レモンに似た香りから名付けられ、その香りはレモンより強いともいわれるレモングラス。しかし、分類上はレモンとは全く異なる植物です。
ハーブティーやエスニック料理でおなじみですが、実は食用以外にも、私たちの体や心、暮らしに役立つさまざまな効果・効能があります。活用方法もご紹介するので、ぜひ生活に取り入れてみてください。
レモングラスとはどんな植物?
レモングラスとは?
レモングラスはススキに似た見た目で柑橘系の香りをもつ、インドなどの熱帯アジア原産のイネ科のハーブです。インドでは数千年も前から栽培され、伝統医療であるアーユルヴェーダに使われてきました。
豊富な香り成分には、レモンのような爽やかな香りの元となるシトラールを中心に、シトロネラールやゲラニオール、リナロールなどが含まれます。精油はアロマセラピーに用いられます。
また、食用としてはハーブティーやエスニック料理などで使われます。
レモングラスの主な栄養素
レモングラスの栄養素は、免疫力を高めるビタミンA、体内のエネルギー代謝を高め疲労を解消するビタミンB群、抗酸化作用をもつビタミンC、現代人が不足しがちなカリウムやカルシウム、リンといったミネラル類が含まれます。
レモングラスの種類
レモングラスの主な種類として、西インドレモングラスと東インドレモングラスがあります。日当たりのよい場所を好み寒さには弱いものの、日本でも栽培しやすい植物で、1~3mほどに成長します。
日本で多く栽培されているのは、スリランカやマレーシアなどを原産とする西インドレモングラスです。東インドレモングラスと比較するとシトラールの量がやや少なめで、香りは穏やか。
葉や茎(葉鞘)がハーブティーや料理、精油に使われます。顕花植物ですが、気候条件により、日本で花を咲かせることは、ほとんどありません。
一方、カンボジアやインド、タイなどが原産の東インドレモングラスは、シトラールを多く含み、精油の原料に用いられるほか、ハーブティーなどにも使われています。
西インドレモングラスとは異なり、茎の根本が赤く、花も咲きます。インドではレモングラスが「チューマナ・プールー」と呼ばれますが、これは「赤い茎」という意味です。
レモングラスの育て方を詳しく知りたい方はこちらの記事を確認してください。
レモングラスの効果・効能とは?
体に与える効果・効能
レモングラスは胃腸や感染症の薬、解熱剤、虫除けなどの効果があります。
東洋医学では、生薬の「香茅(こうぼう)」として風邪による頭痛や胃痛、関節痛、下痢などの改善に使われています。主にシトラールの働きなどから、以下の効果・効能があります。
胃腸の不調の改善
レモングラスのハーブティーは胃腸の働きを助け、消化促進、胃の不快感や食欲不振、腹痛、下痢、お腹に溜まったガスなどの改善に役立ちます。
筋肉のけいれんを抑え、心のバランスも整えることから、緊張などの精神的な要因で起こる腹痛や下痢の予防にも効果が期待できます。
肩こりや冷えの緩和
血管を拡張して血行を促す作用があり、マッサージオイルに使えば、肩こりや冷え、むくみを緩和します。
疲労、筋肉痛の改善
血行がよくなると疲労物質も排出されやすくなるため、疲労回復が期待できます。さらに、抗炎症作用もあることから、筋肉痛も和らげます。
感染症の予防と症状改善
抗菌・抗ウイルス作用や免疫を高める働きがあり、感染症の予防に役立ちます。さらに、炎症を抑えたり、発熱や痛みを和らげたりするため、感染症にかかってしまった場合の症状緩和にも有効です。
高コレステロールや痛風の改善
レモングラスのハーブティーには利尿効果があります。余分なコレステロールや尿酸は尿として排出されるため、高コレステロールや痛風の予防・改善に効果が期待できます。
肌のケア
化粧品にも使われるレモングラス。肌の血行を促すのに加え、毛穴を引き締めたり皮脂バランスを整えたりすることで、肌を健やかにします。消毒殺菌抗菌作用があるためニキビの改善にも有効です。
ただし、肌への刺激が強いので、精油で化粧水などをつくる場合は適正な濃度を心がけましょう。
心に及ぼす効果・効能
レモングラスの香りは、交感神経を刺激して集中力ややる気を高めたり、不安や緊張を和らげて気持ちを穏やかにしたりします。リフレッシュとリラックスのどちらの働きもあり、心のバランスを整えるのに役立ちます。
このことから、運転中にもおすすめの香りといわれています。
暮らしに役立つ効果・効能
シトラールには虫が嫌がる効果(忌避効果)があり、精油は虫除けスプレーや防虫剤などの原料に使用されています。特に蚊に有効とされ、古くから蚊帳に編み込まれてきました。
抗菌作用によって、雑菌が増えて生じる悪臭を抑えることにも役立ちます。キッチンや洗面所などの水回り、玄関、ゴミ箱など、家の中でにおいが気になる場所の消臭に使ってみましょう。また、抗真菌作用もあるため水虫菌の除去にも使えます。
レモングラスの使い方
ハーブの使い方:お茶や料理、お部屋の消臭に
さっぱり味のハーブティーでホッと一息
フレッシュな葉を使っても、乾燥させたものでもOKです。フレッシュな葉の場合は2、3㎝にカットしたものを数本、乾燥したものならティースプーン1杯分をポットに入れて熱湯を注ぐと、レモンの香りとほんのりとした酸味が感じられる、さっぱりとした味のお茶になります。
