腸内環境を整えて健康を目指す腸活。腸内細菌は食べ物の影響が大きく受けるため、食生活を見直すことは重要です。腸活におすすめの食べ物や腸の働きをよくする食べ方などを解説します。
腸活のやり方
腸活の基本は「食事」
腸活とは、食事や運動、睡眠といった生活習慣を見直し、腸内環境を整えて健康になるための活動のことです。腸内環境に大きく影響するのが食事であり、腸活の基本となります。多様な腸内細菌は、多彩な食生活によってつくられます。
規則正しく栄養バランスのとれた食事は、腸内細菌のよい働きを促して体に有益な物質をつくり出しますが、高脂質・高カロリーの偏った食事は、腸内細菌の悪い働きを活発にして体に有害な物質を生み出しかねません。
このほか腸内環境にいい生活習慣など、腸活についてより詳しく知りたい方は以下の記事を併せてチェックしてください。
便の状態から腸のコンディションを確かめよう
自分が腸活をすべきかどうかは、まず自分の腸の調子をチェックすることから始まります。
一番わかりやすいのは、便の状態でしょう。下痢や便秘をしていないか、便の形状や色は正常か確認しましょう。理想は、表面が滑らかでバナナのような形、色は黄色がかった茶色で、においがそれほど強くない便です。いきまず短時間で排便ができていたら腸の調子は正常と考えられます。
腸活におすすめの食べ物の組み合わせ
偏りのない多様な食材を食べることが前提ですが、中でも、腸の健康をサポートする次の4つの食品を組み合わせてとるとよいでしょう。
- 〔腸の健康をサポートする食品〕
- 発酵食品(プロバイオティクス) ...... ヨーグルト、納豆、味噌など
- 水溶性食物繊維(プレバイオティクス) ...... 根菜類やきのこ、海藻など
- オリゴ糖(プレバイオティクス) ...... バナナ、玉ねぎ、大豆など
- EPA・DPA ...... 青魚や亜麻仁(あまに)油など
発酵食品は腸内環境を整える菌を摂取できる「プロバイオティクス」、水溶性食物繊維とオリゴ糖はそれらの菌のエサとなる「プレバイオティクス」として、近年注目を集めています。プロバイオティクスとプレバイオティクスのどちらかをとればいいというわけではありませんので、その両方を取り入れる「シンバイオティクス」を意識するようにしましょう。
SIBO、過敏性腸症候群の場合はとりすぎに注意
腸活によいとされる食品をとると、かえって腸の不調を起こす人もいます。体にいいからといってとり過ぎには注意しましょう。
特に注意が必要なのはSIBO(シーボ:小腸内細菌増殖症)の人です。SIBOは小腸の機能の衰えやストレス、服薬などによって小腸で細菌が過剰に増殖し、下痢や便秘を起こしてしまうという病気で、食物繊維や発酵食品を多くとってしまうと、症状が悪化します。また、ストレスなどで便通異常を起こす過敏性腸症候群も、これらの食品によって症状が強まります。
SIBOや過敏性腸症候群になってしまったら、医師の治療を受けると共に、FODMAP(フォドマップ)と呼ばれる糖質の含有量が少ない食べ物を意識的にとるようにしましょう。
「日本食」が腸活におすすめの理由
腸内細菌が変われば、健康のための食事も変わります。米や味噌汁、海藻、漬物、緑黄色野菜、魚介類、お茶などをとる日本食は、古くからそのような食事をとってきた日本人の腸内環境に適しているといえます。また、肉よりも魚介類をとり、野菜や果物もたくさん食べる地中海食も日本食に近いものとしておすすめです。
腸活のために見直したい3つの食習慣
普段の食事が腸内環境に影響する場合があります。次のような習慣はぜひ見直しましょう。
1:食べ続けたりいつも満腹になるまで食べたりする→お腹に余裕をもたせる
腸は空腹時に消化液で悪玉菌を処理します。また、満腹ではなく腸内に余裕をもたせると、排便を促すぜん動運動が起こりやすくなります。
2:遅い時間に食事をとる→翌日の腸の働きに影響
寝ている間にも腸のエネルギーを使うことになり、次の日の腸の働きに影響します。夕食と就寝の間は4時間空けるとよいでしょう。
3:週4日以上飲酒する→乳酸菌や短鎖脂肪酸に影響
アルコールは、腸内の乳酸菌や短鎖脂肪酸を減らします。週4日以上飲むという人は回数や量を見直しましょう。
健康長寿に役立つ腸内細菌「酪酸菌」
近年、健康や長寿に役立つと話題になっている腸内細菌が「酪酸菌」です。酪酸菌は短鎖脂肪酸の1つである「酪酸」を生み出します。酪酸は、異物の侵入を防ぐバリア機能を高め、さらに、悪玉菌の増殖を抑え善玉菌を活発に働かせることから、免疫力やストレス耐性の向上などさまざまな効果が認められています。
残念ながら一般的な食品で酪酸菌を含むものはあまりありません。酪酸菌を増やすには、そのエサとなる水溶性食物繊維を豊富に含む食品をとるとよいでしょう。
肥満対策で注目の腸内細菌「アッカーマンシア・ムシニフィラ」
肥満対策で今注目されている腸内細菌があります。それが、「アッカーマンシア・ムシニフィラ」で、肥満の人や血糖値が高い人、糖尿病の人の腸には少ないことがわかっています。
ポリフェノールを含むブドウやベリー類、茶カテキンを含む緑茶、りんごなどでアッカーマンシア・ムシニフィラを増やすと、腸のバリア機能が高まって慢性炎症などが改善し、肥満の改善に有効だと考えられます。
なお、腸活のダイエット効果については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
この方にお話を伺いました
江田クリニック 院長 江田 証 (えだ あかし)

医学博士、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。日本消化器病学会奨励賞受賞。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。日々、国内外から来院するお腹の不調をかかえた患者を診察し、改善することに生きがいにしている。『新しい腸の教科書』(池田書店)、『すごい酪酸菌』(幻冬舎)、『長生きのための新しい腸活』(新星出版社)など著書多数。