぶとよいですね。ナンテンの葉には防腐効果のある成分も含まれるため、赤飯やおせち料理の上に載せると長く食材を持たせることに役立ちます。防腐剤にも、部屋の飾りにもなるナンテン。大ぶりの枝が一本あると便利です。
のど飴にも使われるナンテン
ナンテンは中国原産の植物ですが、果実を咳止めに用いるようになったのは中国から伝わった知識ではないようです。漢方処方には用いられず、民間薬的に単独で使われています。ナンテンエキスを配合したのど飴が有名になって需要が増し、薬用向けに国内生産(産地は大阪、奈良、和歌山)や輸入量が増えました。実や葉に接触した程度では問題ありませんが、大量に摂取すると毒性が現れますので、むやみに口にするのは避けましょう。
ナンテンの箸置き
部屋に飾るだけでなく、実のついた枝を手折って箸置きにも。新たな年の「難を転じる」よう、思いを込めたお正月のおもてなしにいかがでしょうか。ギフトボックスのリボンに挿すのもおすすめです。ナンテンの真っ赤な実が季節感あふれるアクセントになります。
ナンテンこぼれ話
実は、ナンテンには、葉も幹も水銀などの毒に触れると変色するために、殿様の食事の際の毒見に使われたという説があります。赤飯の上には葉を、箸には木の幹が使われていました。住宅街などでふと目にする小さな赤い実。かわいらしいだけでなく、鎮咳作用や防腐作用もある優れものだったのですね。