疲労回復や消化促進の効果があり、爽やかな香りで気分をリフレッシュしたいときにぴったりです。
エスニック料理に大活躍
グリーンカレーやトムヤムクン、豚肉のレモングラス炒めなど、東南アジアの料理には欠かせません。
茎のやわらかい部分や葉を刻んだり、すりつぶしたりして、料理の香りづけや臭み消しに使います。乾燥させた葉をそのまま料理に加えることもあり、いずれも胃もたれやお腹の張りの緩和にも有効です。
清々しい香りを部屋で楽しむ
乾燥させたレモングラスを細かくカットし、お茶パックなどに入れて部屋に置いておくと、清々しい香りが楽しめると共に、消臭効果も期待できます。
長いまま束ねたり編んだりして、スワッグやリースをつくるのもおすすめです。
置くだけで虫除けに
レモングラスの鉢植えや、切って束ねたものを、玄関や窓辺に置いておくと虫の侵入を防げます。乾燥しても香りがあるうちは効果が持続します。
精油の使い方:マッサージオイルや入浴剤、虫除けスプレーに
マッサージオイルでこりやむくみを和らげよう
精油をキャリアオイルに混ぜてマッサージオイルをつくり、首や肩、足などをマッサージして、こりやむくみを和らげましょう。
- 〔用意するもの〕
- レモングラス精油 ...... 2滴
- ホホバオイルなどのキャリアオイル ...... 15ml
- ビーカー(またはガラス容器)
- 〔How to〕
- ビーカー(ガラス容器)にキャリアオイルを入れ、精油を加える。
- よく混ぜ合わせて出来上がり。保存する場合は、保存容器に移す。
アロマバスでリラックス
フレッシュな葉を湯船に入れてもいいのですが、精油のほうがより片付けが楽になります。精油が直接肌に触れないように、天然塩に精油を垂らしたバスソルトをつくり、お湯に溶かしてから入浴しましょう。
- 〔用意するもの〕
- レモングラス精油 ...... 3滴
- 天然塩 ...... 大さじ2
- 〔How to〕
- 器に分量の天然塩、精油を入れ、スプーンで混ぜてできあがり。
芳香浴で気分スッキリ
熱湯を入れたマグカップに精油を1、2滴垂らし、蒸気と共に香りをゆっくりと吸い込みます。アロマディフューザーやアロマランプに精油を垂らし、香りを漂わせてもいいでしょう。
仕事や勉強に集中したいときや、リラックスタイムにおすすめ。朝行えばやる気もアップします。
シュッとひと吹き、虫除けスプレー
精油をグリセリン、精製水とよく混ぜてボトルに入れ、外出の際などに直接肌にスプレーして使います。
ただし、3歳未満は精油が入ったスプレーを肌に直接噴霧できません。また、3歳以上のお子さんに使う場合でも、精油の濃度は大人用の半分以下を目安にしましょう。
- 〔用意するもの〕
- レモングラス精油 ...... 5、6滴
- グリセリン(またはハチミツ) ...... 小さじ1/4
※ グリセリンは保湿成分として入れます。なければハチミツで代用もできます。 - 精製水 ...... 25ml
- ビーカー(またはガラス容器)
- スプレー容器 ...... 30ml
- 〔How to〕
- ビーカー(ガラス容器)にグリセリンを入れ、精油を垂らしてよく混ぜ合わせる。
- 1に精製水を注ぎ、さらに混ぜ合わせ、スプレー容器に移す。
レモングラス精油と無水エタノール、精製水をよく混ぜたものを網戸にスプレーすれば、家の中への虫の侵入を防ぐこともできます。また、コットンなどにスプレーして布袋に入れ、タンスの中などに置いておくと衣類を虫から守ってくれます。
※ スプレーをつくる際の注意点はこちらをご覧ください。
靴の水虫菌を除去
精油を1滴たらしたティッシュやコットンを靴の中に入れ、アルミホイルでふたをして1晩置きましょう。
レモングラスを使用する際の注意点
妊娠・授乳中はハーブティーであれば心配ない
レモングラスには子宮収縮作用があるとされていますが、ハーブティーで用いる濃度では心配ありません。
高濃度での精油の使用はNG
肌に刺激を与えるので、マッサージオイルや入浴剤などに高濃度で使用することは控えましょう。
また、お子さんに精油入りのスプレーを使う場合は、精油の濃度を大人用の半分以下を目安にしてください。
3歳以下のお子さんには精油入りスプレーは使用できません。
イネ科アレルギーのある人は使用を控える
レモングラスはイネ科のため、イネ科の植物にアレルギーがある人は、フレッシュ、乾燥にかかわらず使用を控えてください。体質によっては精油も使用不可な場合があります。
この方にお話を伺いました
株式会社ジャパンライフデザインシステムズ所属 葛和 恵奈子 (くずわ えなこ)

英国IFAアロマセラピスト/AEAJアロマセラピスト/AEAJアロマセラピーインストラクター/メディカルハーブコーディネーター/RTAベビーマッサージセラピスト
編集者として取材で出会ったハーブ&アロマのチカラに魅せられ、メディカルハーブ健康術&生活術を学ぶ。専門学校講師として、またイベントやセミナーでTPOに合わせたハーブ&アロマ活用方法を伝えている。2児男子の母。